なんだ花じゃん
▼今週のお題
■セリフ
「気合い入れてこ!」
■三題
・ゼラニウム ・団子 ・耳
▼投稿ルール
・投稿締切(任意):2026年7月9日(木)23:59
・ハッシュタグ「#せりふ三題噺」「#ゼラニウム団子耳」を
つけて投稿
( せりふ三題噺は、はらとけい さんのご企画です。)
私のベッドにごろごろしながら、つまらなそうにスマホを操る、
うら若き何かが居る。
これは幻覚や、バーチャルなそれではなく、現実の光景なのだが、
それが意味するところには、なんの期待も、発展性も、将来にわたる様々な計画に関する真剣な検討への切迫感も、含まれない。
これはいわゆるイトコで、母の姉の子で、
しかも正確にひと回りもの歳の差がある。
ジャンル的に食指が反応する御仁も世にあろうかと推測されるが、
私にそういった渇望が芽生えるいわれは今のところ特に無い。
ではなぜこいつはここにこうしているのか。
何かの当てつけか。
心の叫びの歪んだ発露か。
無害な被験体として、暇つぶしに適任ということか。
なんにせよ、いい迷惑である。
もう夕ごはんも何もかも済ませた、あとは寝るだけの時間に、
一体どのような権利を行使する事によって我がパーソナルスペースを占拠するものか、理解が及ばない。
あのさ、ゼラニウム、って、なんだか知ってる?
画面から目を離すこともなく、唐突に突きつけられる問い。
しばし、思いを巡らす。我が混沌たる知の坩堝に問い合わせてみるが、該当する過去の思い出は皆無と出た。
机から取り上げようとしたスマホを、先回りしてパタンと伏せる。
これを見ることは許しません。
私はあなたの身につけた基礎的知識、および発想力を問うています。
嘘でもいいってこと?
嘘はダメ。
でも勘違いなら、ぎりぎり許しましょう。
うーん。 耳馴染みは、あるような。
しかしいくら脳を絞ってみたところで、何の像も結ばない。
ダメそうです。
あきらめはやーい。
それより私はもうねたい。
いっしょに?
イイエ。
じゃあ、がんばろう。
すでに確保した陣地をあえてあけ渡すか否かは、偏にあなたの態度いかんにかかっており、
加えてお答えのクオリティによっては、なぜここにかくも魅惑的なものが横たわっていたものか、真実を明かさないでもないよ。
えーいーよーもー
ささ、気合い入れてこ! ばっちこーい!
思わず寄った眉間の皺を意識しつつ、
強硬的手段に出ることなど、ちらと想像してみるも、
互いの社会的立場と人あしらいにまつわる彼我の実力差をかんがみるに、
可でも不可でもない応答で関心を削ぎ、すみやかにお引き取り願う方が、手間はかからぬと判断するに至る。
仕方ないなーあ。
えー、では、えへん。
いよっ、待ってました! わくわくするねっ?
しなくてよろしい。
そうだな、えーと、
いわゆるゼラニウム?は、
卑金属に分類される金属元素で、そのイオン化傾向の高さなどから、
各種電極や、特殊な合金など、様々な用途において広く使用されており、
ふむふむ。
一方、地殻中の含有量は決して少なくないとされるものの、採掘可能な資源としては、旧大陸を中心に確認埋蔵量の偏在が顕著で、利権が絡んだ旧宗主国との争いが独立の足枷となる例も多く、各地で紛争の火種となった歴史があったりなかったり。
それで?
つまんなくない?
興味深いですね。
えーうそーん。
続けて。
うーん。そうだな、じゃあ、
近年は、一部輸出国によるレアアースの囲い込みが経済安全保障上のリスクとして注目される中、サプライチェーンの多様化や、代替材料の開発が進んだ事により、その重要度は下がりつつあるものの、多くの先端産業にとって欠かせない重要物資であることには変わりなく、いわゆる都市鉱山の開発や、深海における調査が先進各国によって継続されておりますな。
ほほう。なるほど。
あらゆる可能性が模索されていると。
意外な最新トピックなどご存じでしたら、そちらもご紹介いただければ。
ふーむ。そうですなー。
意外なところでは、摂食行動において地中のミネラル分を体内に取り込む一部の節足動物、特に団子虫類の甲殻に、高濃度で蓄積されている例が複数報告されておりまして、計画的な大量飼育によって安価な設備投資で短期間での増産をも可能とする画期的打開策として、公的資金の投入も視野に、採算性の検討も始まっているらしいですぞ?
でも、そうは言っても、ゼラニウムって、身近に手にする機会ってあまりないじゃないですか?
実はそうでもありません。たとえばアクセサリーなどに使われる貴金属には、その光沢や色味の調整のため、微量の卑金属を合金として含有する物が少なくないのですが、ゼラニウムもその一つとして知られているのです。ただし、イオン化傾向が高いこれらの金属は、溶け出して金属イオンとなり、皮膚のタンパク質と結びつくことで接触性皮膚炎、すなわち金属アレルギーの原因となり得ます。たとえばピアスの装着による外耳の炎症の内、ゼラニウムによって引き起こされたものは、実に70%にもおよぶという調査報告もあったりするのです。
なんと!そうなんですね!
ところで、あなたは宇宙人の存在を信じますか?
もちろんです。
この銀河系にすら2000億もの星々が輝いているというのに、
知的生命体が自分たちだけだなんて思い上がりもはなはだしい。
同感です。
では、近隣の悩める同胞を差し置いて、別の銀河の困りごとにまで首を突っ込む生粋の中二病星人が、この我々の地球までやってきて、正義の名の下に貴重なレアアースを湯水のように浪費している事実を、ご存じで?
費用対効果一つをとっても、にわかには信じられないお話ですね。
ところがそれが現実に行われているのです。
もう数十年にもわたって。しかも我々は、その行為を止めようともせず、むしろ喜んで支えているとすら言える。
まさか、それは?
そう、かのウルトラマンです。
彼がそのヒーロー願望を満たすために、その光線技一発で消費するスペシウムの量は、現在の地球における産出量に換算して、なんと10年分を越えます。
一発で、10年ですか!
それは驚きですね。
それで驚いてはいられませんぞ?
歴代シリーズを通して続々とやってくる同じ症状をこじらせた一族によって枯渇寸前までに追い込まれたレアアースは、他にもストリウム、サクシウム、テラシウム、ゼノニウム等々、枚挙にいとまがありませぬ。究極のオーバーツーリズムとさえ言えるでしょう。
そして今、もっとも深刻な問題となり得るのは、
ゼラニウム、ですか。
そう、我々地球人は、ウルトラマンゼラン(仮)の来襲に備え、何らかの対策をこうじる必要に迫られているのです。
そうだったんですね。
せめて、豊富に存在している別の元素で我慢してもらうわけには……?
仮にもウルトラ一族を騙る者が、
カルシウム光線、とか、アルミニウム光線で満足するとは思えませんな。
お年寄りの骨密度を支える、高齢社会に寄り添うヒーローとして、末永く活躍していただくという線はいかがでしょう?
ないでしょうな。
彼らの尺度では、まだまだ若気の至りが許されるお年頃でしょうし。
わざわざ親の目が届かない所まで出張ってきて、ウルトラな介護士に夢を変更する余地はないでしょう。
まさかそんな事になっていたとは。
宇宙を股にかける中二病、スケールが違いますね。
井戸の中にマグロが飛び込んで来たようなものです。
我々たかがカワズに、なすすべはない。
しかし、郷に入っては郷に従え、彼らにもアンパンマン並みのサステナビリティを身につけていただきたい所ですな。
ごもっとも。 ……はい、終了。
ほら、やれば出来るじゃない。
そう? えへへ。
終了、ってなに?
え?ウソなに、撮ってたの? 待って待ってちょっと待てやこらあ!
おまけ
明くる日、人知れずアップされた記事の題名は、
次のどちらだったでしょう?
A. ゼラニウムの育て方 番外編 従兄弟のおっちゃん木に登る
B. こじらせリケジョの生態記録 ファイルNo.014 花よりダンゴムシ
ほんとうは年齢の入れ替えも可能なようにするつもりでしたが、
調子にのって詰め込んだら、どう読んでも無理でした 。
あうあう。
