部長と課長、何が違うの?――困って相談したのに「あなたの問題でしょ」と返す上司たち
困って上司に相談したのに、なぜか最後は自分が悪いことになっていた。
そんな経験、ありませんか?
「人が足りません」
「仕事が一人に集中しています」
「何度お願いしても、あの人が仕事をしてくれません」
「このままだと、納期に間に合いません」
勇気を出して相談した。
ところが返ってきたのは、
「もっとコミュニケーションを取ったら?」
「あなたのマネジメントにも問題があるんじゃない?」
「それくらい自分たちで解決してよ」
そして、最後には、
「あなたの問題でしょ」
と言われて終わる。
相談する前より、困ってしまいます。
私は以前、まさにそんな経験をしました。
同僚が、本当に仕事をしない。
当然、その分の仕事は誰かが引き受けなければなりません。
困り果てて、私は課長と部長に相談しました。
「なんとかしてください」
ところが、返ってきたのは問題を確認する言葉ではありませんでした。
「あなたのリーダーシップが原因でしょう」
そう言われて、話は終わりました。
私は、そのときからずっと疑問に思っています。
では、課長と部長は、何をする人なのでしょうか。
仕事とは、「お困り事を解決すること」ではないでしょうか
私は、仕事をとてもシンプルに考えています。
仕事とは、誰かのお困り事を解決すること。
お客様が困っている。
だから商品をつくる。
サービスを提供する。
問い合わせに答える。
故障を直す。
分かりにくいものを、分かるようにする。
不便なものを、便利にする。
仕事の種類は違っても、その先にはたいてい、
「誰かが困っている」
があります。
では、管理職の仕事は何でしょう。
同じように考えればよいのではないでしょうか。
部下が仕事をするうえで困っている。
そのお困り事を解決することも、管理職の仕事です。
もちろん、部下の悩みを何でも代わりに解決する、という意味ではありません。
本人が解決できる問題なら、本人に考えてもらえばいい。
しかし、
本人だけでは動かせない。
権限がない。
人員配置を変えられない。
役割分担を決められない。
他部署を動かせない。
仕事をしない人を指導する立場にもない。
だから、上司に相談している。
つまり、部下が上司へ相談するということは、
「自分だけでは解決できないところまで来ました」
というサインでもあります。
そこで管理職が、
「自分でなんとかして」
と返してしまったら、何のために管理職がいるのでしょう。

「あなたにも原因がある」は、解決策ではありません
ここで、一つ注意しておきたいことがあります。
部下が相談してきたからといって、必ず部下が正しいとは限りません。
私のケースでも、本当に私のリーダーシップに問題があった可能性はあります。
そこは否定しません。
しかし、
「あなたにも原因があります」
と、
「だから、こちらは何もしません」
は、まったく別の話です。
もし本当に私のリーダーシップに問題があったのであれば、管理職には、さらにやることがあったはずです。
何が問題なのか。
なぜそう判断したのか。
具体的に何を変えればよいのか。
そのために上司として何を支援するのか。
そして、そもそも「同僚が仕事をしない」という訴えは事実なのか。
確認する必要があります。
つまり、
原因を指摘することと、問題を解決することは違う。
のです。
「あなたのコミュニケーション不足です」
「リーダーシップの問題でしょう」
「当事者同士で話してください」
どれも、それらしい言葉です。
でも、それを言って終わった瞬間、
その言葉は問題解決ではなく、問題を相談者へ返すための言葉になってしまいます。
では、課長は何をする人なのでしょう
たとえば、
「チームの一人が仕事をしない」
という相談が来たとします。
課長なら、まず現場で何が起きているのかを見る。
本当に仕事をしていないのか。
仕事量に偏りがあるのか。
本人に能力上の問題があるのか。
役割を理解していないのか。
指示が曖昧なのか。
そもそも業務設計がおかしいのか。
相談者との人間関係だけの問題なのか。
確認したうえで、
仕事を割り振り直す。
本人を指導する。
目標を設定する。
役割を明確にする。
必要ならチーム内を調整する。
つまり課長とは、
現場で起きているお困り事を、課という単位で引き取る人
と考えることができます。
全部を自分でやる必要はありません。
しかし、
誰が、何をして、どう解決するのかを決める。
これは管理職にしかできない仕事です。
では、部長は何をする人なのでしょう
では、部長は?
課長より偉そうにする人でしょうか。
会議で一番奥に座る人でしょうか。
承認印を一つ多く押す人でしょうか。
そうではないはずです。
課長では解決できない問題があります。
課を超えて人を動かす必要がある。
人員配置そのものを変える必要がある。
他部署と調整する必要がある。
予算が必要になる。
課長自身のマネジメントに問題がある。
組織の制度そのものを変えなければならない。
こうなると、もう一つの課だけでは解決できません。
そこで部長の仕事になる。
つまり、
課長は、課で解決できるお困り事を引き取る。
部長は、課だけでは解決できないお困り事を、もっと大きな単位で引き取る。
そう考えると、
「部長と課長、何が違うの?」
への答えが見えてきます。

役職が上がるとは、「責任を下へ返せるようになること」ではない
ところが、実際の職場では逆のことが起きることがあります。
部下が相談する。
課長が言う。
「あなたが何とかしてください」
課長でも解決できず、部長に上がる。
部長が言う。
「まず課内で解決してください」
問題が、
上へ上がらず、下へ下へと返されていく。
不思議です。
組織では、役職が上がるほど権限が大きくなります。
それなのに、問題だけは権限の小さい人へ返されていく。
これは、かなりおかしな構造です。
本来は逆なのではないでしょうか。
権限が小さい人では解決できない。
だから、権限の大きい人へ問題を上げる。
そして、
権限を持つ人が判断する。
それが組織で仕事をする理由の一つでもあります。
「相談に乗る」とは、話を聞いてあげることではありません
ここも大切だと思います。
管理職が部下の相談に乗るというと、
「話を聞いてあげる」
ことだと思われがちです。
もちろん、聞くことは大切です。
でも、それだけではありません。
仕事上の相談なら、
相談に乗るとは、問題解決のプロセスに入ること
ではないでしょうか。
何が起きている?
何に困っている?
なぜ本人だけでは解決できない?
誰の判断が必要?
何を変えれば解決する?
誰がやる?
いつ確認する?
ここまで考える。
それが管理職の「相談に乗る」だと思うのです。
「大変だね」
と聞いて終わるのでもない。
まして、
「あなたにも問題があるんじゃない?」
と返して終わるのでもない。

管理職とは、問題を引き取る人
私は、この経験から一つのことを考えるようになりました。
管理職とは何なのか。
役職名でしょうか。
権限でしょうか。
給与でしょうか。
部下を評価する人でしょうか。
もちろん、それらも含まれるでしょう。
でも、もっと根っこのところでは、
部下だけでは解決できない問題を、引き取る人
なのではないでしょうか。
だから、役職が上がるほど、
偉くなるのではない。
引き取らなければならない「お困り事」の範囲が広がる。
課長なら、課のお困り事を。
部長なら、部のお困り事を。
経営者なら、会社全体のお困り事を。
そう考えれば、役職の意味はずいぶん分かりやすくなります。
「あなたの問題でしょ」と言う前に
部下から、
「なんとかしてください」
と言われたとき。
もしかすると、本当にその部下にも原因があるかもしれません。
でも、その瞬間に考えてほしいことがあります。
この人は、なぜ自分のところまで相談に来たのか。
自分だけでは解決できなかったからではないでしょうか。
ならば、
「あなたの問題でしょ」
と返す前に、
管理職にしかできないことが残っていないかを見る。
それが管理職の仕事なのだと思います。
仕事とは、お困り事を解決すること。
だとすれば、
管理職の仕事も同じです。
そして、部長と課長の違いは、案外シンプルなのかもしれません。
役職が上がるとは、偉くなることではない。
引き取らなければならない「お困り事」の範囲が、広がることなのです。
