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魔法でやりたい放題するオープンワールドACT『Warlock』とは?原作D&Dの世界観を読み解く3つのキーワード

今年ドイツのGamescomにて初のプレイ映像が発表されたアクションアドベンチャーゲーム『Warlock: Dungeons & Dragons』。
以前からタイトルは発表されていましたが、その内容は…

(※日本語字幕アリ)

触手を召喚し瓦礫を支える。

敵と位置を入れ替えて同士討ち。

雨を降らせて濡れた敵に電撃を浴びせる。


あまりにも魔法でやりたい放題がすぎるでしょう。


パッと見で既存の作品に例えるなら『エルデンリング』と『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』ないし同『ティアーズオブザキングダム』の中間点かのような印象で、なかなかのユニークさが見えており、期待感の持てる作品ですが―

そう、作品のタイトルにもありますが、TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を原作としているのです。しかし、詳しくないという方も多いでしょう。
そこで今回の記事では、事前情報にある3つ(実質4つ)のキーワードから、この『Warlock』の世界観を紐解いていこうと思います。

前提:『ダンジョンズ&ドラゴンズ』、そして「TRPG」

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』について詳しくご存じない方のために改めて説明するので、一応最初のキーワードまで飛ばしてもらっても構いません。

よそでも「D&D」の名前は耳にした方もいらっしゃるかもしれませんが…
D&DはTRPG―「テーブルトーク・ロールプレイングゲーム」、あるいは「テーブルトップ・ロールプレイングゲーム」です。

TRPGでは、「ゲームマスター」(以下GM)と呼ばれる主催となるプレイヤーが状況を説明し、他のプレイヤーは自らのキャラクターとして、その世界の中での行動を説明する―この繰り返しで進行し、その成否が今後を左右するような状況では、GMはルールやそれによって定められた様々なデータなどを基準に、サイコロのような乱数の出目や、キャラクターが持つリソースを消費することを求めるのです。

本作で言えば…まあ、主人公のカァトリがプレイヤーにあたりますね。当然ですが。

しかし、TRPGは機械が処理している訳ではないので、プレイヤーの言葉から世界に何かが生まれることもあるかもしれない。そうしてプレイヤーとGMのお互いの積極的なやり取りで世界が色づいていく、そういう物だと私は思っています。

本作『Warlock』の、オープンワールドで、多様な魔法を自由な発想で駆使し、目の前の物を乗り越えていくスタイルは、TRPGでのプレイヤーの積極的な行動で世界が広がり、予想だにしない解決策が生まれる事もある、そういった感覚をモデルに生み出されたのでしょう。

D&Dを原作とした映画『アウトローたちの誇り』やコンピューターゲーム『バルダーズ・ゲート3』などに加え、『Dead by Daylight』ではキラーとしてD&Dからヴェクナが参戦するなど、ここ数年、本国主導で外部メディアでの存在感を増す施策が続いており、本アカウントではこれまでもそういったメディア展開の解説を行ってきました。よろしければそちらも是非。

キーワードその1「ウォーロック」

ゲームのタイトルであり、主人公のカァトリの肩書きである「ウォーロック」。

ここまで調べに来るようなあなたであれば、「魔法使い」に関するワードかな?などと、どこかで聞き馴染みがあるかもしれません。純粋な英単語で言えばその認識で間違いありませんが、D&Dにおける「ウォーロック」には一つ重要な要素があります。

それは「契約」です。

D&Dのウォーロックとは、強大な超自然的存在と契約を結び、その魔力を操る者です。
本作でも原作由来、オリジナル問わず様々な魔法の能力を駆使して冒険する事が、今回公開された映像でも見てとれます。

先行公開映像で登場する中で、いくつか重要な要素をピックアップしましょう。

「剣の契約」

魔術師でありながら剣も扱う主人公。原作TRPGでも「剣の契約」を選んだウォーロックは好きな武器を呼び出すことができ(プレイ映像6:30で剣が消滅し、ハンマーが空中から突然降ってきています)、武器戦闘に適性を得ます。

その他の能力

同時に公開された「Developer and Creator Roundtable」の動画では

  • ブラック・テンタクルズ黒い触手

  • レヴィテート浮揚

  • 「怪跳躍/Otherworldly Leap」

  • ミスティ・ステップ霧渡り

  • エルドリッチ・ブラスト怪光線

  • ウィッチ・ボルト魔女の稲妻

などといった原作にもある呪文や能力名が登場している一方で、

  • プレイ映像4:31辺りで見られる敵と入れ替わる魔法は「Fey Switch」

  • 5:38からの雨を降らせる儀式は「Downpour」

  • 各所でみられる物を引き寄せるアクションは「Tasha’s Leash」

といった原典TRPGにはない名称になっており、これらは本作のために生み出された独自の技であることがわかります。

(ただ、『アウトローたちの誇り』の事を考えると、英語公式の方で呪文データが無料公開されるなどといった事もあり得るかもしれません。その際は翻訳を公開すると思いますのでお楽しみに。)

キーワードその2「ターシャ」

主人公がウォーロック契約魔術師という事は、契約相手パトロンがいなければ始まりません。
そして、ウォーロックとしての契約先は「魔女王」の異名を持つ「ターシャ」。動画冒頭に登場した、顔に鳥の足跡のような入れ墨をした女性です。主人公のカァトリは本作のために生まれたオリジナルキャラですが、ターシャはD&Dの歴史に名を残す大魔術師です。

原作TRPG『ターシャの万物釜』より。Magali Villeneuveによる。

D&Dの数多の世界でも最強と恐れられる魔女「バーバ・ヤーガ」の養子として育った彼女もまた、かつてはカァトリのような冒険者であり、いくつかの呪文を生み出しもしました。しかし、やがて彼女は多くの敵を作り、「イグウィルヴ」の名で隠れ潜み始めました。その頃にはデーモン―混沌を司る魔族―の力に魅せられた結果、その親玉の一体「グラズズト」との間に子をもうけ、デーモンのすべてを納めたという「デーモン学大全デモノミコン」を著しています。

(この辺りの固有名詞は本編でどこまで出てくるかわからないので、重要そうなところを念のため紹介しておきます)

彼女が生み出した呪文の中でも有名なものといえば、「ターシャズ・ヒディアス・ラフターターシャの抱腹絶倒」。TRPG側でも現行の基本ルールに含まれている上、低レベルのキャラクター(キャラクターにレベルがあるTRPGです)でも使えるので、存在感は抜群です。

キーワードその3「ダーコン」(+「レイヴンロフト」)

その3とは言いましたが、実はその3は2つあります。理由は読めばわかります。

まず、D&Dにおいて、冒険の舞台となる世界の数々ー公式に出版されているものからプレイグループオリジナルのものまでーは、どれも基本的にD&Dの「多元宇宙マルチバース」のどこかにあるとされています。最近だとこういう概念はマーベル映画などのおかげで説明が早くなってありがたいですね

その中には、恐るべき恐怖をもたらした者が、その者が影響力を持っていた領域とともに引き込まれる暗黒の世界―「レイヴンロフト」があります。

(シャドウフェルがどうこうとか物質界のこだまがどうこうとかぬかす方はちょっと座っててくださいね、あくまで必要な所だけ説明していますので)

今回の冒険の舞台「ダーコン」は、そうしてレイヴンロフトに引き込まれた地域―「戦慄界」の一つです。レイヴンロフトとはこういった小さなエリア=戦慄界の集合体であり、箱庭的な構造が、オープンワールドと相性がよかったのでしょう。

そして、各戦慄界はそれぞれ様々な「ホラー」を体現しています。叶わぬ愛を求める吸血鬼の領域は「ゴシックホラー」、生け贄を求め続ける因習村の領域は「フォークホラー」、大いなるクトゥルフの眠る島なら「エルドリッチホラー」、そして、ダーコンは…「ダークファンタジー」です。

動画にもあった通り、野にゾンビやオーガなどの化け物が跋扈し、人々の生活は困窮するこの地ですが、ここはかつて魔術の帝国を有していた場所でもあり、主人公・カァトリはダーコンに消えた恋人を求め、そしてまだ見ぬ魔術の知識を求めて降り立つことになります。

ただ、ダーコンにはもう少し違うホラーの側面もあるのですが…それはどう本作に関わってくるのかまだわからないので、一旦解説は控え、今後の発表を待つことにします。

そして、先行プレイ映像では村人が「霧」について話していました。恐るべき恐怖をもたらした存在を引きずり込み、各戦慄界を区切る存在です。
もし原典の設定通りであれば…この「霧」は、ダーコンにとっては特に重要な存在になることでしょう。

レイヴンロフトおよびダーコンについては原典TRPG側でも『Van Richten's Guide to Ravenloft』およびその改訂版にあたる『Ravenloft: the Horrors Within』にて詳しく紹介されています。英語力に自信のある方は挑戦してみるのもいいかもしれません。

余談なんですけど、D&D以外の何かに例えるなら…『魔法少女ノ魔女裁判』の牢屋敷とかああいうのも「戦慄界」っぽさがありますね。主は誰かと言われると、それは向こうのネタバレになるので言えませんが…。

おまけ「デス・キス」(「ビホルダー」)

オーガやゾンビなどといった定番のモンスターに混じって、プレイ映像の4:28で登場する浮遊する触手の怪物は「デス・キス」。
その後の会話でも言及されていますが、D&Dを代表するモンスター「ビホルダー」の派生種です。通常ビホルダーは触手に目がついており、さまざまな効果のある光線を発射しますが、デス・キスは追加の目がなく、触手で組み付いて血を吸ってきます。

原作TRPG『ヴォーロのモンスター見聞録』より「デス・キス」。 Cory Trego-Erdnerによる。
こちらが通常のビホルダー。
原作TRPG『Monster Manual』(5.5版)より。 Eric Belisleによる。

ゲームのルールでは町一つを壊滅させられる強さとされているので、これを一人でどうにかしてしまうカァトリって元から相当強いのでは…。

おわりに

D&Dの新作ゲームと聞いて何が飛び出すのかと思えばまさかのアクションゲーム、しかも魔法でやりたい放題。
魔法を自由な発想で使い、目の前の問題に自分なりの答えを見つけるという、まるで『ブレスオブザワイルド』以降のゼルダの伝説のようなアプローチは、『ダークソウル』『エルデンリング』方面のファンだけでなく、『HITMAN』などのファンからも期待できる作品ではないでしょうか?
そしてTRPGとしてのD&Dが持つ「プレイヤーが世界に働きかける」感覚を、アクションゲームとして再構成しようとするかのようなこのアプローチは、筆者もまさに「TRPGらしい」と感じており、「D&D原作である意味があった」と唸らざるを得ません。

続報も期待したいところです。

『ウィッチライトの彼方へ』書影。

もしWarlockの発売前に原作TRPGに触れてみたいという方がいらっしゃるなら、日本語版も存在する公式の長編シナリオ『ウィッチライトの彼方へ』をお友達と一緒に遊んでみるといいかもしれません。まあ、あれは妖精郷が舞台なので雰囲気は真逆ですが…。
理由は私を信じてください。決して関係がない訳ではありませんので。
というか理由言っちゃうとネタバレになるんですよ

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