アメリカ大統領選挙2024に「参戦」した懐かしい方
私のパートナーはアメリカ人だが、大統領選挙にはコミットしていない。今回に限らず、大体毎回。
私はというと、2016年の選挙から専らリアリティ・ショーとして経過を追っている。時に歯切れ良く、時にスキャンダラスにアメリカ大統領選挙を報じる政治系Youtubeチャンネルを、最近視聴し始めたものも含めて紹介したい。トランプ政権で話題になった、ある懐かしい方もお目見えしている。
ちなみに、「フェイクとポピュリズムは民主主義の本質」と論じた佐伯啓思氏の京都学派的エッセンスが詰まった下記の一冊は、一読の価値あり。
Pod Save America(民主党系)
Pod Save Americaは、Crooked Mediaが配信するアメリカのリベラルなポッドキャスト。運営開始は2017年1月で、バラク・オバマの元スタッフであるジョン・ファヴロー氏(元スピーチライター)、トミー・ヴィエター氏(元ホワイトハウス国家安全保障会議報道官)、ジョン・ラヴェット氏(元スピーチライター)、ダン・ファイファー氏(元ホワイトハウス広報部長、元大統領上級顧問)が交代で司会を務めている。ベン・ローズ氏(元国家安全保障担当副大統領補佐官)が飛び入り参加することも。
メンツを見てお分かりの通り、筋金入りの民主党びいきで、共和党の政治家はこてんぱんにこきおろすが、民主党の政治家の失態やミスについてはやや批判の歯切れが悪い様子。
国際政治全般について語り尽くすPod Save the Worldも見逃すなかれ。
ちなみにジョン・ラヴェット氏は、映画監督のウディ・アレンと女優のミア・ファローの息子であるローナン・ファロー氏と長期間交際していたことでも知られる。ジャーナリストであるローナン・ファロー氏は、ハーヴェイ・ワインスタインのセクシャル・ハラスメントを追及した記事をニューヨーク・タイムズに寄稿。2018年にピューリッツァー賞(ジャーナリズム・公益部門)を受賞している。
The Lincoln Project(共和党系)
2019年12月に発足した反トランプの保守系団体The Lincoln Projectは、共和党系スーパーPAC(特別政治行動委員会)であり、トランプ在任中から積極的にネガティブキャンペーンを打ち出している。
2020年4月の時点で、民主党大統領候補ジョー・バイデン氏を支持。 2022年以来、2024年の大統領選挙でのトランプ大統領の再選を阻止することに重点を置き、民主党候補カマラ・ハリス氏を支持している。
1984年の米大統領選挙でロナルド・レーガン元大統領は、「米国の朝」(Morning in America)というタイトルのテレビ広告を打ち出したが、The Lincoln Projectはそのタイトルをもじって「米国の悲嘆」(Mourning in America)という皮肉たっぷりの広告を発表した。
発足時、トランプ大統領に批判的な弁護士ジョージ・コンウェイ氏も顧問に名を連ねていた。コンウェイ氏は、2016年大統領選挙においてトランプ陣営の選対本部長を務めたケリーアン・コンウェイ元大統領顧問の夫(現在は離婚)。
2020年8月23日、ケリーアン・コンウェイ氏は「家族とより多くの時間を過ごすために」ホワイトハウスの職を離れると発表した。同時に、ジョージ・コンウェイ氏も同様の理由でThe Lincoln Projectから撤退すると発表した。
ちなみに、2人の娘であるクラウディア・コンウェイ氏はSNSで反トランプの立場を明らかにしている。
The Lincoln Projectの活動は地味だが、共和党(穏健派)の価値観にそぐわない政治家は身内であっても斬る(逆にいえば、民主党政治家であっても、同意できるポイントがあれば手を組む)という潔い姿勢を感じる。とはいえ、(The Lincoln Projectだけでなく、共和党政治家や共和党市民全般にいえることだが)トランプ氏への嫌悪のあまり、ジョン・マケイン氏やディック・チェイニー氏がいた「古き良き時代」へ郷愁を抱くのは、個人的にはやや違和感がある。
The Rest Is Politics US(懐かしのあの人がホスト!)
2022年3月に開始されたイギリスの政治系ポッドキャストThe Rest Is Politics。そのアメリカ版、The Rest is Politics US(2024年4月運営開始)の共同ホストとしてアンソニー・スカラムッチ氏が活動している。
彼は、トランプ氏の政権移行チームで上級顧問を務め、ホワイトハウスの広報部長に着任した後わずか10日(メディアによっては11日)で解任されたという「伝説」の持ち主だ。毒舌が仇になったといわれている。
ところで、彼がWSJ主催のイベント「Journal House Singapore」に参加していたことを今更ながら知った。「Navigating the Future: Anthony on the U.S. Election and the Global Economy」というテーマで、WSJ東京支局長のピーター・ランダースと討論している。
「次期アメリカ大統領は、今後どのように経済政策を展開させていくべきか」との質問に対し、スカラムッチ氏は「今後トランプ氏のために働くことは絶対ない。私の妻は、メラニア氏と同じぐらいトランプ氏を嫌っている」「私は自分自身の結婚生活の『再選』のために立候補しているところだ。再選されても、就任期間は1日かもしれないが」(彼の妻は、2017年に離婚を申請したが現在は夫婦関係を修復した模様)とジョークを飛ばした上で、
経済・外交面での同盟を強化させる
迫りくる国内債務危機へ対処する
国内の税制を改正し、特にブルーステート(伝統的に民主党を支持する傾向がある州)の成長を促す経済的インセンティブを創出する
移民への愛情を強調し、移民を通じた人口増加を実現させる
がキーであると述べた。更には、
「プライドやエゴを意思決定に持ち込むと、とてつもなく破滅的な決断を下すことになる。私がトランプ政権でオファーを受けたのは、正にプライドとエゴに基づいた意思決定をしたからだ。オファーを辞退せず、向かっていってしまった。だが、そのことで、私のキャリアでとても辛い時期を過ごすことになった」と話した。
聞いていて、「案外まともで、むしろ知的な人物なのか…?」と感じた方も多いのではないだろうか。実際、Youtube上でも
「非常に博識でバランスの取れたコメントだ」
「彼の説明は非常に明快で、理にかなっている」
「彼のように、野心が自分の選択に影響を与えたことを認める勇気のある人はほとんどいない。彼は尊敬に値する」
「政党よりも国を優先することで、真の愛国心を体現している」
と肯定的なコメントを残す視聴者が多いようだ。
彼はハーバード・ロー・スクールで法務博士(J.D.、Juris Doctor)を取得し、ウォール街で活躍したぐらいなので、非常に高い教育を受けた成功者であることには変わりないのだが、いかんせん放送禁止用語がごくナチュラルに出てくる(今回のトークでも冒頭から飛び出していた)ため、コンプライアンスに大変厳しい公職には向かず、どちらかというと飛び道具的キャラクターなのかもしれない。
政党カラーが明らかな番組も、そうでない番組も、大統領選挙が近づくにつれて熱気が一層増してくる。いち外国人としてではあるが、アメリカ大統領選挙から今後も目が離せない。
