『四国お遍路物語②』 「旅のトモダチ」
2026.3.31 pm4:00
板東駅から無料案内所まで来た。
旅には、突然“トモダチ”が現れる。
今回も、そうだった。
——
初日。
正直に言うと、私は限界だった。
前日から一睡もしていない。
酒、移動、ジャグラー、そしてバス。
体力ゲージはほぼゼロ。
「これは野宿とか言ってる場合じゃない」
そう判断し、3500円のゲストハウスに飛び込んだ。

交渉は一発OK。
運もまだ味方しているらしい。
ただし、相部屋だ。

——
そこで出会ったのが、今回の“旅のトモダチ”。
67歳のおじさま、お二人。
これがまた、ただ者じゃない。
一人は細身でシュッとしていて、
もう一人は、まるでエビス様のような笑顔。
常にニコニコ。
そして、めちゃくちゃ親切。
「おへんろ、初めてですか?」
そう言って、いろいろ教えてくれた。
話を聞いて、驚いた。
このお二人——
なんと1年前から、お遍路の計画を立てていたらしい。
しかもその内容が、完璧。
日程、ルート、宿、すべて計算済み。

こちらは
“なんとなく呼ばれて来ました”の人間である。
レベルが違いすぎる。


※リモコンから下
——
そんなお二人からのアドバイス。
「ハニートラップには気をつけて」
……なるほど。
お遍路にも、そういう罠があるのか。
いや、人生全体か。
いい話を聞いた。
もっとも——
罠というのは、避けるものと、あえて踏みにいくものがある。
私はたぶん、後者も楽しむタイプだ。
そもそも、金を持っていないのは
ハニートラップ対策なのかもしれない。
最強の防御である。
——
宗教の話にもなった。
一人は神道。
もう一人は無宗教。
私はといえば——
無宗教寄りだが、しいて言うなら神道。
そんな話をしていると、意外なことを知る。
お遍路は仏教の修行だが、
神道でも無宗教でも、回っていいらしい。
……自由だな、この世界。
——
そして、もう一つの発見。
宿泊者の半分は、外国人。
もはや“修行”というより、
グローバルイベントである。
ヨーロッパには、キリスト教徒が歩いたとされる
約800kmの巡礼路があるらしい。
それが サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路。
どうやらこの四国のお遍路とも提携しているらしく、世界は思っているよりも、ゆるく繋がっている。
——
エビス様のようなおじさまは、
最後にこう言ってくれた。
「これ、入れといた方がいいよ」
そう言って教えてくれたのが、
お遍路用のアプリ。
地図も、ルートも、現在地もわかる。
「これで迷っても大丈夫」
なるほど、現代の巡礼はハイテクである。
私は素直にインストールした。
——
だが——
この後、私は知ることになる。
どれだけ文明が発達しても、
人は普通に迷うということを。
初日、私は三度、道に迷う。
アプリを入れて、なお。
——
旅は、まだ始まったばかりだ。



