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“衝動”に敗北した私は前髪を失った|後悔することを知っているのに、なんで止められないのか?

「いまやったら絶対後悔する」

なのに止まらない


私は突然髪の毛を切りたくなる。

ハサミ、すきバサミ、バリカンまで揃っている。
全部そこら辺で買ってきた専門用じゃないやつ。

中学生のころから私は美容室いらず。
バーバーマツリカで散髪している。

散々失敗を繰り返し、割と加減は覚えた。

なのに、手塩に掛けて顎くらいの長さまで育てた前髪を…

切った

とんでもなく後悔した。

そう、今回は失敗うんぬんではなく…前髪を短くした事実に後悔している。


世の中は、さまざまなストレスや理不尽で溢れている。

人間関係。
将来への不安。
思い通りに行かない日常…。

自分の力じゃすぐに変えることができないものばかり。

そんな不確定な世界の中で『100%自分の思い通りに、いますぐ変化を起こせる対象』

それが髪の毛

…失敗することもあるから、100%は言い過ぎてる。
でも、手近である。


私のこの『髪の毛を切る』という衝動。
これは強烈な刺激を得ると同時に、“一瞬で状況が変わった”気分になれる。

ハサミと鏡があれば、数分後には変化できる。

この即効性のある刺激が、私にとっては手軽な『感情リセット手段』になっているのかもしれない。


「切りたい!」と思い立った瞬間、頭の中で天使と悪魔がささやき始める

天使は『後悔』する前に止めてくれる。

  • 絶対に後悔するよ

  • また伸びるまでに時間かかるよ

  • その予感は当たってるからやめて

未来の私は前髪を切ったことを後悔するから、天使は『回避できるリスク』だよと訴える。

でも、悪魔はこう言う。

  • 切ってもまた伸ばせばいい

  • どうしても切りたいよね

  • 今回は満足するかもしれないよ

前髪を切りたい“欲”が最高潮の私に、悪魔は『いますぐ手に入る変化』だと煽り散らかす。


「いまこの瞬間のモヤモヤを消したい」という、即時的な衝動が勝ってしまう。

だから、悪魔のささやきを聞いてしまう…。

後悔する予感はあるのに『悪魔のささやき』が頭を支配し、天使の言葉をかき消してしまうのだ。


“過去になんども失敗(後悔)した”

そんな苦い記憶は遠くに追いやられ、頭の中を『未来の理想像』で占拠する。

後悔することはわかっている…

でも衝動がおさえきれないとき、『やってもいい理由』を探すことってあると思う。

私は後悔するのをわかっているときでも、自分に都合のいい理由を並べることが多い。


髪の毛は自分の意思でコントロールできる。
切るのも、残すのも、100%自分の意思で決められる。

『現状を変えたい』
『モヤモヤをリセットしたい』

そういう切実な思いが極限に達したとき…
手元にある素人用のハサミが『世界を速攻で変える魔法の道具』に見える。


そうして髪の毛を切る私は無意識のうちに、『自分の現状を自分でコントロールできてる』という万能感や自己決定感を取り戻してる。

…のかもしれない。


髪を切ったところで、なにかが解決するわけではない。

将来の不安がなくなるわけでも、嫌なことが消えるわけでも、明日から人生が劇的に変わるわけでもない。


なのに、顎まであった前髪が数秒後には短くなっている。

自分の意思で、確実に前髪を変えられる

その瞬間だけ達成感に満ち溢れる。


私は問題を解決したかったわけじゃない。
ただ『なにかを変えたかった』のかもしれない。

どうにもできないことがたくさんある中で、髪の毛だけは自分で変えられる。

世界は変えられなくても、
前髪なら変えられる

他人は変えられなくても、
前髪なら変えられる

未来は変えられなくても、
前髪なら今すぐ変えられる

私は『変化』を求めたのかも。


「やりたい!」と思ったとき、その行動だけを見てしまうことが多い。

  • お菓子を食べたい

  • 買い物したい

  • 仕事を辞めたい

  • 言い返したい

  • 髪の毛を切りたい


「疲れた」
「変わりたい」
「もう嫌だ」
「自分で何かを決めたい」
「このモヤモヤをどうにかしたい」

その「やりたい」の奥には、こういう別の気持ちが隠れているのかもしれない。

ただ、なんでも衝動に従えばいいわけではない。
従っちゃいけない衝動も存在する。


私は衝動に敗北し、前髪を切ったことを果てしなく後悔している

なにかを変えたかったのかもしれない。
でも鏡を見るたびに「変えなくてよかっただろ」と思っている。

人生を変えたかったわけでもなく、世界を変えたかったわけでもない。

なんなら前髪は伸ばしたかったはずなのに

…なにを血迷ったのか。
…なんで切ったんだ?


だから私は、また前髪を伸ばす。

そしてきっと、しばらくするとまた「…切りたい」と思い始める。

そのときは今回の後悔を思い出して、まずハサミを置いて「私はいま、なにを変えたいんだ?」と自分に聞いてみようと思う。

それでも切り始めたら…もう諦める
バーバーマツリカは開店したら止まらない。



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