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絵本『ジッタとゼンスケ ふたりたび』  くらささら作 くりはらたかし絵

絵本『ジッタとゼンスケ ふたりたび』  くらささら作 くりはらたかし絵

2023年06月03日


                   福音館書店2023年7月刊 



 また福音館書店のこのシリーズで、新進の歌人の九螺ささら氏作の絵本が発売された。

お話の発端は次の絵のとおりである。


主人公のキツネのジッタとゼンスケの二人が、大仏を拝みに旅に出たが、その途中、「きんぎつねの おとのさま」に、荷車に積んだ大きな氷を届けようとしている、猿の夫婦と出会い、子供が熱を出して、氷を運べなくなったので、どなたかお城まで運んでくれないかと、相談され、二人はそれを引き受けてしまう、というのが、この絵本のおはなしの発端である。


 二人の旅の目的は、大仏を拝みに行くことなのだが、この最初の頼み事を引き受けることから始まり、旅の途中で、いろんな困りごとを抱えているものたちに出会い、それらにかかわって、解決してやるというのが前半のおfはなしである。

 後半は氷を運び続ける二人が、こんどはさまざまな困難に出会ってしまう展開となる。

 その困難を、こんどは二人に助けられたものたちの支援で乗り切ってゆくというおはなしになって進んでゆき、最後は無事に、小さくなった氷を、「きんぎつねのおとのさま」に届ける、という結末を迎える。

 絵本のつくりは、おはなしがここで終わったような印象を与える作りになっている。最終べージの右は本の奥付のページになっている。

 読者は、もともとの、二人の旅の目的の、大仏拝みの方はどうなったんだ、と思ってしまう。

 絵本を閉じると裏表紙が次の絵になっている。

 最後はちゃんと、大仏拝みの旅は完結しているようなのだ。


 読後感は、ただの「よかったね」で終わらない。

 じんわり、いろんなことを考えさせる読後感になっている。


 わたしたちは、自分の人生で、自分ごとを優先してばかりいないだろうか。

 そして他人ごとには目をつぶって、やり過ごすような生き方をしていないだろうか。


 この絵本は、他人ごとに振り回されてばかりいるように見えて、実はワクワク、ドキドキの時間、人と助け合うことの素直な歓びという、貴重な体験をして、ふたりの旅が充実したものになっていることに気付かされる。


 自分ごとだけにかまけて忙しそうに生きている現代人の、心がどこかスカスカで空疎に感じられるのは、このような命の直接的な触れ合いの「道草体験」が失われているからではないだろうか。


このような、一見、自分にとっては無関係な「迷惑ごと」を避けず、一つひとつ丁寧に向き合って生きることの中に、人生に彩りと充実性を与えるものがあるのだ、ということを考えさせられる読後感の絵本である。


不合理が命を輝かせるのだ。

合理的で目的主義一直線の現代文明は、限りなく空疎化に向かうに違いない。


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