システム導入がゴール?皆の言うDXは誰が決めたルールなのか
DXは誰のルールで進んでいるのか?システム導入がゴールになってしまう会社に必要な視点
「DXを進めなければいけない」
多くの会社で、この言葉が当たり前のように使われるようになりました。
紙の書類を減らす。
Excel管理を見直す。
クラウドツールを導入する。
AIを活用する。
社内システムを刷新する。
どれも一見すると、正しい取り組みに見えます。
しかし、現場ではこのような違和感が生まれていないでしょうか。
「システムは入ったけれど、仕事は楽になっていない」
「入力する場所が増えただけで、現場の負担はむしろ増えた」
「DXと言われても、何が正解なのかわからない」
「AIを入れれば本当に解決するのか不安がある」
DXは、本来であれば会社の業務をより良くし、働く人の負担を減らし、経営判断をしやすくするための取り組みです。
ところが実際には、いつの間にか「システムを導入すること」「デジタルツールを使うこと」そのものが目的になってしまうケースが少なくありません。
この記事では、DXは誰のルールで進んでいるのか、DXに正解はあるのか、そしてAIやシステム導入をどう考えるべきなのかを、非IT領域の企業にもわかりやすく整理します。
DXの正解は「最新ツールを入れること」ではありません
まず押さえておきたいのは、DXに万人共通の正解はないということです。
業種、会社規模、現場の人数、取引先との関係、管理方法、従業員のIT慣れ。
これらが違えば、必要なDXの形も変わります。
たとえば、同じ「受発注業務の効率化」でも、ある会社ではExcelの整理だけで十分な場合があります。別の会社では、在庫管理システムとの連携が必要になるかもしれません。さらに別の会社では、そもそも受発注のルール自体を見直さなければ、どんなシステムを入れても混乱が続きます。
つまりDXの正解は、「どのツールを入れるか」ではなく、「自社の業務をどう変えるべきか」から考える必要があります。
ここを飛ばしてしまうと、システム導入はできても、現場改善にはつながりません。
DXがうまくいかない会社では、システム導入がゴールになっています
DXが進まない会社によくあるのが、「導入すれば変わる」という思い込みです。
もちろん、システムやAIは便利な道具です。
手作業を減らしたり、情報を共有しやすくしたり、ミスを防いだりする力があります。
しかし、道具はあくまで道具です。
現場の業務が整理されていないままシステムを入れると、次のようなことが起こります。
今まで紙に書いていた内容を、ただ画面に入力するだけになる。
Excelで二重管理していた情報を、今度はシステムとExcelで二重管理する。
現場が使いこなせず、一部の担当者だけに負担が集中する。
経営者は「DXを進めた」と思っているが、現場は「仕事が増えた」と感じている。
これは、システムの性能だけの問題ではありません。
多くの場合、導入前に「何のために変えるのか」「何をやめるのか」「誰の負担を減らすのか」が整理されていないことが原因です。
DXとは、業務をデジタルに置き換えることではありません。
業務の流れを見直し、必要な情報が必要な人に届き、無駄な作業を減らしていく取り組みです。
設計が悪いDXは、現場の認知負荷を増やす
DXで見落とされがちな視点に、「認知負荷」があります。
認知負荷理論(Cognitive Load Theory)というものが脳科学の分野にあります。
人間は処理する情報が増えるほど判断力や集中力、作業効率などすべてが低下してしまいます。
つまりDXしているのに疲れるという感覚は『設計が悪いDX』による脳へかかる負担が増してしまう現象が起きます。
設計の悪いDXとは
では、設計の悪いDXとはどんなものか。
人間は、一度に処理できる情報量に限界があります。
確認する画面が増える
入力項目が増える
判断ルールが複雑になる
どこに何を記録すればよいかわからない
こうした状態が続くと、判断力、集中力、作業効率は下がっていきます。
これは単に「現場が新しいシステムに慣れていない」という話ではありません。
設計が悪いDXは、現場の認知負荷を増やします。
その結果、ミスが増えたり確認に時間がかかってしまいます。
判断が遅くなり新人が覚えにくくなる。
特定の人に質問が集中してしまうなど、直接因果関係と結びつけにくい事象が少しずつ増え、DXが原因なのか自社の『何か』に問題があるのかわからなくなってしまいます。
設計の良いDXとは
本来のDXは、現場が考えなくてよいことを減らし、判断すべきことに集中できるようにするためのものです。
入力する項目を増やすことではなく、入力しなくてもよい情報を減らすこと。
管理画面を増やすことではなく、必要な情報に迷わずたどり着けるようにすること。
確認作業を増やすことではなく、確認しなくても間違いにくい仕組みにすること。
ここを間違えると、デジタル化は効率化ではなく、現場への負荷の移し替えになります。
だからこそ、DXでは「何ができるか」だけでなく、「現場が迷わず使えるか」「判断の負担が減っているか」「覚えることが増えすぎていないか」を確認する必要があります。
AIやシステムを導入する前に見るべきなのは、機能の多さではありません。現場の認知負荷が下がる設計になっているかどうかです。
DXは誰のために進めるものなのか
では、本題に戻りDXを考えるときに、意外と抜け落ちやすい問いがあります。それは、「そのDXは誰のためのものなのか」という問いです。
経営者のためなのか。
管理部門のためなのか。
現場担当者のためなのか。
顧客のためなのか。
取引先とのやり取りをスムーズにするためなのか。
もちろん、最終的には会社全体のためであるべきです。
しかし、実際のDXでは「管理しやすくするためのシステム」が先行し、現場の使いやすさが後回しになることがあります。
たとえば、
経営側は数字をリアルタイムで見たい。
管理部門は書類の抜け漏れを減らしたい。
現場は入力の手間を減らしたい。
顧客は対応を早くしてほしい。
それぞれの立場で求めているものが違います。
この違いを整理しないままシステムを導入すると、誰かにとって便利な仕組みが、別の誰かにとって負担になることがあります。
だからこそ、DXは「会社のルール」だけで進めるのではなく、「現場の実態」と「経営の目的」をつなげながら設計する必要があります。
AI導入は正解ではなく、選択肢のひとつです
最近は、DXの話題とあわせてAI導入を検討する会社も増えています。
問い合わせ対応をAIに任せたい。
議事録を自動化したい。
書類作成を効率化したい。
社内の情報検索を簡単にしたい。
営業資料や提案書の作成を早くしたい。
こうした用途において、AIは大きな可能性を持っています。
しかし、「AIを導入すること」がそのまま正解になるわけではありません。
AIが得意なのは、文章の整理、要約、分類、検索、パターン化された作業の補助などです。
一方で、会社ごとの判断基準や現場の暗黙知、取引先との細かな関係性、人の感情が関わる判断は、AIだけで完結させるべきではない場合もあります。
たとえば、クレーム対応をすべてAIに任せると、表面的な回答はできても、顧客が本当に不満に感じている背景を拾いきれないことがあります。
採用や評価のような人に関わる領域でも、AIの結果をそのまま正解として扱うのは危険です。
AIは、人の代わりにすべてを判断するものではありません。
人が判断しやすくなるように、情報を整理したり、作業を補助したりするものです。
AI導入を考える前に必要なのは、「どの業務にAIを使うと効果があるのか」「どこは人が判断すべきなのか」を分けることです。
労働環境の改善につながらないDXには注意が必要
DXの目的のひとつは、労働環境の改善です。
人手不足が続く中で、限られた人数でも無理なく業務を回せるようにする。
残業を減らす。
特定の人にしかできない仕事を減らす。
新人でも業務を覚えやすくする。
現場のストレスを減らす。
本来、DXはこうした改善につながるべきです。
しかし現実には、DXという名のもとに新しい入力作業が増えたり、現場に説明がないまま運用が変わったり、使いづらいシステムを我慢して使い続けたりすることがあります。
これでは、労働環境の改善とは言えません。
デジタル化によって情報が見えるようになったとしても、その分だけ現場の負担が増えているなら、どこかで設計を見直す必要があります。
大切なのは、「会社にとって便利か」だけでなく、「働く人にとって無理のない仕組みになっているか」を確認することです。
現場が疲弊するDXは、長続きしません。
定着しない仕組みは、投資としても成果が出にくくなります。
DXで最初にやるべきことは、業務の見える化
では、DXを進めるときに最初に何をすべきなのでしょうか。
それは、業務の見える化です。
誰が、どのタイミングで、何を見て、何を判断し、どこに記録しているのか。
同じ情報を何度も入力していないか。
担当者ごとにやり方が違っていないか。
本来不要な確認作業が残っていないか。
社内ルールが古いまま残っていないか。
こうした業務の流れを整理すると、いきなり大きなシステムを入れなくても改善できる部分が見えてきます。
たとえば、Excelのフォーマットを統一するだけでミスが減る場合があります。
承認フローを見直すだけで、処理時間が短くなる場合があります。
紙で保管していた情報を共有フォルダに整理するだけで、問い合わせ対応が早くなる場合もあります。
DXというと、大がかりなシステム開発を想像しがちです。
しかし、最初から大きく変える必要はありません。
むしろ、今の業務を丁寧に見直し、小さく試しながら効果を確認する方が、現場に定着しやすくなります。
「何を導入するか」より「何をやめるか」が重要です
DXを進めるうえで重要なのは、何を導入するかだけではありません。
それ以上に大切なのは、何をやめるかです。
紙の申請を残したままシステム入力も始めれば、作業は増えます。
Excel管理を残したまま新しいツールを入れれば、二重管理になります。
古い承認ルールを残したままデジタル化しても、スピードは上がりません。
新しい仕組みを入れるときは、同時に古い作業を手放す必要があります。
ただし、現場に根付いた業務には、必ず理由があります。
単純に「古いからやめましょう」と言っても、うまくいきません。
なぜその作業が残っているのか。
誰が困らないための作業なのか。
本当に必要なのか。
別の形で置き換えられるのか。
ここを一緒に整理することが、DXの大事な部分です。
室崎敬太が大切にしているDXの進め方
馬車馬テクノロジーズは、単にAIツールやシステムを導入する会社ではありません。大切にしているのは、まず業務の構造を理解することです。
現場では何が起きているのか。
経営者はどこに課題を感じているのか。
担当者は何に時間を取られているのか。
どの作業が属人化しているのか。
どこに情報の分断があるのか。
こうした点を整理したうえで、必要であればAIやシステムを活用します。
つまり、「AIを入れましょう」から始めるのではありません。
「この業務をどうすれば楽に、正確に、続けやすくできるか」から考えます。
場合によっては、最初にやるべきことがAI導入ではないこともあります。
Excelの整理かもしれません。
業務フローの見直しかもしれません。
小さな自動化かもしれません。
一部業務だけのPoC、つまり小さな試験導入から始めることかもしれません。
DXに必要なのは、いきなり完璧な正解を出すことではありません。
自社に合った形を見つけるために、小さく試し、現場の反応を見ながら改善していくことです。
DXは会社の未来を考えるための業務設計
DXは、単なるデジタル化ではありません。
そして、AI導入やシステム導入そのものが正解でもありません。
本当に考えるべきなのは、これからの会社をどのように回していくかです。
人が増えない中で、どう業務を続けるのか。
特定の担当者に頼りきった仕事をどう減らすのか。
現場に負担をかけずに、どう情報を見えるようにするのか。
お客様への対応品質をどう守るのか。
働く人が無理なく続けられる環境をどう作るのか。
DXとは、こうした問いに向き合うための取り組みであり唯一のルールとも言えます。
だからこそ、誰かが決めた正解をそのまま当てはめるのではなく、自社の業務、自社の人、自社の現場に合った形を考える必要があります。
「DXを進めたいが、何から始めればよいかわからない」
「AIを導入すべきか判断できない」
「システムを入れたが、現場でうまく使われていない」
「業務改善をしたいが、社内だけでは整理しきれない」
そのような段階でも、相談する価値は十分にあります。
私は、ツール導入ありきではなく、業務の整理、課題の見える化、小さなPoC、現場に定着する仕組みづくりまで伴走します。
DXの正解を外から押し付けるのではなく、自社にとって必要な変化を一緒に見つけていく。
そこから、本当に意味のあるデジタル化とAI活用は始まります。
私個人でもいいですし、馬車馬テクノロジーズの問い合わせからご連絡いただければ無料で30分『馬車馬壁打ち』ができます。
室﨑 敬太 【Linkedin】【E-mail】
馬車馬テクノロジーズ 業務執行社員/Chief Strategy Officer
その他DX関連の顧問を複数社請け負わせていただいております。
17歳で学生起業家として活動を開始し、事業の立ち上げと運営を経験。その後、ファーストリテイリンググループに入社。 三井住友海上火災保険株式会社にて法人営業やリスクマネジメントに従事し、金融・保険分野における専門性を確立。 独立後は室﨑総合保険/MKエージェンシーを創業。不動産会社との業務提携を経て役員に就任。 コロナ渦以降にAIやDX、プログラミングを学び現在は企業のDXおよびAX戦略の立案から実行までをリード。AI・LLMを活用した業務改革や新規事業開発を中心に、複数の企業において顧問として参画している。 国内上場企業から外資系企業まで、繊維、小売、自動車、金融、不動産、建設、サービスなど多岐にわたる業界での実務経験を有し、業界横断的な知見と実行力を兼ね備えたDXに強みを持つ。
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現在進行中の「気持ち良いDX」及び
就労支援プロジェクト、精神疾患罹患後の社会復帰事業に充てさせていただきます。