見出し画像

【コンビニアルバイト体験談19】 ホームレスとの話


まだ若かった頃、駅前のコンビニで深夜バイトをしていました。

深夜あたりを過ぎると、決まって一人のホームレスの男性がやって来ました。

いつも大きな荷物を抱え、近くの公園で寝泊まりしているらしかったのです。

名前は知りません。

私らは彼を「常連さん」と呼んでいました。

最初の攻防は立ち読みでした。

毎晩のように雑誌を一時間以上読み続けるので、店長から「長時間なら声をかけて」と言われました。

「すみません、長時間の立ち読みはご遠慮いただいているんです」

恐る恐る伝えると、男性は雑誌を閉じ、

「暖かいから、つい長居しちゃうんだよ」

と笑って店を出ました。

ところが翌日からは、店内をゆっくり回ってから、ちょっとしたお菓子を買うようになりました。

「今日は客だからな」

そう言われると、こちらも強くは出られません。

そんな小さな攻防が続いた冬の夜、男性が店の外で寒そうにしゃがみ込んでいました。

ちょうど休憩に入るところだった私は、肉まんを二つ買って外へ出ました。

「一個、買いすぎました」

差し出すと、男性は僕の顔を見て、

「兄ちゃん、嘘が下手だな」

と言って受け取りました。

それからしばらく見かけなくなりました。

数か月後、レジに見覚えのある男性が現れました。

以前より少し小ぎれいな服を着ていました。

そして、缶コーヒーを二本買い、そのうち一本を僕に差し出し、

「今度は俺が買いすぎた」

そう言って笑いました。

最後まで、嘘が下手なのはお互い様でした(笑)


★お読みいただきありがとうございます。
・私は文章系以外にも、ラインスタンプを作成しております。
・長期間かけて作り込んだシュールなヒグマです。
*収益の大半は最近の水害被災地へ寄付しております。よろしければどうぞ。




いいなと思ったら応援しよう!

ノアキ光 🔀発達障害で苦労しながらも、毎日寝不足になるほど努力しながら、何とか努力しています。 もし気に入っていただけましたら、応援よろしくお願いします。

この記事が参加している募集