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#209 ダイナソーJr.『ゼア・ニア』

服部さんへ

 原宿には、ぼくも取材で時々行くのですが、大げさではなく、目的地(ご想像のレコード会社)に着くまでの数分間、日本語が聞こえてこない、なんてことも珍しくありません。いいんだか悪いんだか……。そういえば、あれだけ足を運んだアストロホールがなくなって、早くも10年近く経ちます。いいバンド、いいライヴにたくさん出会いました。
 ご紹介のアレクシス・フレンチの新作、聴く人の心情や目に映る風景を、ピアノで彩る1日24時間のサントラといった感じで、なんとも粋ですね。きっと本人も、洒脱な人なのでしょう。たたずまいからも、それを感じます。ロックとか、聴くのかな?
 1曲目の「Good Morning」で「おはよう」を表現して、昼、夜……なんていうベタなコンセプトではないと思いますが、書かれている通り、曲ごとにピアノで何かを語りかけているようです。何を語りかけているのかは、その日の聴き手の耳に、心に委ねるということなのかなと。そういうところが、歌がないインストゥルメンタルのよさだと、改めて感じました。特に、ストリングスをフィーチャーした曲が、リリカルでいいです。
 さて、今回ぼくは、20歳過ぎごろに出会って以降、元気でいてくれると、同じ時代を生きられていることが、ちょっとうれしくなるダイナソーJr.の新作を紹介します。 

ダイナソーJr.『ゼア・ニア』

 会社員として、営業マンというものをやっていたころ、今は懐かしWAVEやらVirginやら、タワレコやら、しょっちゅうCD屋に立ち寄り、ジャケ買いをしていた。ご承知の通り、ジャケ買いには失敗も少なくないのだけど、いまだに大成功だったなあと思っている1枚がある。それが、このアルバム。

 『グリーン・マインド』(1991年)

 感電するような轟音ギターに、J・マスシスのヘナチョコ声という、ずっこけるようなミスマッチ……と思いきや、キャッチーにして甘美なメロディと相まって、聴くほどに陶酔感が押し寄せてきて、「なんじゃこりゃ〜!」状態に。そんな快感は、それまでに体験したことがなかった。
 歳月、人を待たず。『ゼア・ニア』は、メンバー3人とも還暦を超えたダイナソーJr.の通算13枚目のアルバムとなるのだけど、これが『グリーン・マインド』を彷彿させるフレッシュさ、エネルギッシュさで、なんかもう、うれしくなって、ひとりニヤついてしまった。相変わらず、すっとぼけたMVも楽しい。 

 個人的にダイナソーJr.の大きな、抗えない魅力だと感じているのが、ヴォ
ーカル・メロディとギター・メロディーーしかもそれぞれにキャッチーで美しいーーを、一緒に味わえるところ。冗長なギター・ソロなどはあまり好きではない僕も、彼ら、というかJのギターには聴き入ってしまう。ぐっとテンポ・ダウンした「Blowin' Up」という曲などは、イントロのギター・ソロ一発で、それこそ虜になってしまった。

 気づいた人もいると思う。「Blowin' Up」を歌っている(ソングライティングも)のは、セバドーなどの活動でも知られるルー・バーロウ(B)で、これまであまり気に留めていなかった(失礼!)、彼のニール・ヤングばりのヴォーカル、めちゃくちゃいいです。
 ルー・バーロウへの懺悔のつもりはないのだけど、同じく彼が作って歌っているアルバムのラスト曲が、およそダイナソーJr.とは思えない男前、2枚目ど真ん中のロック・ナンバーとなっていて、ちょっと目から鱗だった。残念なことに、MVもリリック・ヴィデオもまだ公開されていないようなので、音源でぜひ。
 “90年代オルタナ”の代名詞的存在となっているバンドなれど、2020年代のダイナソーJr.がまた、いい。さあ、今こそ聴こう。
                              鈴木宏和


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