コラム Focus(#45)|僕の時間を、誰にでも渡すのはやめた。|音楽プロデューサー
仕事でも、友人関係でも、いわゆる「テイカー」はいる。
人の時間も。アイデアも。経験も。ネットワークも。
なぜか、タダだと思っている。
もちろん、僕自身、人に何かをしてあげることは嫌いではない。
むしろ、好きなほうだと思う。
「この人と、この人が出会ったら面白いかもしれない」
「このアイデア、役に立つかもしれない」
「これ、知っておいたほうがいいよ」
そんなことを、ずっとやってきた。
見返りを求めているわけではない。
でも、見返りを求めないことと、何でも差し出すことは違う。
最近、その違いを強く意識するようになった。
時間には、価値がある。
アイデアにも、価値がある。
そして、人との信頼関係には、もっと大きな価値がある。
何十年もかけて築いてきたネットワークは、スマートフォンの連絡先一覧ではない。
一人ひとりとの間に、時間がある。
仕事がある。
約束がある。
思い出がある。
そして、信頼がある。
だから、それを簡単に使おうとする人には、やはり違和感を覚える。最近も、正直、「軽く見られているのかな」と感じることがあった。
以前の僕なら、
自分の伝え方が悪かったのか。
距離感を間違えたのか。
こちらにも原因があったのか。
そんなふうに、自分の側にも理由を探していたと思う。
でも、もう、そこまで自責にしなくていいと思うようになった。
合わない人は、合わない。
礼儀の感覚が違う人もいる。
時間の価値が違う人もいる。
人との関係を、「何をしてもらえるか」で考える人もいる。
そこを、無理に理解し合おうとしなくてもいい。
僕も還暦になった。
これからの時間は、無限ではない。
だったら、自分の時間も、アイデアも、経験も、ネットワークも、
一緒に何かを生み出したいと思える人に使いたい。
ギブ・アンド・テイクという話でもない。
返してほしいわけでもない。
ただ、お互いをリスペクトできる関係でいたい。
「ありがとう」が自然に行き交う人と仕事をしたい。
面白いアイデアが浮かんだら、真っ先に伝えたくなる人と付き合いたい。
困っていたら、損得を考えずに手を差し伸べたくなる人を大切にしたい。
そして、僕自身も、誰かにとってそういう人でありたい。
人生から誰かを切り捨てる、ということではない。
自分の大切な時間を、誰と過ごすのか。
そこを、自分で決めるということだ。
嫌われないように生きるより、
好きな人たちと、好きな仕事をして、好きなものを作る。
もう、それでいい。
いや。
これからは、それがいい。
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