積み重ねた音が、一つになる──Siamese/Elements【ディスクレビュー50】
重厚なリフに身体を揺さぶられた次の瞬間、思わず口ずさみたくなるメロディーが飛び込んでくる。Siameseの『Elements』は、ヘヴィな音と、ポップネスを味わえるアルバムだ。
デンマーク・コペンハーゲンを拠点に活動するバンド「Siamese」。Siamese Fighting Fishとして活動したのち、2014年に現在の名前へ改名した。
『Elements』は2024年8月9日に発表された、7作目のスタジオアルバムとなる。前作『Home』で見つけた自分たちのスタイルに、さらに磨きをかけた作品として説明している。
この作品を聴き、惹かれるのは、サウンドの重量感と耳馴染みのよいメロディーとの距離の近さ。
鋭く刻まれるリフや重厚なブレイクダウンには、身体を揺さぶる力がある。
サビでは歌声が大きく開け、曲の印象を鮮やかに塗り替える。激しい音に圧倒されていたはずが、気づけばメロディーを追いかけている。その切り替わりが気持ちいい。
身体を動かす重さと、共に歌えるメロディー。その両方を強めることで、楽曲の起伏がより大きくなっている。
さらに、ギタリストAndreas KrügerのEDMやヒップホップ領域での楽曲制作のスキルも生かされている。シンセサイザーが空間を広げ、ビートがギターとは異なる躍動感を持ち込む。
音の密度や手触りが変化するからこそ、重いパートの衝撃も、サビで視界が開けるような感覚も際立つ。
お気に入りの楽曲①「Chemistry」
静けさから重さへ、そこからキャッチーなサビへと移る展開に引き込まれる一曲だ。
ボーカルとシンセサイザーによる静かな導入。歌声に耳を寄せていると、ほどなく重量級のブレイクダウンが襲いかかってくる。その落差が鮮烈だ。
おもしろいのは、重さを十分に感じさせたうえで、サビではメロディーの魅力を前面に押し出してくるところ。ヘヴィなパートがあるからこそ、サビの伸びやかさに心をつかまれる。
中盤にもブレイクダウンを差し込み、終盤はスクリームと激しいサウンドで畳みかける。大きく揺さぶられる展開の中でも、曲の中心には耳に残る歌がある。
リフの重さとメロディーの親しみやすさのその化学反応を、最もわかりやすく楽しめる。
お気に入りの楽曲②「Utopia」
伸びやかなクリーン・ボーカルがまず耳を引く。そこへバンドサウンドが加わり、アップテンポなビートとレトロな感触のシンセサイザーが、楽曲を軽やかに運んでいく。
「Chemistry」の落差が下へ叩きつけるような衝撃を持つとすれば、こちらで惹かれるのは、前へと抜けていく感覚だ。ヘヴィな音を受け止め続けてきた耳に、メロディーの広がりが心地よく届く。
終盤には、アコースティック・ギターを中心とした穏やかな場面が訪れる。終盤はアコースティック・ギターを中心とした穏やかな展開を挟み、最後のサビで一気に気持ちを持ち上げる。
Siameseが持つオルタナティブ・ロックとしての魅力と、歌を聴かせる力が伝わってくる。
『Elements』では、メタルコアの重量感も、ポップのメロディーも、エレクトロニックの躍動感も、Siameseの音として自然につながっている。
多彩なジャンルを取り込むほどに、バンドの個性が鮮明になる。積み重ねてきた音楽が実を結んだ一枚だ。
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