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音楽の“できるまで”に触れた夜—「音楽世界線」androp 内澤崇仁さん回を終えて—(佐藤純一)

今夜の『NEW WORLD LINE presents 佐藤純一・nonocの音楽世界線』は、andropの内澤崇仁さんをゲストにお迎えしました。

記念すべき番組最初のゲストは内澤さん。
そして、fhána主催イベント「Sound of Scene」の第1回にもandropに出演していただいたりと、節目ごとにご一緒させていただいている方です。

そんな内澤さんと、今回はあらためて「音楽の作られ方」そのものについて、じっくり話すことができました。


雪国から始まる創作

内澤さんは青森・八戸出身。
僕は新潟、nonocは北海道。

偶然にも全員が雪国出身ということで、どこか共通する空気感があった気がします。

静けさの中で何かを育てる感覚。
閉ざされた季節の中で、自分の内側に潜っていく感覚。
音楽との向き合い方にも、そういう土地の記憶はどこか滲むのかもしれません。

言葉にしきれないけれど、
「なぜ自分たちは音楽を作るのか」という根っこの部分に、どこか似たものを感じた回でした。


アルバムという“長い戦い”

今回とても印象に残ったのは、andropのアルバム制作についてのお話でした。

andropはアルバム発売の延期を発表しています。
楽器のレコーディングはすでに終わっている。
でも、内澤さんの中で、歌詞として「これだ」と思える言葉がまだ降りてきていない。

外から見ると、曲作りは“作ればできる仕事”のように思われることもある。
でも実際には、特に自分がバンドマンであり、表現者であるほど、そう簡単にはいかない。
楽曲提供の仕事であっても、締め切り通りに必ず作れるかといえば、正直そう言い切れない。
その時に本当に鳴るもの、本当に書ける言葉が来るかどうかは、自分でも分からない。
内澤さんのその話は、すごく切実で、でもすごく正直で、胸に残りました。

僕自身もまさにそういう感覚があるので、よく分かる。
そして、分かるからこそ、辛い。

作らなければいけない。
締め切りも責任も現実もある。
それでも、最後は“これじゃない”という感覚を誤魔化せない。
音楽を作る人間にとって、その苦しさはたぶんずっと消えないものなんだと思います。

音楽は一瞬で届くものだけど、そこに至るまでの時間はとても長い。
その“見えない時間”の話ができたこと自体、この番組の意味だと思っています。


シンプルになっていく音

そして、最近のandropの音がシンプルになっていっている理由についてのお話も、とても印象的でした。
音数を増やすのではなく、一つ一つの音をより大きく聴かせたい。
情報を足していくことではなく、削ぐことで届くものがある。
音を整理することで、決められた音響空間のフォーマットのなかで歌と各楽器の音を最大限に大きく聴かせる。
そして一音の意味や存在感が立ち上がる。
そういう美学は、今のandropの音楽を聴く上でもすごく大事な視点だと思います。

派手さではなく、強さ。
複雑さではなく、深さ。
そういう方向へ音が研ぎ澄まされていく過程の話を、ご本人の言葉で聞けたのはとても贅沢な時間でした。


なぜ「音楽世界線」を始めたのか

そもそもこの番組を始めた理由のひとつが、まさに今日のような時間を作るためでした。

完成された作品や表に出た情報だけではなく、
そこに至るまでの迷いや葛藤、選択、時間そのものを共有したい。
音楽をただ消費されるものとしてではなく、
“誰かが苦しみながら生み出したもの”として、もう一度丁寧に感じられる場所を作りたかった。

だから今日の回は、僕にとってもすごく象徴的でした。
最初のゲストとして来ていただいた内澤さんに、この場所で、創作の本質に近い話を聞けたこと。
それはこの番組がやりたかったことの、ひとつの答えだった気がします。

内澤さん、ありがとうございました。
そして聴いてくださったみなさんも、ありがとうございました。

またこうして、音楽の“世界線”が交差する時間を積み重ねていけたらと思います。

nonocによる内澤さんの似顔絵
内澤さん、ありがとうございました!


2019年7月17日、andropをゲストに招いて開催してSound of Scene curated by fhána第一回の様子。
2019年7月17日。内澤さんと初めて深くお話させていただいた、第一回Sound of Sceneの打ち上げにて。