「世界線ファクトリー」ついに始動─ 音楽世界線 #9 ─ 佐藤純一による放送後記
今回の『佐藤純一・nonocの音楽世界線』では、ついにデモテープコーナー「世界線ファクトリー」を放送しました。
この企画は、実は番組を始める前からずっとやりたいと思っていた企画でした。
昔、坂本龍一さんの『サウンドストリート』という伝説的なラジオ番組があって、そこから槇原敬之さんやテイ・トウワさんといった才能が世に出ています。
そして僕自身、その流れを受け継ぐような存在だった高野寛さんの『土曜ソリトン side-B』にも大きな影響を受けています。
自分の中では今回の企画は、そのあたりの文化の延長線上にあります。
だからこそ、自分がラジオを持つことになったら、いつかこういう場所を作りたいと思っていました。そして今回、それがようやく形になりました。
今回募集してみたら、本当にたくさんの曲が届きました。
DTMを始めたばかりなんだろうなという初々しい作品もあれば、ボカロ曲もあるし、もうほとんどプロレベルじゃないですか?というような完成度の高い曲もありました。
僕は作曲家・編曲家として、そしてアーティストとして感じたことを率直にお話ししました。
nonocもシンガー、アーティストの立場から感想を話してくれたのですが、隣で聞いていて「そこを見るんだ」と思うことも多くて面白かったです。
今回あらためて感じたのは、アマチュアの作品の面白さです。
良くも悪くも、バランスが歪なんですよね。
プロの視点から見ると、
「ここは整理した方がいいな」
「ここは削った方が伝わるな」
という部分は結構あります。
でも、その歪さ自体が魅力になっていることもある。
整えれば整えるほど良くなるとは限らないんです。
むしろ引っ掛かりがなくなってしまうこともある。
だから、
「明らかに直した方がいい部分」
と
「個性として残した方がいい部分」
その線引きは本当に難しいなと思いました。
あと、デモを聴きながら思い出したことがあります。
プロになった今でも、曲作りをしていると、自分で作ったものからなかなか離れられないんですよね。
他人が聴いたら割とすぐ分かることでも、作っている本人には見えなくなる。
それは単純に視野が狭くなっているだけではないと思います。
そこにはサンクコストの心理もある。
ゼロからイチを生み出すのは、本当に大変です。苦しいし、不安だし、面倒です。
でも目の前にデモが存在しているということは、少なくともその苦しさを乗り越えて何かを作り上げたということでもある。
だからこそ、「ここを大きく変えた方が良さそう」
と言われても、なかなか手放せない。
自分でも薄々気づいていても、そこを根本的に変えるということは部分的にでもゼロイチの苦しみに向かい合わなければならない。
だから、
「今ある形をなんとか活かせないか」
と何度も微調整を繰り返してしまう。
そして散々こねくり回して、
「やっぱりダメだ」
と自分自身が本当に納得して、初めてリセットできる。
これは曲作りだけじゃなくて、人生全般にも言えることかもしれません。
仕事でも人間関係でも、積み上げてきたものがあるからこそ、なかなか手放せない。
本当は別の道があると分かっていても、もう少しなんとかならないかと粘ってしまう。
そんなとき、自分の外側から見てくれる人の存在が大事になることがあります。
自分ひとりでは見えなくなっていることを指摘してくれる人。
少し先の景色を見せてくれる人。
背中を押してくれる人。
もちろん最終的に決めるのは本人です。
でも、その判断材料を増やすことはできる。
今回の「世界線ファクトリー」が、そんな場所になっていったら嬉しいなと思っています。
今回の世界線ファクトリーも、そんな場になっていったら嬉しいです。
リスナーのみなさんに楽しんでもらうのはもちろんですが、もしかしたらこの中から何年後かに素晴らしいクリエイターが生まれるかもしれない。
そんなことを想像しながら、僕自身も楽しく聴かせてもらいました。
応募してくださったみなさん、本当にありがとうございました。
またぜひ送ってください。
未来のクリエイターたちと出会えることを、僕もnonocも楽しみにしています。

