「毎日ロングトーンをした方がいい」は本当?
トランペットの基礎練習と聞いて、
多くの人が最初に思い浮かべるものの一つが、
ロングトーンではないでしょうか。
音をまっすぐ伸ばす。
できるだけ揺らさない。
きれいな音を保つ。
私も長い間、
ロングトーンは毎日やるものだと思っていました。
調子が良い日も、悪い日も、
まずはロングトーンから始める。
長く伸ばせるほど、
安定して吹けているような気もしていました。
けれど、フォーカルジストニアを経験し、
一度自分の吹き方を細かく見直すようになってから、
私はロングトーンとの付き合い方を変えました。
現在は、最初から長く音を伸ばすよりも、
二秒ほどの短い音を使って状態を確認することが増えています。
では、ロングトーンは必要ないのでしょうか。
毎日続ける意味はないのでしょうか。
今回は、
ロングトーンをするか、しないかではなく、
「何のために行うのか」
というところから考えてみたいと思います。
ロングトーンを続けていれば安心だと思っていた
以前の私は、
ロングトーンを基礎練習の土台として考えていました。
まず音を出して、
できるだけ長く、まっすぐ伸ばす。
音が揺れれば、揺れないように支える。
音色が変われば、変わらないように保つ。
途中で苦しくなっても、
決めた拍数までは吹き切ろうとしていました。
もちろん、それによって
息の流れや音の変化に気づけたこともあります。
落ち着いて一音と向き合う時間として、
ロングトーンが役立っていた時期もありました。
ただ、今振り返ると、
私はいつの間にか
「何を確認するための練習か」よりも、
「決めた長さまで伸ばせたか」を重視していたように思います。
音を保つことと、
身体を固めて耐えることは同じではありません。
当時の私は、その違いをあまり見ていませんでした。
長く伸ばすほど、途中の変化が見えにくくなった

ジストニアの症状が出てから、
私は音の出始め、吹いている途中、音を止めた後に、
自分の身体がどう動いているかを見るようになりました。
すると私の場合、
音の出始めは比較的自然でも、
伸ばしているうちに少しずつ力が加わることがありました。
口元を保とうとする。
音を揺らさないようにする。
息が足りなくならないように頑張る。
そうしているうちに、
最初とは違う身体の使い方になっていても、
音が続いていると「できている」と判断してしまうことがありました。
これは、ロングトーンそのものが原因だった、
という意味ではありません。
私の場合は、
その時の状態を確認しないまま長く伸ばそうとすると、
無意識に加えた力まで一緒に保ちやすかった、ということです。
そこで、まず短い一音を吹き、
一度楽器を下ろす練習を増やしました。
二秒ほど音を出して、止める。
息は自然に流れていたか。
口だけで頑張っていなかったか。
肩や喉まで固まっていなかったか。
吹き終わった後に違和感が残っていないか。
短い音であれば、
途中で起きた変化を比較しやすく、
違和感があった時にも、すぐにブレスへ戻れます。
私にとってショートトーンは、
ロングトーンを否定するための練習ではなく、
長く伸ばす前の状態を確認する方法になりました。
ロングトーンは「固定する練習」なのか
ここで考えたいのは、
ロングトーンの中で何を確認するのか、ということです。
ロングトーンというと、
一つの音をできるだけ同じ状態で保つ練習、
という印象があるかもしれません。
けれど実際に吹いている間も、
息の残り方や身体の感覚は少しずつ変わります。
最初から最後まで、
身体のあらゆる場所を同じ形に固定しようとすると、
かえって余計な力が加わる場合もあります。
私が現在意識しているのは、
何も変えないことではなく、
変化に気づきながら音を続けることです。
音の出始めはどうだったか。
途中で息が苦しくなっていないか。
音を保とうとして、口元を固めていないか。
終わる直前に顎や口の中が大きく変わっていないか。
音を止めた後も、すぐ次の音を出せる状態か。
同じ長さのロングトーンでも、
何を観察するかによって、
練習の意味は変わるように思います。
「毎日やること」より「今日やる理由」
ここまでは、
ロングトーンで何を確認するかについて考えてきました。
では、その練習を
毎日同じように行う必要はあるのでしょうか。
ロングトーンを毎日行うことで、
音や息に落ち着いて向き合える人もいると思います。
一方で、調子が整っていない日に、
いつもと同じ長さや音域を守ろうとすると、
苦しい状態を長く続けることになる人もいるかもしれません。
同じ人でも、日によって身体の状態は変わります。
昨日は心地よくできたロングトーンが、
今日は重く感じることもあります。
反対に、短い音で状態を確認した後なら、
無理なく音を伸ばせる日もあります。
だから私は、
「毎日必ずロングトーンをする」と先に決めるより、
今日の自分に必要かを確認してから選ぶようになりました。
ロングトーンをする日があってもいい。
ショートトーンだけで終える日があってもいい。
短い音から始めて、
問題がなければ少しずつ長くする方法もあります。
メニューを守ることより、
その練習によって今の自分に何が起きているかを見る。
今は、その方が私にとって
練習を組み立てやすいと感じています。
まずは一音の「前・途中・後」を見てみる

もし普段ロングトーンをしている方は、
いつもの長さを伸ばす前に、
楽に出せる中音域で一音だけ試してみてください。
実際に試す時は、
一音の「前・途中・後」を分けて見ていきます。
最初は二秒ほどの短い音を吹きます。
音を出す前
• 息を止めていないか
• 肩や首に力が入っていないか
• 無理に形を作ろうとしていないか
音を出している途中
• 音を保つために力が増えていないか
• 息の流れが急に変わっていないか
• 音色や身体の感覚が大きく変わっていないか
音を止めた後
• 口元や顎に強い疲れが残っていないか
• すぐにもう一度、自然に構えられそうか
• 違和感を無視して続けようとしていないか
短い音で違和感があった時は、
私は無理に長くせず、
一度楽器を下ろしてブレスへ戻ります。
それでも自然な状態に戻りにくければ、
その日はそこで終えることもあります。
短い音で大きな違和感がなければ、
次は少しだけ長くしてみます。
長くした瞬間に何かが変わったなら、
その変化が今の自分に必要なものなのか、
それとも音を保つために加えた力なのかを観察します。
長く伸ばせたことだけを、成功の基準にしなくてもいい。
短い音に戻ったことで自然に吹けたなら、
それも大切な発見です。
「毎日ロングトーン」が間違いなのではない
今回伝えたいのは、
ロングトーンを毎日してはいけない、
ということではありません。
ロングトーンによって、
自分の音や息を丁寧に観察できる人もいます。
毎日の変化を比べる基準として、
同じ練習を続けることが役立つ場合もあるでしょう。
ただし、
「基礎練習だから」
「昔から毎日やるものだから」
という理由だけで続けているなら、
一度、何のために行うのかを考えてみてもよいと思います。
何を確認したくて、その音を伸ばしているのか。
長くすることで、何が分かるのか。
吹き終わった後、身体はどんな状態になっているのか。
その答えは、奏者によっても、日によっても違います。
ロングトーンをするかどうかより、
自分の音と身体の変化を受け取れているか。
私にとっては、
それが練習を選ぶ基準になっています。
おわりに|長く保つことと、形を固定すること
「毎日ロングトーンをした方がいい」
この問いに対する今の私の答えは、
毎日するかどうかを先に決めなくてもよい
です。
目的があり、
その日の自分を観察できるのであれば、
ロングトーンは一音と丁寧に向き合う時間になります。
一方で、長く伸ばすことが目的になり、
違和感や力みを保ち続けているなら、
一度短い音へ戻る選択もあります。
そしてロングトーンを見直す中で、
私はもう一つの疑問を持つようになりました。
音を安定させるためには、
アンブシュアを同じ形に固定し続ける必要があるのでしょうか。
そもそも、
すべての奏者に共通する
「正しいアンブシュア」はあるのでしょうか。
歯並び、唇、顎、骨格が違えば、
自然に音が出る形も同じとは限りません。
次回の「トランペット再考室」では、
「アンブシュアはこうあるべき」は本当?
について、私自身が形を作ろうとしてきた経験と、
ジストニアから吹き方を再構築する中で感じたことをもとに、
考えてみたいと思います。
それでは、次回のnoteもお楽しみに!
🎺マンツーマンレッスンのご案内
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
このnoteでは、私が25年間トランペットと向き合う中で気づいたことや、レッスンで感じたことを発信しています。
「ロングトーンを続けているけれど、自分に合っているのか分からない」
「今の状態に合ったウォームアップを整理したい」
という方は、マンツーマンレッスンも行っています。
一つの正解を押しつけるのではなく、一人ひとりの身体や感覚を確認しながら、その方に合った練習の組み立て方を一緒に考えます。
初心者の方から経験者の方まで、対面・オンラインのどちらでも受講いただけます。
お問い合わせ・ご予約
📧 メール (お問い合わせ)
musikwieluft@gmail.com
💬 LINE公式アカウント (お問い合わせ)
https://lin.ee/QNTwRSU
🎺 トランペットレッスン(ご予約)
https://reserva.be/nakaomamitrumpetlesson
🎵YAN MUSIC ONLINEのご案内
こうした身体との向き合い方や、日々の状態に合わせて練習を選ぶ考え方を、仲間と実践できる場所として「YAN MUSIC ONLINE」を運営しています。
「音楽をもっと楽しく、もっと長く続ける」をコンセプトに、楽器や経験を問わず参加できるオンライン音楽コミュニティです。
Discordを使って、もくもく練習会、部員同士の交流、毎月の音楽チャレンジ、気軽に相談できる部室などを行っています。
完成度を競う企画ではありません。途中経過だけの参加や、聴くだけ・見るだけの参加も歓迎しています。
このnoteでは「考え方」を、YAN MUSIC ONLINEでは「実践できる環境」を届けたいと考えています。
🔗YAN MUSIC ONLINE
https://r.goope.jp/musikwieluft/free/yan-music-online

🎺コンサート情報
Bunte Talentvielfalt 3rd Live
「Echoes of Yesterday」
YouTubeから生まれたトランペット三重奏グループによる3rdライブ。
オリジナル曲から有名曲まで、3本のトランペットだからこそ生まれる華やかで繊細なサウンドを、素敵な会場でお届けします。
ピアノにブンテ楽曲アレンジャーでお馴染みの鳥居祐美さんを迎え、この日だけの特別なステージをお楽しみください。
📅 2026年11月28日(土)
🕕 Open 18:00 / Start 18:30
📍Cafe & Live spot FJ’s(中目黒)
🎫 ミュージックチャージ
4,000円+1ドリンク
🎟 ご予約はこちら
https://forms.gle/jD3ymr3zDq9DiGQMA

