進撃の巨人|進撃の読書感想文 第3章 世界の大いなる流れ(感想・考察)

『進撃の巨人』を読み返す中で、光るムカデ(有機生物の起源)や座標の仕組み、アッカーマン一族(巨人科学の副産物)、エレンとユミルの記憶のつながりなど、物語の背後にある大きな流れについて考えさせられる場面がいくつもありました。登場人物たちの意志や感情だけでは説明しきれない、生命・記憶・自由が絡み合う大きな流れが物語全体を貫いているように感じられます。自由を求めたエレンは、本当に自由だったのだろうか。本稿では、読後に残ったこの問いを、エレンやユミルを取り巻く“世界の流れ”という視点から考えていきます。

進撃の巨人という物語を、個人の意志や感情だけで読み解こうとすると、説明しきれない部分が残るように思えます。その背後には、登場人物を超えた何らかの流れが働いていたようにも見えます。

第1節:有機生物の起源

物語の終盤、エレンに寄生し、知性の巨人の力の源泉として姿を現した光るムカデ。作中ではガスを噴射して無垢の巨人を生成する描写があるが、それだけがこの生物の全ての能力でしょうか。あの砂が広がる座標という空間そのものも、有機生物の起源が有していた領域とも解釈できます。

さらに、歴代の九つの継承者の巨人を現世に呼び戻すこと、過去の継承者の記憶を継承すること、欠損した肉体の修復。これらはいずれも、膨大な情報を保存し、必要に応じて再構築できなければ成立しない能力のように思えます。

始祖の巨人を、ときに全能の存在として捉えてしまう。しかし九つの巨人の始祖とは、有機生物の起源がユミルに寄生したことで発現した一形態ではないだろうか。
ユミルの巨人から始祖を含む九つの巨人が派生したことを踏まえると、知性の巨人が行使できる能力の多くは、有機生物の起源そのものが本来備えていた力であっても不思議ではありません。

有機生物の起源が明確な意志を持つ存在かどうかは作中で語られない。しかし、その作用は結果として生命を増やし、存続させ、拡張させる方向に働いているように見えます。

ここで、始祖の巨人に関する疑問があります。始祖の力には王家の血という条件があります。では、始祖ユミルは王家の血を引いた奴隷だったのでしょうか。もし彼女が単なる奴隷であったのなら、この縛りを付けたのはユミル自身以外に考えにくいのですが、なぜそのような制約をしたのでしょうか。

故郷を焼かれ、親を殺され、舌を抜かれてなお、始祖ユミルはフリッツ王に従い続けました。
作中では、その理由は「愛」と呼んでいますが、それは我々が想像する情緒的な愛とはあまりにかけ離れているように思います。
第122話で、彼女が結婚の儀を遠くから見つめる描写からは、愛への渇望や憧れがあったことが推察されます。

あるいは、この「愛」と呼ばれる執着の別の側面は、彼女個人の感情を超えた、より根源的なものだったのかもしれません。
自分を家畜として扱い、尊厳を奪い去った者にさえ縋り、その子を成し、血を繋げようとする。そこに彼女なりの愛があったのかもしれない。しかしその愛には、生命を存続させようとする生物の本能が彼女と結びつき、王家への隷属という構造を固定化させてしまったように見えます。

この先は有料部分になります。
有料部分では、以下のテーマを扱っています。

● ケニーの言葉が示す奴隷性とエレンの動機の欠如
「やりたかったんだ、どうしても」という動機の空白
グリシャの「お前は自由だ」という呪い
自由を求め続けた結果、自由の奴隷になっていく構造

● アッカーマン一族の巨人科学の副産物
記憶改竄は効かないが、干渉は可能という構造

● ジークが座標で語った「生きるとは増えることだ」の違和感
性質と目的を混同したジークの論理
ユミルがジークではなくエレンを選んだ理由

● 地鳴らしの動機の空白と一本道の未来構造
エレンが「未来は変わらないらしい」と語った意味
グリシャとエレンが見た変更不能な未来

● エレンとユミルの表情が一致する理由
「二千年後の君へ」が示すユミルの未来認識

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進撃の巨人の物語を、因果と記憶の流れから読み解くシリーズです。 本シリーズは 第1章〜第6章の全6章構成 で、物語の因果関係・記憶の継承・…

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