『ぼくらの勇気 未満都市』を令和に初めて見た

 『ぼくらの勇気 未満都市』は、1997年に日本テレビで放送されていた連続ドラマだ。主演はKinKi Kidsの堂本光一と堂本剛。ある理由により子どもたちだけでサバイバルしなければならなくなった状況下で、そこでの人間ドラマが描かれる。

 私は放送当時まだ3歳だったので、リアルタイムでは見ていない。大きくなってからネット上でタイトルを知り、いろいろな人が名作だと言っているのを目にした。
 そして2026年3月頃、TVerで期間限定無料配信が始まったので見てみた。リアルタイムでこのドラマを見ていたという歳上の友人から強く勧められたので、せっかくなら見てみようと思ったのだ。

私とKinKi Kids

 ドラマの内容に言及する前に、主演のKinKi Kidsについて。なお、今はDOMOTOに改名しているがここでは当時の呼称を用いる。

 私は一時期、KinKi KidsのCDを聴きまくっていた。でも別に光一や剛のことをアイドルとして好きなわけでもなく、「ファン」と言うほどではなかった。単純に、2人とも歌がうまくて良い曲が多かったのでアーティストとして好きだったのだ。そんな楽しみ方をしていた人、存在するのか? と自分でも思う。
 持っていたアルバムは確か1枚目の「A album」から「I album -iD-」ぐらいまで。デビュー曲『硝子の少年』はもちろん、『ボクの背中には羽根がある』『やめないで,PURE』など歴代の名曲を毎日のように聴いていたが、それらのタイアップ元のドラマのことは一切知らなかった。

 彼らの役者としての活動に関して、まともに見たことがあるのは剛が実写版銀魂で高杉晋助の役をやっていたときぐらいだ。しかし高杉晋助はかなり落ち着いたトーンで喋る役だし、登場シーンがそこまで多いわけでもないので、この作品だけでは役者としての剛に対して、良くも悪くも特に何の印象も抱けなかった。

 その後、KinKi Kidsの存在が私の生活に入ってきたのは、Netflixで配信されていた『timelesz project -AUDITION-』を見ていたときだった。timelesz加入オーディションの5次審査に向けて切磋琢磨する候補生たちの様子を、事務所の大先輩として光一が見に来る様子が映し出されて、久しぶりにKinKi Kidsを認識した。

 私にとってKinKi Kidsは「良い曲をたくさん歌っている、銀魂の実写に出ていた人と、タイプロにゲスト出演した人によるコンビ」という認識止まりだったのだ。その状態で今回、初めて、おそらくKinKi Kidsの人気が全盛期だったであろう時期の、2人が主演を務めたドラマを一気見した。

本作を見てびっくりしたこと

 『ぼくらの勇気 未満都市』はものすごく面白かったのだが、驚いたこともかなりあった。

主題歌『愛されるより 愛したい』

 まずオープニングが流れた瞬間、驚いた。「愛されるより 愛したいって、未満都市の主題歌だったの!?」……世間的にはおそらく逆だろう。
 KinKi Kidsをアーティストとして好きだった当時、「古いけど、なんかやたらと存在感があって印象に残るな」と思っていたのが、この曲だった。

 しかも、曲と映像がいい具合にマッチしていて、これから始まる物語に心がワクワクする。でもこの曲、歌詞がドラマの内容とほとんど関係ないのだ。「ギリギリのオトナたちが 積み重ねてるすべてのもの 壊さなきゃ新しい明日は来ない」なんかは、子供vs大人の話でもある本作のテーマに何となく合っている感じはあるが、タイトルにもなっているサビの「愛されるよりも 愛したい真剣(マジ)で」に関しては、そんな話は本編で一切していない。真剣(マジ)で歌詞の内容が関係ない。

 ただ、意外とこのアンマッチな感じがいいのかもな〜とも思う。『残酷な天使のテーゼ』だってエヴァンゲリオンの話と全然関係ない歌詞だけど、なぜか作品にすごく合っているように感じられる名曲だし。

 当初は、KinKi KidsのB albumに収録されている『イノセント・ウォーズ』が未満都市の主題歌になる予定だったしいが、今となってはそうならなくて正解だったように思う。確かにイノセント・ウォーズもかっこいい曲だし、よりドラマの内容に合っている。でも、改めて聴いてみて「合いすぎているのもそれはそれで違うのかもしれない……」と思った。ドラマと主題歌の歌詞が合いすぎていると、主題歌が「説明」すぎてしまうというか、ドラマのストーリーを通じて視聴者に伝えたいことを歌でももう一回伝えている感じがして胸やけするような気がする。

 なので、紆余曲折ありつつもこのドラマの主題歌が『愛されるより 愛したい』で絶対に正解だったな、というのは令和になった今でも思える。この曲なしに『ぼくらの勇気 未満都市』は成立しなかっただろう。

剛の演技が天才的に上手い

 タケル役の剛の演技が、めちゃくちゃ上手い!! 銀魂の高杉晋助と全然違った……(役も演じた年齢も違うから当たり前)。銀魂の高杉も別に悪いとは特に思わなかったけど、役として心を掴まれたのは圧倒的にタケルだ。
 剛の素の関西弁と、飄々としたタケルの性格がよく合っていて、実在する人間かのように思えた。というかタケルという人間が存在しないの、マジ……? と軽くショックを受けるぐらい、剛の演技に血肉が通っていた。私は、映像作品の役者がすごく良いと、その役の人間が実在しないことにショックを受けることがある。最近だと『ぼくたちん家』で手越祐也が演じた作田索がそうだった。

 タケルで特に印象に残っているのは、自衛隊員の大人たちと会話するシーンだ。確か、作戦のために自衛隊員を引き止める必要があって、そこでちょっとした冗談や世間話みたいなことを話すくだりがあったと思う(見たのが数ヶ月前なので記憶があいまいになってしまった)。タケルで印象に残るシーンって言ったら、もっと色々あるだろうという感じだが、自分が「剛、すげ〜」と思ったのはここだったのだ。アドリブなのか? と思うぐらい会話が自然だった。アドリブじゃないとしたら、演技なのに素の会話のようにスラスラ話せていてすごいし、アドリブだとしたら役に入り込めていてすごい。どっちに転んでいても天才である。

 光一のヤマトの演技も、等身大の高校生という感じがしてすごく良かったのだけれど、自分にとっては剛がMVPだった。だから剛演じるタケルが特に好きだったし、劇中ではヤマトと比べると、タケルがあまり評価されていない感じがするのがちょっとさみしかったりもした。割となんでも「ヤマトすげえよ!」的な空気になりがちだったが(実際、ヤマトはヤマトで超がんばっていたが)、そういう展開になるたびに私は「じゃあタケルのことももっと褒めてくれよ……!」という気持ちになっていた。

ミニ嵐が出ている

 KinKi Kidsの2人が主演なことは知っていたが、デビュー前の松潤と相葉くんが出ていたことは全く知らなかった。松潤に関しては声変わり前で、すごく小さくて、「こんなにかわいい少年が、将来大人になってスターになるのか……」という気持ちで見ていた。

 そして、松潤も相葉くんも今のパブリックイメージとは真逆といえるような役をやっていたのも面白い。最初は「松潤が? 相葉くんが? こんな役を??」と思ったけれど、当時の2人の雰囲気だとむしろこの配役が合っているように思う。
 特に、相葉くん演じるアキラはかなり良かった。当時の相葉くんの顔の雰囲気や年齢、成長途中の声の感じなどすべての要素が奇跡的に噛み合って、「こういう子ども、いるよね!」という説得力を与えていた。最初はシンプルに嫌なガキという感じだったけど、話が進むにつれ、なんだかんだで主人公陣営とつるむようになって、最終的には未満都市の名付け親にまで昇格したのにも驚いた。というか、みまんとしじゃなくて、みまんシティだったんだ。最終回直前までずっとみまんとしだと思っていた。

ストーリーの設定

 第一話の中盤で真相が明かされるまで、私は純粋に「幕原地区で大地震が起きた」という話を信じていたので、実は地震ではなく……という設定に純粋に驚かされた。30年近くも前の作品なのに、ここまでネタバレを踏まずに初見で驚けたのは今振り返るとかなり嬉しい。
 ただ、「ある理由によって大人たちに頼れなくなった状態で、十分な環境が整っていないなか、子どもだけで生きていかなければならない」という設定自体は『チャイルド★プラネット』という漫画からの盗作が問題になっていたということも知ったので、それだけは本当にもったいないよな……とどうしても思ってしまう。

全体的な所感

 およそ30年前と、古いドラマではあるけれど、今見てもめちゃくちゃ面白かった! 1エピソードの中にイベントが詰め込まれていてハラハラする展開が続くので、むしろ現代に向いているかもしれない。
 一話一話濃い話を作ることができた理由の一つに、「予算がかなりあった」というのはおそらくあると思う。同じような話を作るのは、今ならもう難しいかもしれない……。最終回での、校舎での自衛隊との攻防戦のシーンなんかは、Netflixオリジナルとかじゃないと厳しいような気がする。

 そしてこの作品は、キャストがとても良い。KinKi Kidsの2人はもちろん、ヒロインのユーリを演じた宝生舞、当時ジュニアだった小原裕貴と松潤、相葉くんをはじめ、出演者の大半が未成年とは思えないほど作品の質が高い。
 さらに驚いたのは、『仮面ライダーカブト』で矢車想を演じた徳山秀典が準レギュラーぐらいの立ち位置で出ていたことだ。顔立ちも声もカブト出演時とは結構違ったので最初は気づかなかったけど、カブトの9年も前なら子供だから、そりゃそうか……。

 ヤマトの旧友であるキイチを演じた小原裕貴のことは、本作を見るまで知らなかったけれど、この作品をおすすめしてくれた友人から「当時ジュニアで一番人気だった」と教えてもらった。確かに、当時すでにデビュー済のKinKi Kidsと並んでも負けないぐらい華があった。
 ちなみに、未満都市を完走したあと、嵐のラストライブの配信を見ていたらMCで小原裕貴の名前が出てきて、完全に「この問題、進研ゼミでやったやつだ!!」状態になった。同事務所は縦横のつながりが強いので、一つコンテンツに触れるとどこかでこうやってつながりが見えてくるのが面白かったりもする。

 シナリオ面では、性善説と性悪説のバランスが割と良いように感じたのが印象に残っている。極限状態に置かれた子どもたちの話なので、嫌なことを言ってくる奴や悪いことをする奴も当然いるけど、一方でそんな中でも優しさを忘れない人、希望を捨てない人も描かれる。ショックな展開もあるけれど露悪すぎないし、かといってご都合主義が鼻につくようなこともなかった。

 というか、子どもたちが一生懸命生きていこうとする様子を見るだけでもうグッとくる。現実でもし同じような状況になったら、子どもだろうが大人だろうが、あそこまで(なんだかんだありつつも)団結することは難しいかもしれないし、ヤマトやタケルのように人のために一生懸命になれる人もいないかもしれない。でも、「こんなふうに美しい人間でありたい」という気持ちは忘れたくない。そんな気持ちにさせてくれる作品がゴールデン帯で放送されていて、子どものあいだで流行っていたこと自体が素敵だったんじゃないかな、と思う。


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