「まさか」は、いつか起きる。テールリスクとブラックスワンから考える「万が一への備え」
こんにちは。
株式会社myコンサルティング代表の坂元康宏です。
「そんなことが起きるとは思わなかった」
大きな災害や金融危機、会社の倒産などが起きたとき、私たちはよくこんな言葉を口にします。
私は長く投資の世界に関わってきましたが、この「まさか」という言葉を、とても怖い言葉だと思っています。
なぜなら、本当に大きなダメージは、普段から心配していることよりも、
「まさか、そんなことが起きるとは」
というところからやってくることがあるからです。
だから最近、改めて思います。
未来を正確に予測することより、予測が外れたときにどう生き残るかの方が大切なのではないか。
今回は「テールリスク」と「ブラックスワン」という二つの言葉から、
「万が一への備え」について考えてみます。
「ほとんど起きない」は「起きない」ではない
「テールリスク」という言葉があります。
簡単に言えば、
発生する確率は低いけれど、実際に起きたら非常に大きな影響をもたらす出来事です。

たとえば、家が火事になる確率は高くありません。
それでも火災保険に入る人は多い。
なぜなら、
「起きる可能性が低い」ことと、「起きたときのダメージが小さい」ことは別だからです。
投資でも同じです。
普段は小さな値動きを繰り返している。
それが何年も続くと、「だいたいこんなものだろう」と思ってしまう。
でも、100回の小さな利益を、たった1回の巨大な損失が吹き飛ばしてしまうことがあります。
これがテールリスクの怖さです。
ブラックスワンとは何か
もう一つが「ブラックスワン」です。
この言葉を世界的に広めたのが、ナシーム・ニコラス・タレブです。
昔のヨーロッパでは「白鳥は白いもの」と考えられていました。
ところが、オーストラリアで黒い白鳥が発見された。
たった一羽の存在によって、
「白鳥はすべて白い」という、それまでの常識が崩れたわけです。
ブラックスワンとは、簡単に言えば、
それまでの経験や常識では予測することが非常に難しく、起きれば大きな影響を与える出来事です。
私はテールリスクとの違いを、こう考えています。
テールリスクは「想定している世界の端」
ブラックスワンは「想定していた世界の外側」
テールリスクなら、ある程度は計算して備えることができます。
しかしブラックスワンは、そもそも自分の想定に入っていない。
だから怖いのです。

8月の豪雨で起きた「想定を超える雨」
つい先日の2026年8月13日、千葉県では記録的な大雨となりました。
千葉市では1日に351mmの雨が降り、1時間では115mmを観測しました。これは同地点の観測史上1位です。
13日から15日までの降水量は387mm。8月の平年降水量の3倍を超える雨が、わずかな期間に降りました。佐倉市や館山市などでも1時間降水量が観測史上1位を更新しています。
そして8月30日には、福井県でも記録的な大雨となりました。
福井市美山では、1時間61.5mm、3時間148.5mm、6時間191.5mmを記録し、いずれも8月として観測史上1位となりました。勝山市や大野市でも、短期間に300mmを超える雨が観測されています。
豪雨そのものは、もちろん予測不能な現象ではありません。
だから、こうした豪雨をそのまま「ブラックスワン」と呼ぶのは正確ではないでしょう。
ただ、僕が考えさせられたのは別のところです。
「自分が想定していた範囲を、現実が突然大きく超えてくる」
ということです。
「これまで大丈夫だったから、今回も大丈夫だろう」
この考え方が通用しない瞬間は、自然災害にも、投資にも、経営にもあります。
大切なのは、「そんなことは滅多に起きない」と考えることではありません。
起きる確率が低くても、起きたときに致命傷になるものは何か。
そこまで考えて備えておくことだと思うのです。
1000日間の成功は、1001日目を保証しない
タレブの有名な話に「七面鳥」の例があります。
七面鳥が毎日、飼い主から餌をもらっている。
1日目も、100日目も、500日目も、1000日目も餌をもらえた。
過去のデータだけを見れば、「明日も餌をもらえる」と考えるのが合理的です。
ところが1001日目。
突然、それまでの前提が崩れる。
この話が教えてくれるのは、
過去が未来を保証するわけではない
ということです。

長くうまくいっているほど、人間は「これからも大丈夫」と思いやすい。
私はむしろ、そのときこそ注意が必要だと思っています。
なぜ「致命傷を避ける」ことが重要なのか
投資では、損失と回復は対称ではありません。
100あった資産が30%下落すると70になります。
70から100へ戻すには、30%ではなく約43%の上昇が必要です。
50%下落して100が50になれば、元に戻すには100%の上昇が必要になります。
つまり、
損失が大きくなるほど、取り戻すことは急激に難しくなる。
だから私は、大きく勝つこと以上に、
「致命傷を負わないこと」
が重要だと考えています。

これは投資だけの話ではありません。
経営でも、一つの取引先に依存しすぎない。
借入を増やしすぎない。
一人の人間を信用しすぎない。
災害なら、「これまで被害がなかったから大丈夫」と考えない。
大切なのは、
「もし、自分の前提が突然崩れたらどうなるか」
を一度考えておくことです。
万が一への備えは、悲観ではない
最悪のケースを考えるというと、悲観的に聞こえるかもしれません。
私は逆だと思っています。
最悪を考えるから、挑戦できる。
致命傷になるラインを知り、その手前で守れる準備をしておけば、むしろ思い切って挑戦できます。
ブラックスワンを予測することはできません。
予測できたら、それはもうブラックスワンではありません。
でも、
「自分の想定を超えることは起きる」
と考えて生きることはできます。
未来を完璧に当てる必要はありません。
大切なのは、
外れたときにも、立っていられること。
「万が一」は、起きないことを願うだけのものではない。
起きても致命傷にならないように、何も起きていない今のうちに備えるもの。
私は、そう考えています。
皆さんにも一つだけ、考えてみてほしいと思います。
もし明日、「これまで大丈夫だった」という前提が突然崩れたら、一番困るものは何でしょうか。
そこに、自分が今から備えるべき「テールリスク」が隠れているのかもしれません。
株式会社myコンサルティング
代表取締役 坂元 康宏
いいなと思ったら応援しよう!
この記事は noteマネー にピックアップされました

