『窓のない家で、彼女は外を見ていた』最終話 窓のない家で、彼女は外を見ていた
モニターが消えたあと。
誰も。
すぐには喋らなかった。
最後に映った言葉。
「この家に御影宗一郎は住んでいない」
私は。
その文章を。
頭の中で。
何度も読み返していた。
二十年間。
御影宗一郎として。
家族と暮らしてきた男。
十一月七日。
午後八時三分。
死亡。
しかし。
死んだ男は。
宗一郎ではない。
なら。
あの遺体は。
誰なのか。
答えは。
もう。
一つしかなかった。
御影宗介。
1
「整理しましょう」
榎本刑事が言った。
監視室。
机。
図面。
写真。
宗介のノート。
私たちは。
事件の最初から。
もう一度。
並べ直した。
二十年前。
双子の建築家。
兄。
御影宗一郎。
弟。
御影宗介。
二人は。
隣り合う二軒の家を設計した。
一軒は。
現在。
御影家と呼ばれている住宅。
もう一軒は。
長年。
空き家だと思われていた隣家。
しかし。
二軒は。
完全に別々の建物ではなかった。
壁の内部。
87センチの通路。
隠し扉。
反射板。
監視室。
そして。
いくつもの小さな接続。
二軒で。
一つの仕掛けだった。
外から見ると。
一軒に見える。
中に入ると。
二軒。
それが。
この事件すべての基本だった。
2
「家だけじゃない」
私は言った。
榎本が見る。
「人間もです」
宗一郎。
宗介。
双子。
外から見れば。
一人に見える。
だが。
実際は。
二人いる。
そして。
二十年前。
どちらかが。
死んだ。
残った一人が。
死んだ方の名前を使った。
榎本。
「なぜ?」
「そこが」
「最初の事件です」
3
警察が。
二十年前の資料を掘り起こした。
御影設計事務所。
土地登記。
医療記録。
銀行口座。
契約書。
その中に。
重要な違いがあった。
御影宗一郎。
右利き。
御影宗介。
左利き。
現在まで。
御影宗一郎名義で残された。
大量の設計図。
二十年前より前。
署名は。
右上がり。
二十年前より後。
微妙に左へ流れる。
さらに。
古い映像。
設計事務所で。
鉛筆を持つ宗一郎。
右手。
だが。
御影家で。
私が取材した男。
コーヒーカップ。
スプーン。
ペン。
すべて。
左手。
私は。
それを。
見ていた。
ただ。
何も。
疑わなかった。
4
「つまり」
榎本が言った。
「二十年前から」
「御影宗一郎を名乗っていた人物は」
私は答えた。
「宗介です」
宗一郎は。
二十年前に。
死んでいる。
宗介が。
兄の名前を使い。
妻。
佳代。
そして。
子どもたちと。
暮らしてきた。
ただ。
そこで。
もう一つ問題が出る。
「佳代さんは」
榎本が言った。
「知らなかったのか?」
私は。
佳代の顔を思い出す。
二十年前。
夫が。
双子の弟に。
入れ替わる。
本当に。
気づかないだろうか。
答えは。
すぐに出た。
気づいていた。
5
佳代は。
再び。
事情聴取を受けた。
最初。
何も言わなかった。
しかし。
宗介のノート。
二軒の家。
そして。
二十年前の資料。
すべてを。
見せられると。
ようやく。
口を開いた。
「最初から」
「知っていました」
修司が。
声を上げる。
「何を?」
佳代は。
息子を見られなかった。
「あなたたちが」
「お父さんだと思っていた人は」
「宗介さんです」
美月。
「じゃあ」
「本当のお父さんは?」
佳代は。
小さく答えた。
「二十年前に」
「死にました」
6
二十年前。
御影家が完成する直前。
宗一郎と宗介は。
激しく対立していた。
設計思想。
事務所。
金。
そして。
佳代。
宗介も。
佳代を愛していた。
しかし。
佳代が選んだのは。
宗一郎。
その後。
宗介は。
隣家を設計した。
表向きは。
実験住宅。
本当の目的。
兄の家と。
鏡のように。
つながる建物。
「異常だったんです」
佳代は言った。
「二人とも」
「家を使って」
「競争していました」
どちらが。
より優れた空間を作れるか。
どちらが。
人の認識を。
建築で操作できるか。
そして。
最後に。
宗一郎が。
一つの仕掛けを提案した。
道路の特定地点から。
二軒を。
一軒に見せる。
17枚目の窓。
その原型。
7
完成前夜。
兄弟は。
隣家で。
口論になった。
原因。
宗介が。
兄の設計を。
自分の名義で発表しようとしていたこと。
そして。
宗一郎も。
弟の仕掛けを。
自分の作品として。
発表しようとしていた。
取っ組み合い。
階段。
転落。
死亡。
死んだのは。
宗一郎。
事故だった。
少なくとも。
佳代は。
そう証言した。
宗介は。
混乱した。
そして。
二人は。
ある決断をする。
死を。
公表しない。
8
理由は。
一つではない。
完成直前の大型プロジェクト。
設計事務所。
融資。
契約。
宗一郎が死ねば。
すべてが止まる。
佳代。
妊娠。
幼い修司。
生活。
宗介は。
兄と。
ほとんど同じ顔。
さらに。
建築家としての能力も。
近かった。
なら。
宗一郎として。
生きればいい。
最初は。
数週間だけ。
そう考えた。
しかし。
一度ついた嘘は。
終わらなかった。
数週間。
数ヶ月。
一年。
そして。
二十年。
御影宗介は。
御影宗一郎として。
生き続けた。
9
本物の宗一郎の遺体は。
どうしたのか。
警察は。
その答えを。
隣家の地下から見つけた。
コンクリート。
一部だけ。
施工時期が違う。
掘削。
人骨。
二十年前。
DNA。
現在解析中。
だが。
ほぼ間違いない。
御影宗一郎。
本当の意味で。
この事件には。
二つの死体があった。
二十年前。
宗一郎。
現在。
宗介。
一つに見えていた。
二つの家と。
同じように。
10
では。
現在。
宗介を殺したのは誰か。
私は。
宗介のノートを開いた。
十一月七日。
19:38
宗一郎、こちらへ来る。
宗介は。
自分自身を。
宗一郎と書いている。
いや。
違う。
二十年間。
宗一郎として生きた。
だから。
ノートの中でも。
自分を。
宗一郎と呼んでいた。
そして。
もう一人。
画面に映っていた男。
私たちは。
あれを。
宗介だと思っていた。
しかし。
もし。
逆なら。
11
榎本も。
同じことに気づいた。
「動画に映っていた」
「もう一人の男」
「誰なんです?」
私は。
家族写真を見る。
二十年前。
宗一郎。
宗介。
ほとんど。
同じ顔。
さらに。
現在の。
宗介。
二十年分。
年齢を重ねている。
では。
もう一人の。
現在の双子は。
存在しない。
宗一郎は。
二十年前に死んでいる。
なら。
十一月七日の動画。
宗介と向かい合っていた男。
あれは。
双子ではない。
双子に見せた別人。
12
私は。
最初の日。
ある人物を思い出した。
修司。
宗介の息子。
三十歳。
父親より。
約三十歳若い。
当然。
そのままでは。
似ていない。
だが。
暗い部屋。
特殊メイク。
髪。
照明。
そして。
カメラの角度。
さらに。
御影家そのものが。
「見えるものを信用させる」ために。
作られている。
動画。
映像。
窓。
すべて。
同じ。
つまり。
監視室の映像そのものも。
証拠ではない。
演出だった。
13
「修司さん」
榎本が呼んだ。
修司は。
リビングへ。
顔。
疲れている。
「十一月七日」
「午後七時三十八分から八時十分」
「どこにいました?」
修司。
「夕食です」
佳代。
美月。
同じ。
しかし。
問題。
午後七時四十分頃。
宗介が。
席を外した。
そして。
十数分後。
戻った。
家族は。
そう証言した。
では。
その間。
修司は?
「席にいた」
修司は言う。
だが。
佳代が。
突然。
首を横に振った。
「違う」
修司が。
母を見る。
佳代。
「あなたも」
「一度席を外した」
沈黙。
「ほんの数分」
「電話だって」
修司。
「覚えてない」
佳代。
「私は覚えてる」
14
午後七時三十八分。
宗介。
隣家へ。
午後七時四十分頃。
修司も。
席を外す。
隠し通路。
隣家。
そして。
二人。
何が起きた?
司法解剖。
宗介の死因。
頭部への強打。
しかし。
致命傷は。
それではなかった。
新しい鑑定結果。
宗介には。
重度の。
心臓疾患があった。
さらに。
血中から。
薬物。
強心薬。
ではない。
逆。
心拍数を。
急激に低下させる薬。
通常量を。
大幅に超えていた。
15
「毒殺?」
私は聞いた。
榎本。
「正確には」
「薬物による致死性不整脈の可能性が高い」
頭部の傷。
金属製の馬。
それは。
死後。
あるいは。
死亡直前。
倒れたときにできたもの。
つまり。
私たちは。
最初から。
凶器だと思っていた。
金属製の置物。
しかし。
凶器ではない。
殺人方法は。
薬。
問題は。
誰が飲ませた?
16
夕食。
ワイン。
宗介だけ。
毎晩。
食後に。
心臓の薬を飲む。
家族は知っていた。
薬を準備していたのは。
妻。
佳代。
私は。
佳代を見る。
だが。
宗介の映像。
あの言葉。
「犯人は、自分が殺したことに気づいていない」
もし。
佳代が。
故意に薬を入れたなら。
成立しない。
では。
なぜ。
本人も知らずに。
致死量を飲ませる?
17
答えは。
薬箱だった。
宗介の書斎。
毎日。
一週間分。
曜日別ケース。
朝。
昼。
夜。
事前に。
薬を分ける。
用意していたのは。
家政婦。
藤崎澄江。
ただし。
医師から。
最近。
処方量が変更されていた。
古い薬。
新しい薬。
見た目。
ほぼ同じ。
そして。
事件当日。
藤崎は。
薬ケースを。
入れ替えていた。
ただの。
ミス?
それだけでは。
致死量にはならない。
調べると。
さらに。
一つ。
宗介は。
同じ薬を。
隣家にも。
置いていた。
二重生活。
二つの家。
二つの薬箱。
同じ人間なのに。
別々に。
服薬管理。
その結果。
事件当日。
宗介は。
御影家で一回。
隣家で一回。
同じ薬を飲んだ。
二重投与。
18
誰も。
宗介を。
直接。
殺していない。
佳代。
御影家で。
いつもの薬を渡す。
宗介。
服用。
その後。
隣家へ。
そこでは。
宗介自身が。
もう一つの薬を飲む。
なぜ?
二十年間。
二つの家で。
二つの生活。
二つの名前。
その管理。
宗介自身が。
間違えた。
なら。
事故死?
違う。
榎本が。
処方記録を見る。
「量がおかしい」
隣家にあった薬。
通常量の。
三倍。
誰かが。
入れ替えている。
19
その人物。
修司。
彼は。
数日前。
宗介の薬を。
隣家側で。
差し替えていた。
理由。
父親を殺すため。
ではない。
修司は。
隣家を。
父の秘密の作業場だと思っていた。
そして。
そこで。
宗介が。
大量の睡眠薬を飲んでいると。
勘違いした。
父親が。
精神的に。
不安定。
自殺するのではないか。
そう考え。
薬を。
別のものへ交換した。
だが。
交換した薬。
修司は。
種類を。
取り違えた。
結果。
宗介は。
自分の通常薬。
さらに。
修司が入れ替えた。
高用量の薬。
両方を飲んだ。
致死性不整脈。
午後八時三分。
死亡。
修司は。
知らない。
自分が。
薬を替えたことが。
死因になったと。
20
「じゃあ」
修司が。
顔を失う。
「俺が」
榎本。
「殺意があったとは」
「現時点では考えていません」
「でも」
「俺が薬を」
「結果として」
「死につながった可能性はあります」
修司は。
崩れるように。
椅子へ座った。
私は。
宗介の言葉を思い出す。
犯人は、自分が殺したことに気づいていない。
宗介は。
自分の体調。
飲んだ薬。
修司の行動。
すべてから。
死を。
予測していた。
21
では。
なぜ。
死ぬ前に。
宗一郎として。
私へ。
すべてを見せようとした?
二十年間。
隠してきた真実。
宗一郎の死。
入れ替わり。
隣家。
家族。
宗介は。
もう。
終わらせたかった。
おそらく。
薬の異常に。
気づいた時点で。
自分の命が。
長くないことも。
分かっていた。
だから。
取材。
外部の人間。
私。
建築雑誌。
すべて。
利用した。
自分が死んだ後も。
仕掛けが。
順番に。
真実へ導くように。
22
白い服の美月。
17枚目の窓。
87センチ。
隠し通路。
録音音声。
監視室。
宗介は。
すべて。
手掛かりとして。
用意した。
ただし。
一度に。
真実を見せない。
自分の人生そのものと同じ。
外から見えるもの。
中にあるもの。
その差。
それを。
私に。
体験させた。
23
そして。
最後に。
私は。
タイトルの意味に。
たどり着いた。
窓のない家。
御影家には。
窓がある。
十六枚。
隣家にも。
窓がある。
なら。
なぜ。
窓のない家?
私は。
二軒の図面を。
重ねた。
そのとき。
分かった。
87センチの通路。
壁内部。
監視室。
隠し空間。
それらを。
すべてつなぐと。
二軒の間。
ちょうど。
中央。
もう一つの空間が。
浮かび上がる。
細い。
長い。
人が。
一人。
生活できる程度。
ただし。
外壁に。
接していない。
つまり。
窓が一枚もない。
24
そこ。
宗介の。
本当の部屋。
御影家でもない。
隣家でもない。
二軒の間。
誰の家でもない。
87センチ。
一部では。
広がっている。
寝台。
机。
棚。
換気設備。
そこに。
二十年分。
宗介の。
本当の私物。
宗一郎として。
家族と暮らす。
御影家。
宗介として。
一人で過ごす。
隣家。
そして。
どちらの名前も使わない。
中央の部屋。
ここだけは。
宗一郎でも。
宗介でもない。
誰にも。
見られない。
場所。
窓のない家。
25
私は。
その部屋へ入った。
机。
一冊のノート。
表紙。
名前なし。
最後のページ。
文章。
私は二十年間、
二つの家に住んだ。
一つでは兄になり、
一つでは弟になった。
しかし。
どちらも私ではなかった。
だから。
家と家の間に、
名前のない場所を作った。
窓はつけなかった。
外を見る必要がなかったからだ。
その下。
さらに。
一文。
ただ一人だけ、
この部屋から外を見ようとした人間がいる。
26
私は。
美月を見る。
「あなたですね」
美月は。
黙った。
幼い頃。
偶然。
納戸の隠し扉を見つけた。
通路。
そして。
窓のない部屋。
父親。
いや。
宗介に。
見つかった。
怒られると思った。
しかし。
宗介は。
何も言わなかった。
美月は。
聞いた。
「ここは何の部屋?」
宗介。
答えた。
「誰にも見られない人間の部屋だ」
27
美月は。
その部屋が。
好きだった。
窓がない。
外から。
誰も見られない。
家族にも。
知られていない。
時々。
一人で入った。
ただ。
成長するにつれて。
怖くなった。
窓がない。
外が見えない。
そこで。
美月は。
勝手に。
小さな穴を。
壁に開けた。
光。
ほんの少し。
そこから。
隣家の窓へ。
反射する。
さらに。
御影家の反射板。
道路側。
つまり。
白い女。
17枚目の窓。
あの現象。
最初のきっかけ。
一部は。
宗介の設計。
しかし。
完成させたのは。
幼い美月だった。
28
「だから」
私は言った。
「あなたは」
「外を見ていた」
美月。
窓のない部屋から。
直接ではない。
光。
鏡。
窓。
二軒の家。
複数の反射を通して。
外を見る。
そして。
外側の人間からは。
美月が。
17枚目の窓に。
立っているように見える。
タイトルの意味。
窓のない家で、彼女は外を見ていた。
彼女。
美月。
幽霊でも。
謎の女でもない。
子どもの頃から。
窓のない場所で。
外を見ようとしていた。
29
そして。
最も皮肉なのは。
宗介だった。
彼は。
建築で。
人の視線を。
騙した。
二軒を。
一軒に見せた。
隣家の窓を。
自宅の窓に見せた。
弟を。
兄に見せた。
事故を。
失踪に見せた。
二十年間。
すべてを。
別のものに見せ続けた。
だが。
最後。
宗介が。
本当に望んだことは。
逆だった。
正しく見てほしい。
30
数週間後。
御影家。
隣家。
そして。
二軒の間にある。
窓のない空間は。
警察によって。
すべて調査された。
地下の遺骨。
DNA。
結果。
御影宗一郎。
死亡。
約二十年前。
そして。
十一月七日に死亡した男。
戸籍上。
御影宗一郎。
実際。
御影宗介。
二十年間続いた。
一つの名前。
二人の人生。
ようやく。
分かれた。
31
修司については。
薬の入れ替え。
故意の殺害ではない。
それでも。
捜査は続いた。
佳代も。
二十年前の遺体隠匿について。
事情を聞かれた。
美月は。
家を出た。
私は。
記事を書かなかった。
少なくとも。
すぐには。
書けなかった。
あの家を。
単なる。
建築ミステリーとして。
扱う気になれなかったからだ。
32
最後に。
私は。
もう一度。
道路の向こうへ立った。
最初の日。
宗介が。
私を見つけた場所。
「一番、勘違いしやすい位置です」
あの言葉。
今なら。
よく分かる。
家を見る。
一階。
二階。
窓。
十六。
少し位置を変える。
十七枚目。
現れる。
ただ。
今度は。
そこに。
誰も立っていない。
私は。
さらに。
一歩。
右へ動く。
窓。
消える。
一歩。
左。
現れる。
同じ家。
同じ時間。
同じ窓。
なのに。
見る場所だけで。
存在したり。
消えたりする。
33
私は。
最後に。
窓を数えるのをやめた。
この事件で。
間違えていたのは。
数字ではない。
私だった。
十七枚ある。
十六枚しかない。
どちらも。
ある意味では。
正しかった。
ただ。
私たちは。
一つ。
重大なことを。
勝手に決めていた。
見えている窓は、すべて同じ家のものだ。
誰も。
そんなこと。
証明していなかった。
宗介も。
同じだった。
家族は。
目の前にいる男を。
御影宗一郎だと思った。
私も。
思った。
でも。
誰も。
証明していなかった。
人は。
見えているものに。
名前をつける。
家。
父親。
窓。
犯人。
そして。
一度つけた名前を。
なかなか。
疑わない。
だから。
この事件を。
最後まで。
解けなくしていたもの。
それは。
隠し通路でも。
双子でも。
薬でもなかった。
「見えているものは、そこにある」
という。
あまりにも。
当たり前の。
思い込みだった。
私は。
もう一度。
二階を見る。
十七枚目の窓。
そこに。
一瞬だけ。
白い服が。
見えた気がした。
だが。
今度は。
追いかけなかった。
一歩。
横へ動けば。
きっと。
消える。
それを。
もう。
知っていたからだ。
『窓のない家で、彼女は外を見ていた』
完
最後までお読みいただきありがとうございます。
スキ・コメントお待ちしております。
