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【不動産証券化マスター】科目103 NOI・NCFから価格を自分で出す|2026年度

不動産証券化マスターの一次試験(修了試験)で、最も配点が厚く、最も差がつくのがこの103科目です。理由は単純で、計算問題が出る からです。用語だけを眺めて分かった気になっていると、本番で電卓が止まります。

逆に言えば、この章は 手を動かした人が確実に取り切れる科目 でもあります。中核はたった2本、「GPI → EGI → NOI → NCF の段階計算」と「NCFを価格に変える2つの手法(直接還元法・DCF法)」。ここさえ手が止まらずに書ければ、計算問題は得点源になります。

この記事は 前半を無料 で公開します。まず「リターンの2つの源泉」と「収益の段階計算(この章の心臓部)」までを無料で読み、価値を感じていただけたら、後半(有料)で 3つの利回り・キャップレートと割引率・直接還元法・DCF法・NPV/IRR/エクイティIRR・鑑定評価3手法・デューデリジェンス・AM/PM/BM・ひっかけポイント総ざらい・問題33問+全解答(計算問題は途中式つき) まで一気に仕上げてください。章末には、この章の問題を50問収録した、スマホで解ける自動採点の問題集アプリ(全問解説つき)のリンクも用意しています。


この章のゴール

学習目標:NOI・NCFを求め、直接還元法とDCF法で不動産価格を試算できる。デューデリジェンス(物理・法務・経済・環境)とAM/PMの運用実務も説明できる。

出題範囲・比重:コース1・103科目(不動産投資の基礎)。修了試験の主力科目(午前・約24問)。頻出度:最高(計算問題あり)。

具体的には、この章を終えたときに次のことができている状態を目指します。

  • 不動産投資のリターンが インカムゲイン(期中の賃料収益)キャピタルゲイン/ロス(売却損益) の2つで構成されることを理解し、総収益率を分解して説明できる。

  • 収益の段階計算 GPI → EGI → NOI → NCF を、各段階で何を足し何を引くのかまで含めて、数値表で正確に再現できる(この章の最重要・最頻出)。

  • 表面利回り・NOI利回り・NCF利回り の違い、そして 還元利回り(キャップレート)と割引率 の違いを、式で言い分けられる。

  • 直接還元法(価格=NCF÷キャップレート)で価格を試算できる。

  • DCF法 で、期中キャッシュフローの現在価値と復帰価格(ターミナルバリュー)の現在価値を足して価格を求められる。5年間の表を自力で書ける。

  • NPV・IRR・エクイティIRR を計算・判定でき、正のレバレッジ/負のレバレッジ がどんな条件で起きるかを説明できる。

  • 不動産鑑定評価の 3手法(原価法・取引事例比較法・収益還元法) の中身と適用場面を区別できる。

  • デューデリジェンス(物理・法務・経済・環境) の4区分と、ER・PML・レントロールといった実務用語を説明できる。

  • AM・PM・BM の役割分担、リーシング戦略、普通借家と定期借家の違いを押さえる。


1. 不動産投資のリターン構造 — 2つの源泉

不動産投資のリターンは、大きく2つの源泉に分かれます。

インカムゲイン
・別名:運用収益・期中収益
・中身:テナントから受け取る賃料・共益費などから費用を引いた純収益
・発生タイミング:保有期間中に毎期

キャピタルゲイン(ロス)
・別名:売却損益・値上がり益
・中身:売却価格 − 取得価格(− 売買コスト)
・発生タイミング:出口(売却時)に一度だけ

総収益率(トータルリターン) は、この2つを足したものです。ざっくり書けば次のようになります。

総収益率 = インカム収益率(純収益 ÷ 投資額)+ キャピタル収益率(値上がり額 ÷ 投資額)

数値例(例示):40億円で取得した物件が、年間の純収益(NCF)2億円を生み、1年後に40億8,000万円で売れたとします。途中式を分解すると次のとおりです。

【総収益率の分解】

  インカム収益率 = 2.0億円 ÷ 40億円          = 5.0%
  キャピタル収益率 = (40.8億円 − 40億円) ÷ 40億円
                   = 0.8億円 ÷ 40億円        = 2.0%
  ────────────────────────────────
  総収益率        = 5.0% + 2.0%             = 7.0%

不動産は株式と比べて、総収益率に占めるインカムの比率が高い のが特徴です。だからこそ、この章では「毎期いくら手元に残るのか」を精密に測る作法(次節の段階計算)に、これほど紙面を割きます。

ここが狙われる:「不動産投資のリターンはインカムゲインのみである」は誤り。売却損益(キャピタル)を含めた総収益で測る。逆に「キャピタルゲイン狙いが不動産投資の本質」も言い過ぎで、証券化商品では安定インカムが中心。


2. 収益の段階計算 — GPI → EGI → NOI → NCF(この章の心臓部)

この章で最も出題され、そして実務でも毎日使うのが 収益の段階計算 です。「賃料が入ってきて、そこから何を順番に引くと、投資家が実際に手にする純収益になるのか」を4段階で追いかけます。

まず、階段の全体像をアスキー図で頭に入れてください。この図が書ければ、この節の半分は終わりです。

【収益の段階計算 — 4段の階段】

  ① GPI  総潜在収入 ────── 満室・貸倒ゼロを前提とした理想値
     │  − 空室損失
     │  − 貸倒損失        (+ その他収入を加算することもある)
     ▼
  ② EGI  実効総収入 ────── 現実に入ってくる収入
     │  − 運営費用(Opex)
     │      ※ 減価償却費・支払利息・法人税等は「引かない」
     ▼
  ③ NOI  純収益 ────────── 物件そのものの収益力(調達方法に中立)
     │  + 一時金運用益
     │  − 資本的支出(CAPEX)
     │  − テナント誘致費用
     ▼
  ④ NCF  純キャッシュフロー ── 投資家の手元に最も近い数字

4つの段階の定義

① GPI
・正式名:総潜在収入
・英語:Gross Potential Income
・直前段階から何をするか:満室・貸倒ゼロを前提とした、取り得る最大の収入

② EGI
・正式名:実効総収入
・英語:Effective Gross Income
・直前段階から何をするか:GPI から 空室損失・貸倒損失 を控除(+その他収入を加算)

③ NOI
・正式名:純収益
・英語:Net Operating Income
・直前段階から何をするか:EGI から 運営費用(Opex) を控除

④ NCF
・正式名:純キャッシュフロー
・英語:Net Cash Flow
・直前段階から何をするか:NOI に一時金運用益を加算し、資本的支出(CAPEX)・テナント誘致費用 を控除

各段階の中身を分解する

① GPI(総潜在収入) は、「全室が満室で、全テナントが1円も滞納しなかったら、1年でいくら入るか」という理想値です。中身は、基準賃料(月額賃料×12)+共益費(管理費)+駐車場使用料+看板・アンテナ設置料などの附帯収入です。あくまで 潜在(potential) であって、実際に入る額ではありません。

② EGI(実効総収入) は、そこから現実を織り込んだ額です。引くのは2つ。

  • 空室損失:空いている区画から得られなかった賃料。空室率で見積もる。

  • 貸倒損失:テナントの倒産・滞納で回収できなかった賃料。

なお、更新料・礼金・違約金・自動販売機収入などの その他収入 を、この段階で加算することもあります(計上区分は資料により異なるため、受験年度のARES公式テキスト(ARESマスター養成講座テキスト)で要確認)。

③ NOI(純収益) は、EGI から 運営費用(Operating Expenses, Opex) を引いた額です。運営費用には次のようなものが含まれます。

  • 維持管理費(BM費):設備保守、清掃、警備など建物管理の委託費

  • PMフィー:プロパティマネジメント報酬

  • 水道光熱費:共用部の電気・水道・ガス

  • 修繕費:原状回復・小規模な修理など、費用処理される 修繕

  • 公租公課:固定資産税・都市計画税

  • 損害保険料:火災保険・地震保険など

  • その他:テナント募集広告費、雑費など

ここで NOI に含めない(=引かない)もの が試験の急所です。減価償却費・借入金の支払利息・法人税等 は運営費用に含めません。減価償却は現金の出ていかない会計上の費用ですし、支払利息と税金は「どう資金調達したか・誰が持つか」で変わる項目であって、物件そのものの収益力 を測る NOI には混ぜないのです。

ここが狙われる:NOI の計算で 減価償却費を引く/支払利息を引く と書いてある選択肢は誤り。NOI は「資金調達方法から中立な、物件固有の収益力」を表す指標。

④ NCF(純キャッシュフロー) は、NOI からさらに現実のキャッシュアウトを反映させた、投資家にとって最も実態に近い数字です。

  • 加算:敷金・保証金といった 一時金の運用益(預かった一時金を運用して得られる収益)。

  • 控除①資本的支出(CAPEX)。大規模修繕、空調更新、外壁改修など、資産計上される 支出。毎年発生するわけではないため、長期修繕計画から年平均を按分して見込むのが実務。

  • 控除②テナント誘致費用。仲介手数料、フリーレント相当分、内装工事負担金(TI, Tenant Improvement)など。

ここが狙われる:NOI と NCF の差は、一時金運用益(+)・資本的支出(−)・テナント誘致費用(−)。「NOI から支払利息を引いたものが NCF」は誤り。

数値例(例示・Aビル、単位:千円)

架空のオフィスビル「Aビル」で、一気通貫の計算をします。この表は、以降の章末まで通しで使う「基準物件」です。

賃料収入(満室想定)
・金額:240,000
・計算:月額20,000×12

共益費収入
・金額:50,000
・計算:

駐車場・附帯収入
・金額:10,000
・計算:

① GPI(総潜在収入)
・金額:300,000
・計算:240,000+50,000+10,000

空室損失(空室率4%)
・金額:△12,000
・計算:300,000×4%

貸倒損失(1%)
・金額:△3,000
・計算:300,000×1%

② EGI(実効総収入)
・金額:285,000
・計算:300,000−12,000−3,000

維持管理費(BM費)
・金額:△18,000
・計算:

PMフィー
・金額:△8,000
・計算:

水道光熱費
・金額:△14,000
・計算:

修繕費(費用処理分)
・金額:△5,000
・計算:

公租公課
・金額:△22,000
・計算:

損害保険料
・金額:△2,000
・計算:

その他(募集広告費等)
・金額:△1,000
・計算:

運営費用 計
・金額:△70,000
・計算:

③ NOI(純収益)
・金額:215,000
・計算:285,000−70,000

一時金運用益
・金額:+1,000
・計算:

資本的支出(CAPEX)
・金額:△16,000
・計算:長期修繕計画の年平均按分

テナント誘致費用
・金額:△5,000
・計算:仲介手数料・TI等

④ NCF(純キャッシュフロー)
・金額:195,000
・計算:215,000+1,000−16,000−5,000

数字の流れだけを取り出すと、次のようになります。

【Aビルの段階計算(単位:千円)】

  GPI   300,000
        −12,000(空室4%)  −3,000(貸倒1%)
  EGI   285,000
        −70,000(運営費用)
  NOI   215,000
        +1,000(一時金運用益) −16,000(CAPEX) −5,000(誘致費用)
  NCF   195,000

この「300,000 → 285,000 → 215,000 → 195,000」という数字の流れを、暗記ではなく 手を動かして再現できる ようにしてください。修了試験ではこの表の一部を空欄にして問われます。

補助指標:OPEX比率(経費率)とNOIマージン

  • 経費率(OPEX ratio) = 運営費用 ÷ EGI = 70,000 ÷ 285,000 = 約24.6%

  • NOIマージン = NOI ÷ EGI = 215,000 ÷ 285,000 = 約75.4%

同種・同規模の物件と比べて経費率が突出して高ければ、運営に無駄があるか、建物が古く手間がかかっているサインです。デューデリジェンスの経済調査では、この比率をベンチマークと突き合わせます。

実務のひとこと:売主が出してくる収支表は、CAPEX を控えめに、想定賃料を強気に置きがち。買い手は「NOI ではなく NCF で」「売主の想定ではなく自分の想定で」引き直す。この作業を アンダーライティング という。

ここまでで、この章の心臓部である「収益の段階計算」を押さえました。ここから先(有料)では、その NCF を 価格に変換する ところから、投資判断・鑑定評価・デューデリジェンス・運用実務まで、103科目の残り全部を一気に仕上げます。具体的には——

  • 3つの利回り(表面・NOI・NCF)の使い分けと、必ず成り立つ大小関係

  • キャップレートと割引率の違い(最頻出の誤答論点)と、必ず覚える式 R = Y − g

  • 直接還元法 と、キャップレート0.5%の動きで価格が何%動くかの 感応度テーブル

  • DCF法 の5年間フル計算(複利現価率つきの表・復帰価格・現在価値の合計まで途中式で)

  • NPV・IRR・エクイティIRR の計算と判定、正のレバレッジ/負のレバレッジ の分岐条件

  • 期待利回りの分解(リスクフリーレート+リスクプレミアム)とイールドギャップ

  • 不動産鑑定評価の3手法(原価法=積算価格/取引事例比較法=比準価格/収益還元法=収益価格)

  • デューデリジェンス4区分(物理・法務・経済・環境)と ER・PML・レントロール

  • AM・PM・BM の役割分担、リーシング戦略、普通借家と定期借家 の違い

  • マーケット分析指標・用途別の性格・ポートフォリオ分散・J-REITの位置づけ

  • 公式一覧+用語カード(暗記カードとしてそのまま使える)

  • ひっかけポイント総ざらい(試験で勘違いしやすい点を17項目で一気に)

  • 問題33問(○×・4択・計算)+全33問の解答・解説(計算問題は全問途中式つき)

  • スマホで解ける 問題集アプリ(この章50問・全問解説つき) のリンク

「読んで終わり」にせず、最後の33問で必ず電卓を叩いてください。103は、それだけで点が伸びる科目です。


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