【不動産証券化マスター】科目101 遊休地を数字で語れるようになる|2026年度
不動産証券化マスター一次試験・コース1の入口が、101科目「企業と不動産」です。ここは修了試験で直接ガリガリ問われる科目ではありません。だからこそ飛ばされがちで、そして飛ばした人ほど102科目以降で苦しみます。「なぜわざわざSPCなんて面倒な器を作るのか」の答えが、丸ごとこの章に置いてあるからです。
この記事では、CRE戦略・企業不動産の分類とライフサイクル・保有か賃借か(オーナーズコスト)・オフバランスとROA/ROE・セール&リースバック・減損会計・賃貸等不動産の時価開示・FM・ESG/ZEB/BCP・そして企業が証券化を選ぶ動機までを、すべて数値例つきで一本の線につなぎます。
前半は無料です。まず「CRE戦略とは何か」「企業不動産の分類とライフサイクル」までを読んでいただき、価値を感じたら後半(有料)で 保有vs賃借の完全比較・オフバランスとROAの落とし穴・S&LB・減損会計・FM/ESG/BCP・証券化への橋渡し・ひっかけ総ざらい・問題32問+全解答解説 まで一気に仕上げてください。章末には、この章の問題を50問収録した、スマホで解ける自動採点の問題集アプリ(全問解説つき)のリンクも用意しています。
この章のゴール
この章を読み終えたとき、次のことが自分の言葉で説明できる状態を目指します。
CRE戦略(Corporate Real Estate=企業不動産戦略)とは何かを一言で言え、なぜ近年重要視されるようになったのかを、資本効率という言葉を使って説明できる。
企業が持つ不動産を 「事業用・投資用・遊休」 に分類し、それぞれのライフサイクル(取得→運用→更新→処分)の中で何を判断すべきかを言える。
保有と賃借のどちらが有利かを、賃料だけでなく 資本コストを含めた「オーナーズコスト」 で比較できる(数値例で追える)。
オフバランス化が総資産・ROA・ROEにどう効くかを簡単な計算で説明でき、とくに「必ず改善するとは限らない」条件を言える。
セール・アンド・リースバックのメリット・デメリット・留意点を3つずつ挙げられる。
減損会計と賃貸等不動産の時価開示が、企業の不動産の持ち方をどう変えたかを説明できる。
FM(ファシリティマネジメント)のPDCAとKPIを挙げ、ESG/ZEB/BCPが不動産の価値に効く理由を言える。
企業が 「証券化」という手段を選ぶ動機を4つ以上挙げ、それが102科目以降のどの論点につながるかを見通せる。
出題比重について — 「直接は出ないが、全部の土台になる」科目
101科目は コース1の導入科目という位置づけです。修了試験では直接出題されないとされる一方、証券化全体の前提となる考え方がここに詰まっています。
つまり、点数配分だけを見れば後回しにしたくなる科目ですが、ここで扱う「企業はなぜ不動産を動かしたいのか」という動機の側を理解しておかないと、102科目以降で学ぶ仕組みの側(SPC、倒産隔離、AM/PM、ウォーターフォール、GK-TK/TMK/J-REIT、導管性…)が、意味のわからない用語の羅列になります。
学習戦略としては、「深追いはしないが、一度きちんと通す」のが正解です。とくに本章の計算論点(オーナーズコスト、ROA、減損)は、ここで手を動かしておくと後の科目でそのまま効いてきます。
※ 出題範囲・配点・科目構成は年度により変更され得ます。必ず受験年度の要綱・公式テキスト(ARESマスター養成講座テキスト)で最新の内容を確認してください。
1. CRE戦略とは何か — 不動産は「持ち物」ではなく「経営資源」
CRE戦略(Corporate Real Estate戦略) とは、ひとことで言えば 「企業が保有・賃借する不動産を、ヒト・モノ・カネ・情報と並ぶ経営資源として捉え、企業価値の最大化という視点から最適に選択・保有・運用・処分していく経営手法」 です。
この定義、丸暗記でも構いませんが、分解して読むと3つの主張が入っています。
不動産は「持ち物(資産)」ではなく 「経営資源」 である。
判断の物差しは 企業価値の最大化 である(売上でも節税でもない)。
対象は 選択・保有・運用・処分のすべて である(売る話だけではない)。
かつての日本企業にとって、不動産は「持っていれば値上がりする、担保にもなる、だから持っておくもの」でした。土地は減価償却もされず、簿価のまま静かにB/Sに眠っていても誰も文句を言いません。ところが地価が右肩上がりでなくなり、株主が資本効率を厳しく問うようになると状況は一変します。「その土地は、いくらの資本を寝かせて、いくら稼いでいるのか」 を説明できない企業は評価されなくなりました。
ここが101科目の出発点です。CRE戦略という言葉の背後にあるのは、「不動産を、稼ぐか稼がないかで評価する」 というドライな視点の導入なのです。
なぜ今、CRE戦略なのか — 4つの圧力
企業がCRE戦略に取り組まざるを得なくなった背景は、次の4つの圧力に整理できます。
資本効率(財務)
・中身:ROA・ROEでの評価、PBR1倍割れ問題
・企業に迫られる対応:低収益資産の圧縮・資産の入れ替え
会計制度
・中身:減損会計、賃貸等不動産の時価開示
・企業に迫られる対応:含み損・低収益の可視化への説明責任
働き方・事業構造
・中身:リモートワーク、EC化、拠点再編
・企業に迫られる対応:面積の最適化、統廃合、本社移転
社会的要請
・中身:ESG/SDGs、脱炭素、BCP
・企業に迫られる対応:省エネ改修、認証取得、耐震・拠点分散
4つとも方向は同じです。「持っているだけ」が許されなくなった、という一点に収束します。財務からは「稼げ」と言われ、会計からは「損得を開示しろ」と言われ、事業構造の変化で「そんなに床は要らない」となり、社会からは「環境と防災に配慮しろ」と言われる。この四方からの圧力に、不動産という重たい資産で応えるための経営手法がCRE戦略です。
数値例(例示):総資産1,000億円・当期純利益50億円ならROAは 50÷1,000=5.0%。この会社がほとんど収益を生まない土地を200億円分抱えているなら、その200億円は「稼がない資本」です。CRE戦略とは、この稼がない資本を見つけ出して働かせる(または手放す)活動だと理解してください(具体的な計算は第4節で扱います)。
ここが狙われる:CRE戦略の目的は「不動産を売ること」でも「不動産を増やすこと」でもなく、企業価値の最大化。売却も、逆に戦略的な取得も、どちらもCRE戦略の手段になり得る。「CRE戦略=不動産の売却」と決めつけた選択肢は誤り。
なお、国土交通省もCRE戦略の実践に関する考え方やガイドラインを公表しており、政策的にも後押しされている分野です。具体的なガイドラインの名称・公表年・内容は受験年度の公式テキスト(ARESマスター養成講座テキスト)で要確認。
2. 企業不動産の分類とライフサイクル
CRE戦略の第一歩は 棚卸し(インベントリー) です。自社がどこに、どんな不動産を、いくらの簿価・時価で、どれだけの収益とともに持っているかを一覧にする。地味な作業ですが、これができていない企業は、そもそも判断のしようがありません。「うちの会社が全国に何棟持っているか、正確に答えられる人がいない」——実務では珍しくない話です。
棚卸しができたら、次は分類です。ここでは分類の軸を2つ押さえます。用途による3分類と、ライフサイクルの4段階です。
(1) 用途による3分類
事業用不動産
・具体例:本社、工場、店舗、物流センター、研究所
・判断の物差し:事業に貢献しているか(生産性・売上・コスト)
・典型的な打ち手:統廃合、集約、建替え、S&LB
投資用不動産
・具体例:賃貸オフィス、賃貸マンション、駐車場
・判断の物差し:投資利回り(NOI利回り)が資本コストを上回るか
・典型的な打ち手:保有継続、売却、証券化
遊休不動産
・具体例:使っていない土地、旧工場跡地、空きビル
・判断の物差し:保有コストに見合うか
・典型的な打ち手:売却、定期借地、暫定利用、開発
ここで大事なのは、物差しが分類ごとに違うという点です。事業用不動産を「投資利回り」で切ると、本社ビルは何も生んでいないので即売却という乱暴な結論になります。事業用は事業への貢献で、投資用は利回りが資本コストを上回るかで、遊休は保有コストに見合うかで見る。この使い分けが第一の要点です。
そして第二の要点は、この3分類は固定的ではないということ。工場を閉鎖すれば「事業用」は「遊休」に変わります。遊休地に賃貸ビルを建てれば「投資用」になります。分類を動かすこと自体がCRE戦略の実行なのです。試験でも「一度分類が決まればその後変更されることはない」といった選択肢が誤りとして登場します。
(2) ライフサイクルの4段階
同じ不動産でも、いま人生のどの段階にいるかで、考えるべきことが変わります。
① 取得・調達
・主な意思決定:買うか借りるか、どこに、どれだけ
・見るべき指標:オーナーズコスト、立地、拡張余地
② 運用・維持
・主な意思決定:誰が運営するか、いくらかけるか
・見るべき指標:運営コスト、稼働率、㎡/人、エネルギー原単位
③ 更新・転用
・主な意思決定:建替えか大規模改修か、用途変更か
・見るべき指標:LCC(ライフサイクルコスト)、残存耐用年数
④ 処分・出口
・主な意思決定:売るか、貸すか、証券化するか
・見るべき指標:時価と簿価の差、売却益、代替の確保
①の「買うか借りるか」は第3節で、④の「証券化するか」は第9節で扱います。この章の骨格は、実はこのライフサイクル表に沿って組まれています。
LCC(ライフサイクルコスト)という発想
③の段階で出てくる LCC(ライフサイクルコスト) は、101科目の頻出概念です。
数値例(例示):建物のコストは、建設時の初期投資(イニシャルコスト)だけでは測れません。仮に建設費30億円の建物を50年使うとして、年間の運営・維持管理費が1.2億円かかるなら、50年間のランニングコストは60億円になり、初期投資の2倍です。建物のコストは「建てるとき」より「使っているとき」に多く発生する — これがLCCの発想です。※比率は建物用途により大きく異なるため、あくまで考え方の例示です。
LCCの定義は、初期投資+運用・維持管理+修繕・更新+解体処分までの生涯コストです。「建てる」だけでなく「壊す」まで含む、という点も落とさないでください。
ここが狙われる:LCCは「初期投資+運用・維持管理+修繕・更新+解体処分」までの生涯コスト。建設費だけを比べて「安い建物」と判断するのは誤り。初期投資を削った結果ランニングが膨らみ、LCCでは高くつく、というのが典型パターン。
ここまでが、CRE戦略の「地図」と「物差し」です。ここから先は、実際に企業が迫られる具体的な意思決定——保有か賃借か、オフバランスするか、S&LBを使うか、そして証券化するか——に、ひとつずつ数字で切り込んでいきます。
ここまでで「CRE戦略とは何か」「企業不動産の分類とライフサイクル」という土台を押さえました。ここから先(有料)では、101科目の得点源であり、かつ102科目以降の理解を決定づける中身を一気に仕上げます。具体的には——
保有か賃借かを「オーナーズコスト」で完全比較(減価償却 vs 賃料で比べてはいけない理由を数値表で)
リース会計の潮流——「借りればオフバランス」が崩れつつある話
オフバランスとROA/ROE——本章最大のひっかけ。改善するケースと悪化するケースを両方計算して、分かれ目を言えるようにする
セール・アンド・リースバック(S&LB)——メリット3・デメリット3・留意点2を数値例つきで
減損会計——「割引前/割引後」の使い分けと、回収可能価額=高い方。計算問題対応まで
賃貸等不動産の時価開示——なぜ開示が企業行動を変えるのか
FM(ファシリティマネジメント)のPDCAとKPI——CREとFMの役割分担
ESG/SDGs・ZEB・BCP——回収年数の計算まで含めた実務感覚
企業が証券化を使う動機6つと、102科目以降への橋渡しマップ
遊休地の使い道5択比較/統廃合/本社移転という実務論点
まとめ暗記カード+つまずきポイント総ざらい10項目
問題32問(○×10・4択18・計算記述4)+全32問の解答・解説
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読んで終わりにせず、最後の32問で手を動かして定着させましょう。
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