夏の虫に文句を言う
夏になると、虫が増える。しかも、刺すやつが多い。蚊、アブ、ブヨ、ハチ。こちらは普通に外を歩いているだけなのに、向こうはまあまあ本気のよう。
特に蚊。勝手に血を吸って、かゆみだけ残して帰る。せめて一言あってもいいみたい。そんなことを考えていて、ふと思った。
なぜ夏の虫は、こんなに刺すやつが多いのか。
調べてみると、夏は虫たちにとって繁殖の季節らしい。蚊やアブのメスは、卵を産むための栄養を得るために血を吸う。
しかも暑くなると動きも活発になる。そこに人間も半袖、短パン。肌を出して、汗もかいている。
虫からすると、見つけやすいうえに吸いやすいよう。夏の人間、ほぼ歩くドリンクバーみたい。ハチの場合は、血を吸いたいわけではない。
巣を守りたい。近づいてきた人間を敵だと思って刺す。蚊は食事。ハチは防犯。理由は違う。
でも刺される側からすると、どちらも困る。そこで、さらに疑問が出てきた。そもそも、なぜこんな害虫が存在するのか。
人間を刺す。病気を運ぶ。家に入ってくる。夜中に耳元で飛ぶ。かなり迷惑な存在のよう。
ところが調べてみると、虫には虫なりの役割があるらしい。死骸やフンを分解する。花粉を運ぶ。土をつくる。ほかの生き物が増えすぎないようにする。
自然界では、ちゃんと仕事をしているみたい。人間から見れば害虫でも、地球から見れば清掃員や運送業者のよう。そう考えると、虫に対して、
「お前ら、何のためにいるねん」とは言いにくくなる。ちゃんと役割がある。では人間はどうなのか。
ここで急に話が大きくなる。虫は土をつくる。ハチは受粉を助ける。ミミズは土を耕す。
人間はどうか。
山を削る。海を埋め立てる。
ゴミを増やす。暑いと言いながら、冷房を強くする。しかも虫を見つけたら、すぐに害虫と呼ぶ。
いや、それ虫に言える?となってくる。もちろん人間にもできることはある。
森を守る。絶滅しそうな動物を保護する。環境を研究する。ゴミを減らそうとする。一度壊してから、全力で直そうとしている感じもするけど。
自分で部屋を散らかして、自分で掃除して、
「今日はかなり頑張った」と言っているみたい。とはいえ、人間だけが悪いとも言い切れない。そもそも生き物は、地球のために存在しているわけではないらしい。
蚊も人間も、たまたま生き残ってきただけ。最初から役割が決められていたわけでもない。そう考えると、「なぜ存在するのか」という質問そのものが、人間らしいのかもしれない。
蚊はたぶん、自分の存在意義について悩まない。ハチも夜中に、「私は何のために巣を守っているのだろう」とは考えない。
人間だけが、ご飯を食べながら存在意義を考える。そして考えすぎて、少し疲れる。結局、夏の虫について調べていただけなのに、人類の話まで来てしまった。
蚊に刺されたところから、ずいぶん遠くまで来たよう。ただ一つ分かったことがある。虫にも役割がある。
人間にも、たぶん何かある。
でも蚊には、できれば私以外の役割を見つけてほしい。
