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『信号機、すっぱい葡萄味』【毎週ショートショートnote】お題:信号機ぶどう味

 ぼくの心の中には信号機がある。

 比喩ではなく本当にある。赤、青、黄の三色で、ぼくが「すっぱい葡萄」反応を起こしそうになると教えてくれる。

 友人が推薦で大学に受かったとき、

「へえ、一般入試じゃないんだ」

 と言った瞬間、黄色く点灯した。危ない。ぼくは彼が羨ましいのだ。だからすぐに「おめでとう」と続ける。信号は青になる。よし。

 ある日、好きな子がクラスの男子と付き合い始めた。赤だった。真っ赤だった。点滅までしている。

「相手が彼なら仕方ないよ」

 赤。

「そこまで好きじゃなかったし」

 赤。

「むしろ告白しなくてよかったかも」

 赤。

 どうしても青にならない。

 数日後、帰り道で彼女に呼び止められた。

「別れちゃった」
「は?」
「なんか思ってたよりつまんなかった」

 彼女は笑った。

 心の信号機を見る。点灯していない。困惑しているらしい。ただ、いつの間にか歩行者用の押しボタンが付いていた。誰が設置したんだ。ぼくか。

「そうなんだ」
 交差点で並んで立ち止まる。もう一度、信号機を確かめ、ぼくは押しボタンに手を伸ばす。

「ねえ、ヒマだし遊びに行こ」
 ぼくが押すより先に、彼女がボタンを押した。
 信号が青になった。

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