Windyだけでは読めない、北アルプスの夏雷が「地形」を選ぶ理由
登山の前夜、Windyを開いて雷マークや風の予報を確認するのが習慣になっている人は多いと思います。
私もそのひとりです。
Windyは、風向きや雨雲の位置、上空の大気の状態を確認できる、とても便利なツールです。
登山の計画を立てるとき、私もよく使っています。
ただ、あるとき気づきました。
「Windyが教えてくれる情報だけで、本当に山の雷リスクを判断できているのだろうか」
ということに。
Windyは「答え」じゃなくて「材料」だった
Windyに限らず、ああいう気象アプリが表示しているのは、数値予報モデルが出した生データです。
ただし、数値予報モデルが表現できる地形には限界があります。
谷ひとつ、尾根ひとつといった細かな地形による空気の流れまでは、完全には再現できません。
北アルプスの午後雷雨では、数値予報モデルが得意とする広域的な不安定度だけでなく、細かな地形による上昇流が大きく影響します。
北アルプスの雷、実は「地形が育てている」
夏山の雷というと、前線が通過してドーンと来るイメージを持つ人もいるかもしれませんが、北アルプスで多いのはもっと地味な発生の仕方です。
盆地や内陸で日中じりじりと地面が温められて、そこの空気が上昇して積雲になる。
その積雲が谷風に押されて山にぶつかると、逃げ場を失った空気が一気に持ち上げられて、積乱雲へと化けていく。
つまり雷雲そのものが、山という地形を「利用して」育っているわけです。
ここまでわかると、Windyだけで読み切れない理由もはっきりしてきます。
「今日は大気が不安定」というところまではモデルからも読み取れる。
でも「その不安定さが、どの盆地の空気を、どの山にぶつけて雷雲に育てるか」までは、地形を考慮していない生データには映らないんですよね。
「地形を考慮できない」って、具体的にはこういうこと
Windyの地図は地形の起伏を表示してくれますが、雷雨を予測しているモデル自体の解像度は、谷ひとつ尾根ひとつのレベルまでは見ていません。
暖められた空気がどの谷を伝って上がっていくか、どの稜線で合流するかは、モデルが扱っているスケールよりもっと細かい話です。
だから「Windyでは大丈夫そうだったのに、稜線に出たら雷雲がもくもく発達していた」そうしたケースは珍しくありません。
逆に、「Windyでは雷予報だったのに、全然大丈夫だった」ということもあります。
これはモデルの精度が悪いわけじゃなくて、地形性の雷雲ができる仕組みそのものが、モデルの得意分野の外側にあるということなんだと思います。
しかも雷雲は、その場にとどまってくれない
もうひとつ、意外と見落としがちなのが「雷雲は生まれた場所で待っててくれない」ということ。
盆地や低山で育った積乱雲は、上空の風に流されながら移動します。
また、移動中にも新しい発達を繰り返すため、発生した場所だけを見て判断することはできません。
ということは、その日の上空の風向き次第で、危ないのはA山なのかB山なのかがまるっと変わってくるわけです。
「あの山はいつも大丈夫だから」という思い込みは、風向きを見ていない限りあてになりません。
雷が起きやすい山、起きにくい山がある
同じ気象条件でも、地形によって雷雲が発達しやすい場所には差があります。
地形が空気を持ち上げやすいかどうか、その日の風下にあたるかどうかで、同じ日でも山ごとのリスクは変わります。
つまり、「今日は雷注意報が出ているから、すべての山が危険」と考える必要はありません。
逆に、気象条件を読み解くことで、「今日はこの山では雷雲が発達しやすそうだから、別の山に変更する」という判断もできます。
すべての山を一律に考えるのではなく、その日の気象条件と山の地形を組み合わせて、行き先を選ぶことも夏山では大切です。
結局、最後の一歩は自分で埋めるしかない
こう考えると、Windyを見て終わりにするのはちょっと危ういなと感じます。
Windyは、広域的な気象状況を把握するための非常に有効なツールです。
ただし、そこから先の局地的なリスク判断には、地形や時間帯を組み合わせて考える必要があります。
そこから先の「どの山の、どの時間帯が危ないか」は、地形と風向きを自分の頭で組み合わせて考える必要がある。
だからこそ、雷の可能性がある日は、行き先の山そのものと、行動する時間帯もあわせて計画に入れたいと思っています。
地形性の雷が発達しやすい山はできれば避ける、あるいは発達が始まる前の時間帯に稜線を通過し終える…そんなふうに「山選び」と「時間選び」をセットで考えることが、北アルプスの夏山で雷を避けるための、いちばん現実的な備え方なんじゃないかと思っています。
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