「オリーブの木と鼠のフォーク」
名付け親から届いた封筒には、地図が入っておりました。いえ、「地図」と声が言っていましたが、それはまるで模型のようでした。
オールリーはオリーブの木でしたが、雲の番人によって騎士の姿に変身させれらております。そのため、甲冑で覆われた五本指の手でその地図を落とさないように持ち上げることができました。
模型は模型でも、動く模型でした。駅と書かれた小さな看板のある建物に、赤い点がチカチカしています。そしてなんと、ミニチュアのオールリーと猫のミウが立っているのでした。そこから薄く点線がのびているのです。
オールリーは点線の終点にあたる場所を眺めました。そこには『ルールーの店』と書かれていました。花柄の看板です。
「すごいにゃー!こんな地図、見たことがないにゃ!オールリーの名付け親というのは、すごい人なんだにゃー」
ミウが感嘆の声をあげました。
「私も、初めてみました。本当にすごいですね。……行って、みましょう」
オールリーは、自分が緊張しているのだとわかりました。雲の番人には感じたことのない感情です。
オールリーとミウが駅から外に出ると、ガラスが反射してどこもかしこも虹が生まれていました。
「そうだったにゃ。キュラリアは、ガラスに覆われた国だったんだにゃ」
ミウがうっとりとしながら言いました。
地図の模型の線が伸びる方向へ、一人と一匹は歩いて行きました。すると、目の前をスプーンがのそのそと動いているのです。
「「スプーン?」」
オールリーは驚いて、思わずスプーンを拾い上げてしまいました。すると、そのスプーンには尻尾が生えていました。灰色の細長い尻尾です。さらには、スプーンからチューチューっと怒ったような鳴き声がするではありませんか。
オールリーがスプーンをひっくり返してみると、そこには鼠がひっついていました。いえ、失礼いたしました。鼠がスプーンを背負っているのでした。
「チュー!チュー!チュー!なんてことするんだ!」
大層お怒りです。オールリーは、スプーンではなくその鼠を丁寧に地面に降ろすと言いました。
「大変申し訳ないことをしました。ごめんなさい」
「チュー!チュー!本当だよ。急いでるんだから!」
「どこに行くのですか?お詫びに私が移動手段となりましょう」
「チュー!本当か?本当にいいのか?」
「はい、もちろんです」
「ふん。じゃあ、許してやろう」
「なんて態度の大きい鼠なんだにゃ」
ミウが小さく悪態をつくと、鼠は少しだけ大人しくなりました。
「ごほん。ここを真っ直ぐいったところに、『ザ・チーズ』っていうレストランがあるんだ。そこで今日限定のとろ〜りとろけるチーズスープが販売される。今日だけなんだ!なのに、あと三分で販売開始だ。もう間に合わない……」
鼠は頭を抱えました。足元をよくみると、多くの鼠が走っています。
「えーと、鼠さん。その『ザ・チーズ』ってお店なんだけど、私の足で五歩で着くのですけど……」
「は?」
「へ?」
「にゃ?」
一人と二匹が顔を見合わせ、「すぐに乗せてくれー!」というその鼠の一声で、オールリーは足を動かすことになったのでした。
五歩歩いたところで、鼠はスルスルスルとオールリーから降りて行き、『ザ・チーズ』に滑り込んでいきました。そして数分後、まだとろりとしたチーズのついたスプーンを背負い、お腹をさすっている鼠が満足そうな顔で出てきたのでした。
「おお。神よ。本当にありがとう。本当に助かった。スプーンごと持ち上げられた時にはどうなることかと思ったが、無事に食べることができた。ありがとう、ありがとう……」
「それはよかったです」
「なんだかにゃー」
「ああそうだ。俺の名前は、フォーク。よろしく。お礼に何かをしたいんだが……。何かしてほしいことはあるか?」
「フォーク……さん。私はオールリー。こちらは猫のミウです。よろしくお願いしますね。……いいえ、構いません。私が拾い上げてしまったお詫びのようなものですから」
「そうか。まあまた何かあった時には声をかけてくれ。俺の仲間の誰でもいいから、話せばわかるようにしておくさ」
「あ、ありがとうございます」
「おう、じゃあまたな」
鼠のフォークは、風を肩で切るようにして去って行きました。
「スプーンを背負った、フォーク……」
どちらの呟きだったか、チーズの香りと共に風に流れていきました。
片桐みかんさんの#3つのお題に空想のひらめきを 【第4回】のお題で書きました。
お題:スプーン、ラベル、風船
今回はスプーンのみ。次回、残りのワードを使用します。
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