父が見上げた最後の空
青い空と、白い飛行機雲。
父が亡くなって、
もうすぐ一年半が
経とうとしています。
少しずつ日常が
戻ってきたように見えても、
父のいない家で一人で過ごす母は、
まだその暮らしに慣れない様子です。
長年一緒にいた大切な人が、
ある日からいなくなる。
一年半という時間は、長いようでいて、
そんなに簡単に埋められるものではないのでしょう。
父が最期の時間を過ごしたのは、
緩和ケアの病院でした。
高層の病院の窓から、
遠くまで街を見渡すことができる、
とても景色のいい場所でした。
ゼネコンで設計や建設の仕事に
携わっていた父は、
窓の外を眺めながら、
「あれも、これも、お父さんが建てたんやで」と、遠くに見える建物を指さして教えてくれました。
そして、
仁徳天皇陵を指して、
「あれも、お父さんが作ったんや」と、
しれっと言うのです。
「それは違うやろ!」と
ツッコミをいれて、
思わずみんなで笑いました。
病気になっても、
父は父でした。
そんな冗談を言って
私たちを笑わせる父を見ていると、
その瞬間だけは、
病気になる前の日常に
戻れたような気がしました。
そんなある日のこと。
その頃の父は、もう自分では
歩くことができなくなっていました。
でも、
その日はとてもお天気がよく、
病院の方がベッドごと父を
ベランダに出してくださいました。
久しぶりに触れる外の空気。
頬をなでる風。
父のベッドから見えるのは、
どこまでも晴れ渡った青い空だけでした。
みんなで空を眺めていると、
一機の飛行機が飛んでいるのが見えました。
その飛行機を見ながら、
父が目を細めて言いました。
「〇〇〇、乗ってるかな?」
妹の名前でした。
妹は東京に住み、
CAの仕事をしています。
仕事柄、海外にいることも多く、
海外からのフライトを終えて、
そのまま病院へ駆けつけることもしばしば。
関西に住んでいる姉や私に比べると、どうしても父に会える回数は少なくなります。
父はきっと、
そんな妹のことを
いつも気にかけていたのでしょう。
あの日、
父は青い空を飛んでいく飛行機を、
ずっと目で追っていました。
「乗ってるかな?」
その短いひと言に、
父のいろいろな想いが
詰まっていたような気がします。
会いたいな。
元気にしているかな。
ちゃんとご飯を食べているかな。
無事に帰ってくるかな。
親はいくつになっても、こんなふうに、
子どものことを想うものなのでしょうね。
そして今でも、
ときどき飛行機が飛んでいるのを見ると、あの日の父を思い出します。
晴れ渡った青い空。
頬をなでる風。
遠くを飛んでいく飛行機。
そして、それを目を細めて見つめていた父。
家族を愛した父は、
あの日、何を想っていたのでしょう。
もう聞くことはできません。
けれど、
あのときの父の横顔を思い出すと、
なんとなくわかる気もするのです。
父が見つめていたのは、
飛行機ではなく、
その向こうにいる、
大切な娘や家族だったのかもしれません。
青い空に伸びていく、
白い飛行機雲。
父がいなくなって、
一年半が経とうとしている今も、
あの日の空だけは、
私の記憶の中に、
ずっと鮮やかに残っています。
「仁徳天皇陵を作った」というジョークと共に。(笑)
本日のお題は、本日の記事は、ちょっと新しい挑戦から♡下間都代子さん主宰の大人気のクラブハウスのルーム「耳ビジ」サポーターズクラブ内で、新たな部活動がスタートしました。
その名も「耳ビジnote部」8/8〜9/7の1ヶ月間、毎日テーマに沿ってnote記事を投稿してみます♡
本日のお題は、「どんな空に出会いましたか?」
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