連載小説「オボステルラ」 【第三章】9話「きっかけ」(6)
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9話 きっかけ(6)
「…ゴナンが…!」
夜。リカルドの拠点に集まり、状況報告をしている。リカルドは椅子を蹴倒す勢いで立ち上がった。
「…ゴナンのような気がした、ような気がする、かもしれない、程度よ。かなり遠目だったから」
「そうよ、リカルド。わたくしも、断言できるほどの自信はないわ」
エレーネとミリアが制する。しかし、リカルドは拳を握って震わせる。
「……でも、でも…、今まで何も、何も手がかりがなかったんだ……」
「今まで思い当たる場所をどれだけ探しても見つかっていないのだし、これまで存在すら分かってなかった場所なんだから、可能性はあるかもしれないわね」
ナイフも平静を装いつつも、今すぐここを飛び出してゴナンを迎えに行きたい衝動に駆られていた。でも、落ち着かないと。おそらく自分が動くよりも先に…。
と、リカルドがマントと剣を手に外に出ようとする。
「……あっ。やっぱり! そう来ると思ったわよ」

ナイフは立ち上がって、リカルドを制した。
「リカルド、待って。今から行っても、馬で半日の距離なのよ。深夜になるわ」
「でも、ゴナンを、早く見つけてあげないと…!」
「だから、まだゴナンかどうかも分からないんだってば」
ナイフは、今にも飛び出そうと玄関へ向かうリカルドの首に腕を回し、そのまま締めにかかる。
「こら、無計画に飛び出すなっつってるの」
「…ぐ…、ナイフちゃん……、ギブ…」
リカルドはタップして降参し、ふう、と肩を落とす。
「…リカルド。その鉱山らしき場所があったところは、切り立った岩山がたて込む地域なの。もちろん街道もないし、夜に行ってもたどりける自信がない。迷う恐れがあるわ」
エレーネがリカルドをなだめた。
「それに、もしあそこにゴナンがいるとすれば、今夜行くのも明日行くのも状況は変わらないはずよ。しっかり準備を整えて行きましょう」
「……ああ、そうだね…」
「それに…」
エレーネが少し物憂げに目を伏せる。
「…外から窺っただけだけど、見張りの兵の風体からしても、ちょっと普通の場所ではない感じだったわ。しっかり武装して行った方が、よいかもしれない」
「……」
リカルドはぐっと唇を締め、ナイフもピリッと緊張感を漂わせた。もしゴナンがいるとしたら、なぜ、そんな場所に…。
ふう、とナイフは息をつく。
「…さあ、リカルド。今日はもう、夜に徘徊する必要はないでしょ。しっかり寝なさいよ。明日、元気に迎えに行きましょう」
「……うん…」
そう頷いて、リカルドは椅子に座る。落ちついたところで、エレーネはハッと思い出した。
「……あ、そういえば、巨大鳥にも遭遇したのよ。ちょうど張っていた泉に水を飲みに来たわ」
「……え? そうなの?」
ナイフは驚く。これまで停滞していた物事が、今日だけでこんなに進むなんて。
「鞍に乗っていた人の顔も見たわ。ミリアと同じくらいの背格好の女の子だった。うまく逃げられてしまったけど…」
「そう…」
リカルドがかじりついて話を聞いてくるかと思ったが、生返事だ。
「リカルド?」
「……うん、ごめん。その話は、明日聞くよ。今聞いてもきっと、頭に入らない」
「わかったわ…」
エレーネはナイフと目を合わせて肩をすくめた。
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