連載ファンタジー小説「オボステルラ」 【第三章】4話「ゴナンが消えた」(3)
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4話 ゴナンが消えた(3)
翌朝。ナイフはミリアとエレーネを伴って、拠点を訪れる。
「ゴナン、まだ、帰ってきていないの?」
「うん……」
げっそりとやつれたリカルドが、皆を迎え入れた。服は昨日の寝間着のまま、髪はいつも以上にボサボサで、彼には珍しく無精髭も伸びっぱなしだ。ミリアは、そのリカルドの憔悴具合に眉をひそめる。
「リカルド、大丈夫? 昨晩、眠れていないのではなくて?」
「ああ…、ありがとう、ミリア。ゴナンが心配で気が気じゃなくて、一晩中、付近を探し回っていたんだ」
「え!?」
驚くミリア。エレーネもリカルドのあまりの落ち込みように、尋常ではない様子を感じている。

「まだ、丸一日いなくなっているだけなんでしょう?」
「うん…。そうなんだけど、なんだかイヤな予感がして……」
エレーネに力なく微笑むリカルド。ナイフは、そんな彼の前のテーブルに、紙袋をどさっと置いた。
「ほら、辛気くさい。ひとまずみんなで朝ご飯よ! 市場でパンを買ってきたから。それで、今日の作戦会議をしましょう」
「作戦会議?」
「ゴナン捜索作戦よ。情報を整理して、皆で手分けして探すのよ。夜中に当てもなくフラフラ歩き回ったって、見つかるものでもないわよ。不審者で通報されるだけよ。ほら、食べなさい! パタ粉の白パンよ。奮発したのよ」
そう言ってナイフは、リカルドの口にパンを1つ、ぼふっと詰め込んだ。リカルドはその勢いでモグモグと食べてしまう。
「……やっぱり、ナイフがいて、よかったわね……」
その様子を見て、エレーネは小声で呟いた。
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「で、状況を整理してみると……」
リビングのテーブルを囲み、穀物のパタの風味が豊かな白パンを食べながら、作戦会議を始める一同。
「ゴナンはリカルドに行き先も理由も何も告げず、夜中に1人で出ていった。村から着てきた服だけを身に付けて、荷物は財布も武器も何もかも置いていってしまっている。どこに行ったか見当も付かないけど、前日にゴナンがお金を稼ぎたがっているのをナイフが聞いている…」
エレーネが総括する。そして首をひねった。
「リカルド、ゴナンが出ていくのを見たのなら、どうして呼び止めなかったの?」
「あ、それは…」
口ごもるリカルド。確かに、ユーの呪いの発作を知らないと説明がつかない。ナイフはリカルドの反応を見守った。
「あ、そのとき、あの、か、金縛りにかかってて」
ズル、とイスからずり落ちそうになるナイフ。言い訳としては、あまりにも練度が低すぎる。彼らしからぬ回答だ。
「ああ、金縛り、そう…」
「…」
「…まあ、それで、ナイフはゴナンが何かお金を稼ごうとして出ていったのではないかと思っているのね」
空気を読んだのか、それ以上、金縛りについては詮索せず、エレーネは話を先に進める。
「ええ、ゴナンが自分の意志で出ていったというのなら、まずはそう考えるわよね。荷物を全て置いていっている理由はひとまず度外視することにして」
「…それは…、きっと僕に嫌気が差したからだよ…」
「ねえ、リカルド、夜中って、何時くらいだったの? その、金縛りにかかったのは」
リカルドの卑屈な台詞はスルーして、ナイフは尋ねる。
「…どうだろう…? 僕は少し眠ってから気がついたから、3時? いや2時くらいだったような気がする…」
「…そう…。もう少し早い時間だったら、夜の街に自分を売り込みにいったパターンも考えたけど。そもそも、この街のお店は閉まるのが早いから…」
宿場町ではなく職人の街。基本的には翌日も作業を抱える男達が飲むため、みな夜は早いのだ。
「もしゴナンがお金を稼ごうとするなら、この町ではどういうことができるのかしら」
ミリアはナイフに尋ねた。
「そうねえ。いきなり工房に入らせてもらうのはハードルが高そうだし、最初は修行でお給料なんて微々たるものになると思うけど、西の方の工場エリアなら、もしかしたら日雇いの仕事もあるかもしれないわね。ただ、ゴナンはまだ工場の方を見てないし、そういう働き方があるっていう知識はなかったように思うけど…」
「そうだね…。あとは、狩りをしているか、かな…? 彼の獲った獲物は、割と高く売れたから…」
そう呟いて、またリカルドが暗い顔になる。この街に来た直後、自分が獲った獲物が売れて、嬉しそうな光を瞳に宿していたゴナンを思い出す。
「…もしかしたら、1人で狩りに出て、何か事故や事件に遭ったのかもしれない…。ケガをして動けないか、ビッグボアに襲われた、いや、人攫いが…。そうだ……。あんなに、かわいい子なんだ、攫われたっておかしくない…」
「リカルド…。ちょっとひいき目が過ぎるわよ。ゴナンにかわいい面があるのは同意するけど、初見で見た目だけだと、決してかわい気がある感じでは無いわよ」
ナイフが少し呆れたようにつっこむ。そして腕を組んだ。
「じゃ、こうしましょ。リカルドは馬を使って草原の探索。エレーネとミリアは、工場エリアで聞き込み。私は夜の店界隈を回るわ。こっちの街にも知り合いは多いから」
ナイフの提案に一同は頷く。ナイフはリカルドをジロリと睨んだ。
「ただし、馬に乗る人は今から3時間仮眠取ってね。そんな状態で探しても、見つけられるものもみつからないし、落馬でもされて動けなくなられたら、こっちも迷惑だから」
「…はい…」
リカルドは元気なく頷いた。
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