愛媛・松山を巡る|旅の記憶を辿る
プロローグ 5度の愛媛
愛媛県は、四国の北西部に位置し、瀬戸内海と宇和海に面した県。温暖な瀬戸内の島々から、山間部、歴史ある城下町や温泉地まで、県内にはさまざまな風景が広がっている。

これまで5回訪れて、その度に様々な景色を楽しんできた。その思い出を振り返る。
海を越えて、愛媛へ
本州から四国へ、さらに愛媛・松山へ向かう道のりには、橋を渡る、空を飛ぶ、船で海を渡るという3つの方法がある。
橋を渡って
本州と四国を結ぶルートは、西から「しまなみ海道」「瀬戸大橋」「神戸淡路鳴門自動車道」の3つのルートがある。その中で、岡山から向かうときに利用したのが瀬戸大橋だった。
鉄道旅

岡山駅からJR予讃線特急「しおかぜ」に乗り、瀬戸大橋へ。

道路と鉄道が上下に走る橋を、列車がゆっくりと渡っていく。

橋の鉄骨越しに、瀬戸内海と島々が見える。海の上を走る列車から、少しずつ四国が近づいてくる。
坂出方面へ渡り終えると、列車は予讃線へ。讃岐平野を抜け、さらに西へ進んでいく。

やがて車窓に再び瀬戸内海が現れる。穏やかな海に島々が浮かび、海と山が近くに迫る車窓を眺めながら、松山へ向かった。

バス旅
高速バスに乗ったのは、山陽新幹線福山駅。

福山の市街地を抜け、尾道方面へ。しばらく走ると瀬戸内海が見えてきた。いよいよ、しまなみ海道へ入る。

橋の上に出ると、眼下に海が広がる。橋を渡り切れば島の景色へ入り、しばらく島の中を走った先には、また海が現れる。

島と海を交互に眺めながら、バスは瀬戸内海を越えていく。車窓には島々が連なり、その間を縫うように次の橋が現れる。

海の上では視界が一気に開ける。島の間に広がる海、その先に浮かぶ島々。場所が変わるたびに、目の前の景色も少しずつ姿を変えていった。

いくつもの島を抜け、やがてしまなみ海道を渡り切る。振り返ると、今まで走ってきた橋と島々が遠くに見えていた。

今治市街に入り、今治駅前で松山行きの特急バスに乗り継ぐ。

ここからは国道317号線を南へ。今治市から松山市へ向かうにつれて、瀬戸内海の景色から山あいの景色へと変わっていった。

帰りは、松山から香川県へ四国を横断するルート。

山の上の松山自動車道を走るバスの車窓には、のどかな風景が広がる。

石鎚山サービスエリアでひと休み。再びバスに乗り込むと、徳島自動車道へ入り、今度は吉野川に沿うように走っていく。

山の景色が続いた先に、今度は大きな川が現れる。さらに東へ進むと、やがて大鳴門橋が見えてきた。

そこから瀬戸内海を眺める。長かったバス旅も、終わりを迎えた。

空を飛んで

離陸すると、瀬戸内海の上空へ。海沿いの街並みを眼下に眺めながら、西へ飛んでいく。

やがて愛媛の山々や市街地が見えてくる。松山平野が広がり、その先には瀬戸内海。高度を下げるにつれて、街並みが少しずつ大きくなっていく。
やがて滑走路が近づき、松山空港に着陸した。


海を渡って

海から愛媛へ向かう旅では、フェリーに乗船した。

出航の2時間前。船内に入ると、3フロア吹き抜けのエントランスが目に入る。部屋に荷物を置き、船内レストランで夕食を済ませる。

展望風呂に入り、船内を散策した後、最上階の展望デッキへ。

出航を待つターミナルは、白やオレンジの灯りに照らされていた。

定刻の22時、エンジン音とともに船がゆっくりと岸を離れる。港の灯りが少しずつ遠ざかっていった。

23時前、再び展望デッキへ。近づいてくる明石海峡大橋を見上げる。

ライトアップされた橋の下を通り抜けると、再び暗い海が広がった。
翌朝5時、再び展望デッキへ。

水平線から昇る朝日に照らされ、船の後ろには長い航跡が伸びている。振り返ると、前方には少しずつ近づいてくる四国の姿があった。

6時、東予港に入港。連絡バスに乗り換え、松山市内へ。

海を眺め、街を歩く

松山市駅から列車を乗り継ぎ、「愛ある伊予灘線」へ。

やがて列車が小さな駅に到着すると、ホームの向こうに伊予灘が広がっていた。

高台にあるホームからは視界を遮るものがほとんどなく、目の前に海を望むことができる。

映画のロケ地や青春18きっぷのポスターなどでも知られ、駅に着いたときもホームにはたくさんの観光客。
前略、僕は日本のどこかにいます。【青春18きっぷ 2000年 冬/予讃線:下灘駅】 pic.twitter.com/WYjH6Wc05b
— 青春18きっぷポスター&コピーbot (@18Ticket_PRbot) August 28, 2019
ベンチに腰掛けて景色を眺める人。写真を撮る人。夕日を待つ人。そんな中で、地元の方が観光客の写真を撮ったり、駅の案内をしたりしていた。
しばらく海を眺めていると、日が少しずつ傾き始めーー

伊予灘が少しずつ赤く染まり、水平線へ沈んでいく夕日を眺める。海と空が夕焼けに染まっていく景色を、しばらくホームから眺めていた。
梅津寺駅
海の見えるもう一つの駅、伊予鉄道高浜線梅津寺駅。


ホームに降りると、目の前に伊予灘が広がる。駅のすぐそばには砂浜へ降りられる場所もあり、海岸へ出ると波の音が聞こえてくる。

駅のそばには、愛媛県産柑橘の魅力を発信する「みきゃんパーク梅津寺」がある。

柑橘を使った商品やみきゃんのグッズが並び、店内のあちこちにみきゃんの姿が見える。ぬいぐるみなどに囲まれた店内を歩きながら、商品を眺めて回った。

再び駅へ戻り、電車を待つ。下灘駅では海を遠くに望んだが、梅津寺では海がすぐそばにある。風に吹かれながらホームに立ち、波の音を聞きながら伊予灘を眺めていた。
道後温泉
市内中心部から伊予鉄市内電車に乗り、道後温泉駅へ。

駅から続く道後商店街を歩いていくと、道後温泉本館が見えてくる。明治時代に建てられた木造三層楼の建物は、道後温泉を象徴する存在だ。

訪れたときは保存修理工事の最中だったため、本館を眺めた後、高台にある「空の散歩道」へ向かった。

足湯に浸かりながら、眼下に広がる温泉街を眺める。

道後温泉から松山市街へ戻るのに乗ったのは、坊っちゃん列車。

当時を再現した制服の車掌に案内され、車内へ。小説『坊っちゃん』で「マッチ箱のような汽車」と表現された理由がよく分かるほど、天井が低い。

発車すると、「ガタッ」と車体が引っ張られるような衝撃とともに、力強い汽笛が響く。ガタゴトと車体を揺らしながら、松山の街を進んでいく。道後温泉から松山市駅まで、約20分の列車旅を楽しんだ。

松山市駅に到着すると、機関車の付け替え作業が始まる。機関車を切り離し、向きを変えて客車につなぎ直す。列車を動かすための作業を間近で見ることができた。

松山城
松山城へは麓からリフトで約6分間の空中散歩。

リフトを降り、本丸を目指して歩いていく。門をくぐり、角を曲がり、また門を抜ける。

いくつもの門や石垣を越えながら進んでいくと、やがて本丸広場にたどり着いた。

松山城は、松山市の中心部にある標高132mの勝山山頂に本丸を置く平山城。

加藤嘉明が築き始めた城で、門や櫓、塀を数多く備え、狭間や石落とし、高石垣などを巧みに配置している。

実際に歩いてみると、門をいくつも越え、角を曲がりながら進む造りから、天守まで簡単にはたどり着けない城の構えがよく分かる。

天守内には築城からの歴史を紹介する展示や、刀、鎧などが並んでいる。最上階まで上がると、松山市街を360度見渡すことができた。

眼下には松山平野が広がり、その先には山々。遠くには瀬戸内海も見える。しばらく景色を眺めてから、城を後にした。

松山市街
大街道や銀天街のアーケードを、商店を眺めながら街を進む。

道後温泉や松山城とはまた違う、松山の街の風景を歩いて楽しんだ。
伊予鉄松山市駅近くにある、坊っちゃん列車ミュージアムにも立ち寄った。

伊予鉄グループ本社ビルの1階にあり、館内には坊っちゃん列車1号機関車の原寸大レプリカをはじめ、車両部品や鉄道資料が並んでいる。実際に乗った坊っちゃん列車を思い浮かべながら、展示を一つずつ見て回った。
松山市駅前の伊予鉄高島屋屋上にある、大観覧車「くるりん」。

ゴンドラがゆっくりと上昇するにつれて、松山の街並みが少しずつ眼下に広がっていく。

路面電車や建物の明かりが一つ、また一つと連なり、高く上がるにつれて松山の夜景が視界いっぱいに広がった。
出会ったご当地グルメ
鯛めし
愛媛と言えば「鯛めし」。鯛を丸ごと米と一緒に炊き込む松山鯛めしと、刺身で味わう宇和島鯛めしの2つ。

新鮮な鯛の刺身を、卵を溶いた出汁にくぐらせ、ご飯と一緒に味わう。鯛の食感に、出汁の旨味と卵のまろやかさが加わり、ご飯がどんどん進む。初めて食べたとき、その美味しさに箸が止まらなくなった。

柑橘
梅津寺で立ち寄った「みきゃんパーク梅津寺」では、伊予柑ソフトを味わった。

伊予柑の爽やかな風味に、ソフトクリームの甘さがよく合い、さっぱりとした味わいだった。

愛媛名物の「蛇口から出てくるミカンジュース」を体験できたのは、「えひめ愛顔の観光物産館」。蛇口をひねるとミカンジュースが出てくる。カップに注ぎ、愛媛らしい一杯を味わった。
母恵夢
愛媛を代表する銘菓の一つ、母恵夢。バターを使った洋風の生地で、黄身餡を包んだ焼き菓子だ。その製造工場を見学できるのが「母恵夢スイーツパーク」。

工場では、母恵夢が出来上がっていく工程を間近に見ることができる。生地が作られ、機械の中を流れながら形が整えられ、焼き上げられていく。

焼き上がった母恵夢が次々とラインを流れていく様子を眺めていると、一つのお菓子が商品になるまでの流れがよく分かる。

見学を終えると、併設されたショップへ。いくつか商品を選び、旅のお土産にした。

夜、宿に戻ってから、その母恵夢を食べる。昼間に見た製造工程を思い出しながら、味わった。

一六タルト
愛媛の銘菓「一六タルト」。きめ細かなスポンジ生地で、柚子の風味を加えたこし餡を巻いた、愛媛ではおなじみのお菓子だ。

しっとりとした生地と餡の甘さに、柚子の爽やかな香りが加わり、食べやすい味わいだった。
今治焼豚玉子飯
今治のご当地グルメで、焼豚と目玉焼きがご飯の上に乗った、シンプルながらボリュームのある一品。

甘辛いタレが焼豚とご飯によく合い、目玉焼きの黄身を崩すと、まろやかな味わいになる。
焼豚、目玉焼き、ご飯を一緒に頬張ると、それぞれの味が重なって、どんどん箸が進んだ。
自転車で巡る内子の町
松山から少し足を伸ばして、古い町並みが残る内子を訪れた。

松山駅から宇和島行きの特急「宇和海」に乗り、山あいを走ること約40分。内子駅で下車し、駅でレンタサイクルを借りて町並み保存地区へ向かった。
内子座
最初に訪れたのは、内子を代表する歴史的建造物の一つ、内子座。

大正5年に建てられた芝居小屋で、現在も劇場として使われている。

客席から舞台を眺めると、往時の芝居小屋の雰囲気が伝わってくる。さらに舞台へ進み、その下へ降りていく。そこに広がっていたのが、普段は客席から見ることのできない奈落だった。

舞台を回転させる回り舞台や、役者が舞台下から登場するためのせり装置。華やかな舞台を支える仕組みを、間近で見ることができる。

客席から眺める舞台とは、また違った内子座の姿だった。
なお、内子座は耐震補強を含む改修工事のため、2024年9月2日から約4年間の予定で休館している。
町並みを自転車で巡る
内子座を出て、再び自転車にまたがる。
町並み保存地区をゆっくりと走り、古い町家や白壁の建物を眺めていく。気になる場所では自転車を止めながら、町の中を巡った。

途中、重要文化財の上芳我家住宅にも立ち寄った。

木蝋の生産で栄えた芳我家の住宅で、主屋をはじめとする建物を見学する。商家の暮らしや、木蝋生産によって栄えた内子の歴史に触れることができた。


町をひと通り巡ったところで、内子フレッシュパークKARARIへ。レストランで昼食をいただく。

食事を終えるとレンタサイクルを返却し、内子駅へ戻った。

旅の終わりに
こうして5回の愛媛旅を振り返ってみると、海を眺め、街を歩き、いろいろなものを味わってきた。松山を中心に、下灘や内子にも足を伸ばし、その土地ならではの景色や味に出会ってきた。
一方で、まだ知らない街があることにも気づいた。南予や東予へ行けば、これまでの旅とはまた違った景色に出会えそうだ。
次の愛媛旅はーー
そんな愛媛を、また訪れる機会がやってくる。

愛媛での公演日時や会場はまだ決まっていないけれど、巡業で訪れる街を歩きながら、その土地の風景や時間を楽しみたい。
