【短編小説 シーター】
それは、まだ少し青さの残ったりんご。
見た目はちゃんと“りんごらしい形”をしているのに、触ると少しだけ硬い。
甘さもあるけど、どこか未完成で、食べる側に「これでいいのか」と一瞬だけ迷いを残す。
周りのりんごは、すでに赤く色づいていて、
「これが正解です」と言わんばかりに並べられている。
でもそれらは、分かりやすい代わりに、どこか均一だ。
誰が見ても同じで、誰が食べても同じ反応になるように整えられている。
その中で、このりんごは少し違う。
まだ完全には色が決まりきっていない。
光の当たり方で、赤にも見えるし、黄にも見える。
売る側からすれば扱いづらい。
でも、見る人によっては一番目が止まる。
すぐには選ばれないかもしれない。
でも、一度気にした人は、なぜかもう一度手に取る。
完璧に仕上がっていないぶん、余白がある。
その余白が、あとからじわじわと味になる。
たぶん、そういうりんごは少ない。
ストーリーにシーターは関係ない
でも、そこに意味はない。
いいなと思ったら応援しよう!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
もしこの作品や言葉が、あなたの心に少しでも残ったなら、とても嬉しいです。
いただいたチップは、次の物語を紡ぐための力になります。
これからも、誰かの日常にそっと寄り添える作品を書いていきます。
本当にありがとうございます。