本棚には、検索できない出逢いがある【後編】
※前編はこちら
何を探すでもなく、本棚を眺める。
すると、
ふと一冊の背表紙に目が止まることがある。
名前も知らない作家。
聞いたこともないタイトル。
検索窓には、そもそも入力することのできなかった本だ。
そんな出逢いを、私は昔から何度も経験してきた。
自分だけのアンテナでは探せなかったセレクトをしてくれていたという想い出は、
二つある。
ひとつは、三鷹にある上々堂。
ちょうど駅からの帰り道になる商店街の果てにあり、
ひと昔前の画集や日本の紋帳、
中原淳一さんの食のエッセイといった、
思わぬ出逢いをもたらしてくれた存在だった。
そしてもうひとつは、京都へ旅した折、寺社巡り以外にも足を伸ばした本屋があった。
それが、恵文社一乗寺店。
京都案内の雑誌かなにかで知ったのだと思うが、とても気になったのだ。
扉を開けると、静かに圧倒された。
穏やかな照明の下で様々な形の棚、どっしりしたテーブルの上にも本が並んでいた。
雑多に見えて落ち着いた雰囲気を醸し出しているバランスが、とても素晴らしかった。
古道具やアンティークもさり気なく配置されていて、そこにあったティーカップに妙に惹かれてしまい、旅行中にも関わらず荷物になる割れ物を買ってしまい、今も大事に飾っている。
あと印象に残ったのが、食をテーマにした本棚があったこと。
他の本屋のようにレシピ本や健康関連本を揃えているのでなく、食のエッセイや海外の美しい写真が載っているレシピ本もあったと思う。
単に食情報を集めているわけでなく、
食の文化を感じさせる棚作りだった。
「食」から料理だけでなく、
文化や暮らし、アートへと世界が広がっていく。
本は一冊ずつ読むものだけれど、本棚になることで、本と本のあいだにもつながりが生まれるのだと感じた。
そのなかで私は、食べ物を切り絵で表現している画集を買い求め、今も勿論大事にしている。
じつは帰ってからもあんな本棚が欲しい!
と強く感じた私は、
食や料理に関連する本やコミックだけ集める棚を設け、その本棚は今も健在だ。
あの本棚は、まだあるだろうか。
栃木へ移住したこともあり、
あれきり訪れる機会がないが、次に旅する折には再訪を果たしたい。
そして今回『本棚に会いに行く』を読んで、そんな「わざわざ会いに行きたい本棚」が、増えてしまった。
以前から気になっていた石川県立図書館は、やはり一度じっくりウロウロしてみたい。
本に囲まれて泊まれる箱根本箱も、
滞在そのものが読書になりそうで惹かれる。
読みたい新刊をネット注文で予約し確実に手に入れる。
その便利さは、これからも手放せない。
けれども時には、
まだ出逢っていない本に会うための、
素敵な本棚を訪ねる時間を作りたい。
次に本棚の前に立ったとき、
私は何に惹かれるのだろう。
そのワクワク感は、
検索結果では決して味わえない醍醐味だと思う。
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