映画『ボイスメールで恋をして』(Netflix)とiPhoneの未読メッセージ
iPhoneの電話帳には、既にお亡くなりになった方もいる。かといって電話帳から削除しないし、ショートメッセージやLINEもそのままにしてある。電話番号はとっくに別の人が使っているだろうけれど、そのままにしておきたい心境は、別離を経験したことがある人なら分かってくれるだろう。親しかった人がいなくなったからといって、その人と過ごした時間がなくなるわけではない。大切な思い出は心の中にある。しかし目に見える形ではない。そこで、「iPhoneの電話帳に書かれてある名前」や「LINEの会話」という視覚上の形を見ることで、その人と繋がっているような気になれるのだ。
今年の初めに、大変お世話になった人の訃報を聞いた。その時僕は入院中だった。LINEを辿りながら「去年の夏まではこうやってやり取りしてたのに」と眺めていた。
元気してるだろうかと送ったメッセージがずっと未読のままで、おかしいなと思っていたら、その友人は亡くなっていた、ということもあった。

Netflix(ネットフリックス)の映画『ボイスメールで恋をして』を観た。主人公のジルは最愛の妹を亡くしてしまう。受け入れがたい気持ちが続く。ジルは妹の携帯に電話を入れ日々の出来事を話す。パティシエになる修行中なのでその苦労とか恋愛話とか…。それがボイスメールに録音される。再生もされないし聞いてくれないと分かっていても。僕は「そのやり方があったか」と思った。iPhoneの電話帳をスライドさせた時に目に入って来る、相手は出ない番号に寂しさを覚えていたから。
電話番号は解約すれば当然別の人が使うわけで、となると録音されたボイスメッセージを赤の他人が聞いてしまうことになる。ジル役のゾーイ・ドゥイッチがキュートでハマり役。落ち込んだり舞い上がったりストレートな感情表現に引き込まれる。果たして「赤の他人」はジルと出会うのか、、、。

Netflixの映画はハリウッドの大作と違って予算規模も違うだろうから、有名俳優も余り使われないしド派手なシーンも少ない。だからこの手の、ほのぼの恋愛ものや家族ものに良い作品が多い。主人公がシェフで同じ料理ものだが『マンジャーレ! ノンナのレストランへようこそ』も、亡くした母親への想いが感動的に描かれていた。

母親を見送ってもうすぐ三年か。月日の経つのは本当に早い。もう実家に電話することはないけれど、電話帳には残されたままだ。母親は携帯持ってなかったし家は黒電話だったから留守電すら出来ないけど、母が旅立った日に咲いてた秋桜に近況報告しようかな。

my note #455
