【外科医の教育論】手先の器用さは「才能」ではない。一流の外科医を創る「三つの資質」
長年、脊椎外科の現場で若手を指導し続けてきて、確信していることがあります。
「オペが上手い外科医=もともと手先が器用な人」という認識は、完全な誤解です。
もちろん、最低限の器用さは必要ですが、それはあくまで「前提」に過ぎません。
数千件の症例をこなし、多くの門下生を見てきた中で感じる、伸びる外科医の「真の資質」についてお話しします。
第一のステップ:徹底した「守」の模倣
まず、急速に成長する若手は、驚くほど「人のオペ」をよく見ています。
単に眺めるのではありません。術者の指先の角度、力加減、器具の出し入れのタイミング……そのすべてを網羅的に脳に刻み込んでいます。
そして、その見た情報を、自分の身体で「完全に再現(コピー)」できる。
これができる外科医は、まず間違いなく一定のレベルまで到達します。先人の積み上げた正解を、最短距離で自分の中に取り込めるからです。
第二のステップ:常識を疑う「批判的思考」
しかし、そこから「一流」の域に昇り詰めるには、もう一段階の壁があります。
それは、自分の中に完璧にコピーした手技に対して、あえて「疑い」を向けることです。
「本当に、この手技が一番効率的なのか?」
「このステップで助手が支えなければならないのは、道具が悪いのではないか?」
このように、完成されたはずのスタイルに「問い」を立て、自らの頭で改良できる人。
この「破」の段階に入った時、外科医は初めて自分のスタイルを確立し始めます。
私が今実践している「ソロ・サージャリー」も、まさにこのプロセスから生まれました。
「なぜ手術には助手が必要なのか?」という当たり前の前提を疑い、一人で完結させるためにドリル、開創器、キュレットをオーダーメイドで作り直す。
この「改良」の積み重ねこそが、技術のブレイクスルーを生むのです。
2028年、その先へ繋ぐために
私は今、2028年の診療報酬改定を見据え、自分の技術を若手に継承することに全力を注いでいます。
しかし、私が教えているのは、単なる「成田渉のコピー」ではありません。
まずは私の手技を完璧に盗んでほしい。
しかし、その次には、私のやり方すら疑い、それを超える「より良い医療」を自分たちで作ってほしい。
そうした「思考を止めない外科医」が育つことこそが、私がいなくなった後の地域医療を守る、唯一の担保になると信じています。
器用さの差は、努力で埋まる。
しかし、思考の深さの差は、志の高さでしか埋まらない。
私はそう、若手たちに伝え続けています。
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