波の音(9)
待ちに待った、冬休み。
駅まで彼を迎えに行く。
張り切りすぎたかな?30分も前に着いてしまった。
私がいつもよりも可愛らしい服装を選んだのは、年下の彼と歩くのに、不自然にならないため。
私が、お化粧をしなかった理由は、年下の彼より、年上だということが、一目でわからないようにするためだった。
彼の乗る、電車が駅に着き、
大きなボストンバッグを片手に、彼が現れた。
コート姿がオトナっぽく見える。
もしかして、私に合わせるために、大人っぽい私服を選んでくれたのかな?
年の差も気にならないかもしれない。
「久しぶり。フェイスタイムしてるから、昨日ぶりだね。」
照れくさそうにハニカム。
「待ってた。」
そう言って、私たちは、歩き始めた。
「駅前のビジネスホテル取ってあるんだけど。荷物置いていい?」
そこから徒歩5分ほどの所にあるビジネスホテルにチェックイン。
私は、部屋の前で待つ。
彼が荷物を置きに入って、数分。
ドアが空き、彼がひょっこりと顔を出す。
「?」
キョトンとした顔で、彼を見ると、
彼は私の腕をつかみ、室内へ。
「会いたかった。」
入って直ぐで、抱きしめられた。
心臓が痛いほど高鳴る。
大胆な行動に出る宇宙くんからは、甘い香り。
香水を、つけているのかな?
爽やかだけど、甘い香り。
私も彼の背中をギュッと抱きしめる。しばらくして、大きく深呼吸。
「じゃ、行こうか。」
そっか、今日は私たちが交際を始めてからはじめてのデート。
お互いに手をつなぎ街を歩くことを楽しみにしていた。
受験生と言うことは、忘れずに。
だけど!ファーストデートのプレミアム感は大切にしようと決めている。
「こういう所に住んでるんだね。都会っ子だね。」
そういいながら、絵画でも観ているように、建物を見る。
「ざわざわしてて忙しいでしょ?」
私がそう言うと、彼はニッコリ笑って、
「波の音だけしかしない町よりいいよ。」
そう言って、ハニカム横顔は、数ヶ月前とは違い、大人びて見えた。
夕方からは、私のエスコートで、中の上くらいのパスタ屋さんでディナー。
彼はどの料理にも感動し、
「魚介は地元の方が鮮度が高いけど、
料理の質はこっちのほうが良いね。」
そう言って、ハニカム。
宇宙くん。将来の夢とかあるのかな?
お店、継ぐのかな?
聞きたいことは、山ほどあるけど、面接のような質問したくないから聞けない。今までだって、そんな話はしてこなかったのだから、きっと、したくないのだと思う。
食事を終えて、
彼をホテルの入り口まで送った。
「じゃ、明日の朝。」
そう言って、繋いだ手を離す。
「ちょい待って。俺が家まで送る。」
私は振り返り、
「ここから家近いし、私のほうが地元だから・・・・・・。」
そう言って、手を振ると、
宇宙くんは、こちらに半歩近づき、
私の腕をつかみ。
「もう少し、一緒にいたい。
もう少し、部屋で話そう。」
と、若干、緊張した声で言う。
いいのかな。
部屋について行って。
一つ屋根の下に一ヶ月以上住んでいて、
最後の日は、朝まで部屋で手を繋いで語り合ったけど、あの時とは違うかもしれない。
恋人になって数ヶ月。
遠距離とはいえ、毎日、画面越しに会って、話して・・・・・・。
会いたい。ジレンマを募らせてきた。
やっと会えて、二人きりの夜。
もしかしたら。
と、考えるけど、あの頃より不安はない。
だって、私たちは恋人同士だから。
私も彼に求められたいと、期待している。
さっき、抱きしめられた時。
キスしてくれるのかなって、待ってしまったけど、叶わなかった。
部屋に行くと、もしかしたら。
そんな淡い思いを抱き。
「わかった。
じゃ、コンビニでお菓子とか買って行こう。」
そう言って、彼の手をもう一度握った。
彼もニッコリ微笑んで、安心の表情で頷いた。
