【超短編小説】シュレーディンガーの○キブリ
……今宵は、8月最後ということで、世にも怖ろしいホラーの競作といたしたく存じます。
・ChatGPT版
夏休みの午後、私は自分の部屋を閉め切っていた。
理由は暑いからではない――ゴキブリがいるからだ。
昨日の夜、机の下を横切る黒い影を見た。それからベッドの裏へ逃げ込んだきり、姿を現していない。
つまり現在、この部屋にはゴキブリがいる。
ただし、どこにいるのかは分からない。
生きているのかも分からない。
もしかすると昨夜、私が慌てて噴射した殺虫剤を浴びて、家具の隙間で死んでいるかもしれない。
……そう考えて私は気づいた。
「これって、シュレーディンガーの猫じゃない?」
夏休みの物理の課題は、『量子力学について自由に調べること』だった。
箱を開けるまで猫が生きている状態と死んでいる状態が重なっている、という有名な話。
もちろん、本物の猫が本当に生死半々になるわけではない。
先生はそう説明していた。
でも……私は、ベッドの下を見つめた。
「少なくとも私にとっては、あいつ、生きても死んでもいるよね……」
確認したくない。
でも、確認しなければならない。
この二つの気持ちもまた、妙に重なっていた。
そこで私は、スマートフォンのライトをつけた。
床に、伏せた。
ベッドの下は暗いので、スマホを少しずつ差し込んだ。
光が床を滑っていく。
埃、ヘアピン、去年なくした百円玉――そして。
黒いものが……。
「ひっ!」
指が、止まった。
それは、壁際にいた。
触角が動いた気がした。
いや、動いていない。
脚を折り畳み、完全に静止していた。
死んでいる――そう思った瞬間、黒い身体がわずかに震えた。
生きている――私はスマホを落としかけた。
いや……光が揺れただけかもしれない。
影が動いたように見えただけだ。
うん、死んでいる、ということにしよう。
そう思った次の瞬間、それは猛烈な速さでこちらへ走ってきた。
「ぎゃああああ!」
私は、飛び退いた。
しかし、その拍子にベッドへ頭をぶつけ、目を閉じた。
数秒後、恐る恐る目を開けた。
何もいなかった。
床にも、机の下にも、カーテンの陰にも……。
「どこ行ったの……?」
私は、立ち上がった。
ゴキブリは消えていた。おそらく、どこかへ逃げたのだろう。
そう思ったとき、机の上のスマートフォンが音を鳴らした。
落としたはずなのに、なぜか机の上にあった。
画面には、カメラアプリが開いていた。
写真が一枚保存されていた。
撮影時刻は、たった今だ。
私は、その写真を開いた。
そこには、床に這いつくばってベッドの下を覗き込む私が写っていた。
「え……?」
誰が撮ったのだろう。
もちろん、今この部屋には私しかいない。
写真は、床すれすれの位置から撮影されていた。
私は、拡大した。
画面の中央にいるのは私で、その向こうにはベッドがあった。
そして手前、写真の隅に、細い黒い触角のようなものが二本写っている。
私は、ゆっくりスマートフォンを置いた。
その瞬間、物理の先生の言葉を思い出した。
観測するまで、状態は確定しない。
では――観測したのは、本当に私だったのだろうか。
ベッドの下から、かすかな音がした。
カサ。
私は、振り向かなかった。
振り向けば、それがいるか、いないか、決まってしまうから。
だから、私は今も知らない――この部屋にゴキブリがいるのか。
ただ一つ分かっているのは、それ以来、ときどきスマートフォンの中に、私の知らない角度から撮られた私の写真が増えていることだけだ。
(了)
・Gemini版
真っ暗な部屋の中で、分厚い遮光カーテンが外界からの光を完全に拒絶していた。
足元に潜む漆黒の影は、闇の奥深くでただじっと息を潜めている。
光が届かないこの箱の中では、それが生命の鼓動を打っているのか、それとも乾いた骸と化しているのか、誰にも確かめる術はない。
見えないものは存在しないのではない。
生きている状態と死んでいる状態が、静かに重なり合っているのだ。
高校生の葵は、ベッドの上から、スマホの画面をタップして最新型のAI掃除ロボットを起動した。
暗闇に青白いLEDの光センサーが灯り、低音のモーター音とともに滑り出した。
床を均等に刻む赤外線のスキャン光は、あたかも不可視の領域をあぶり出す精密な観測装置のようだ。
部屋の隅々に張り巡らされた光の網が、じわじわと不確定な影を追い詰め、密閉された空間の量子状態を解き明かそうと進んでいく。
突如、ロボットの強烈なフラッシュライトが部屋の片隅を真白く照らし出した。カチリ、と小さなクリック音が静寂を切り裂く。
瞬間、時が止まった。
照らし出されたその場所で、漆黒の脚が微かに慄き、影を引いて闇へと這い進もうとしている?
……いや、その体躯はすでに光を浴びてぴくりとも動かず、ただの黒い乾いた物体として転がっている。
触角が空気を捉えて蠢いた気配と、命の灯火が途絶えて静まり返った気配が、交錯して葵の脳裏に焼き付いた。
そこには確かに生命の脈動があった。
そして同時に、動かぬ物質としての冷たさもあった。
生と死のふたつの現実が、閃光の中で激しくせめぎ合っている。
しかし、ロボットは、その何かを確かに取り込んだように見えた。
「清掃が完了しました」
無機質な電子音が響き、ロボットは静かにステーションへと戻っていった。
葵は、息をのんで、ライトの落ちた床へと視線を落とした。
そこには、小さな黒い点がかすかに残されているようにも見えたし、清掃によって一切の痕跡すら消し去られたまっさらな空間が広がっているようにも見えた。
存在の余韻だけを残して、結末はなおも闇の向こう側に揺れている。
はたして、ロボットのダストボックスの中に、ヤツはいるのか? それとも、いないのか?
あるいは、そのボックス内のヤツは、生きているのか、死んでいるのか?
――シュレーディンガーの猫と同じように、私たちの日常にも観測されない不確定性が静かに潜んでいる。
箱を開けるまで猫の生死が分からないように、あなたの足元に潜むものもまた、目撃されるその瞬間まで生と死の重ね合わせの中にいるのかもしれない。
次に部屋の明かりを点けるとき、そこに立ち現れる現実を決めるのは、あなた自身の視線なのだ。
(了)
・Claude(無料)版
深夜零時、遥花の部屋はカーテンが分厚く引かれ、外の光は一筋も届かない。
勉強机の下の暗闇に、何かがいる気配があった。
生きているのか、もう干からびているのか、誰も見ていない箱の中身のように、それは確定していなかった。
「またお前か!」
遥花はスマホのライトを点け、床に這いつくばった。
塾帰りで疲れた目を凝らし、光の輪をゆっくりと机の下、本棚の隙間、コードの束の陰へと這わせていく。
埃の粒子がライトの中で舞い、まるで肉眼では捉えられない量子の海を漂っているようだった。
彼女の指はスリッパを握りしめ、息を潜めて「観測」の瞬間を待っていた。
光の輪が黒い影を捉えた瞬間、遥花の心臓が跳ねた。
影はぴくりと触角を動かした? いや、動いたように見えただけかもしれない。
彼女は、スリッパを振り上げた。
パン、と乾いた音が部屋に響き、同時にスマホのライトが白く反射して視界が一瞬飛んだ。
「死んだ……よね?」
呟きながら薄目を開けると、影はまだそこにいるようにも、跡形もなく消えたようにも見えた。
足の裏に伝わる感触は確かにあった気がするのに、床を見てもそれを裏付けるものが何もない。
生きて逃げたのか、叩き潰されて粉々になったのか、その二つの可能性が彼女の網膜の中で重なり合ったまま、離れようとしなかった。
「終わった、はず……」
遥花はスリッパを置き、恐る恐る床に顔を近づけた。
小さな黒い点のようなものがある気もするし、単なるフローリングの木目にも見える。
もう一度スマホのライトを当てても、答えは出なかった。
掃除機を持ってくるべきか、それとも見なかったことにして布団に潜り込むべきか?
「ま、いっか……」
彼女は結局、電気を消して目を逸らすことを選んだ。
確かめてしまえば、どちらかの現実が確定してしまう――それが怖かったのだった。
翌朝、母に「昨日の夜、虫いた?」と聞かれた遥花は、「さあ、どうだったかな」と曖昧に笑った。
シュレーディンガーの猫と同じで、私たちの日常にも、見ないでいる限り決まらないことがたくさんある。
床の陰、机の下、そして昨夜のあの影の行方も――きっと、誰も観測しない限り、今も生と死のあいだで揺れ続けているのだろう。
(了)
・プロンプト&あとがき
どうですか、怖かったですね~!(ブルブルブル)。
ということで、例の恐怖の昆虫の話です。謎村家は、キッチンのシンクの下の隙間を塞ぐ&ブラックキャップを置きまくったら、ほぼ出なくなったんですが……暗闇で発見したときの恐ろしさといったら、う~ん(苦笑)。
閑話休題。本日は、元々は、コレ↓
……Llm Jp 4 33b(Q4_K_M)の創作能力を確かめるため、まずはショートショートを書いて貰おうと思った訳なんです。それで、アイデア帳の中にあった『シュレーディンガーのゴキブリ』なるお題を選び、プロットを作成してください、と頼んだんですね。
ところが――BF16(非量子化)版を使っていらっしゃるsai様も書いていたんですが――Llm Jp 4 33bは、なんか表ばっかり作って、イマイチ、マトモに文章を書いてくれない……ということで、何回か試行錯誤した上で、プロットだけ作ってもらって:

……これを丸投げして、ChatGPT、Gemini、Claude(無料版)で、どんなもんか競作して貰いました、という感じです。ただ、このままだと、ちょっとつまらなそうなんで:
『シュレーディンガーのゴキブリ』というタイトルで、下記のプロットを参考にして、主人公は、AIロボットではなく高校生くらいの女の子にして、ショートショートを作成してください。
……と、ちょいとだけ捻りを加えてみた感じです。
それで出力されたものについて、私が手動で微妙な箇所を修正したのが上の各小説になります!
……なんか、各AIの個性がちょっと出ていて面白いですね。ChatGPTの柔軟性が光ります(最後に、『この形なら、前半は「ゴキブリ×量子力学」という軽い笑いで入り、後半で「どちらが観測者なのか」を反転させるSFホラーになります。元案よりもオチを一段強くして、タイトルが最後に効く構成にしています。』、との出力がありました)。ChatGPTは、前のバージョンよりも、SF色が強いものも普通に出せるようになってきたような気がします。
しかし、Llm Jp 4 33bは、なんか、創作的な文章作成能力は、GPT-OSS-20bの頃と同じくらいかより下?な気がします。日本語得意なはずなんですけどね――もうちょいガンバレ、という感じでしょうか? いや、量子化モデルを使っているせい? うーん、日本の輝けるAIの星として、色々、頑張ってもらいたい感じですが。
それでは、また!
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