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スミレちゃんの物語 第4話:正しい人になるよりも

スミレちゃんは
日中は保育園に通っています。

保育園のエミ先生はいつも

「先生の言うことを
よく聞いて下さいね」と言います。

スミレちゃんは
エミ先生が大好きです。

だから
エミ先生の言うことを
素直に聞いています。

「正しいことをしましょう。

逆に
いけないことは
してはいけません。

みんな
約束できるかな?」

いつもの
エミ先生とのお約束です。

「はい!」

他の園児に混じって
スミレちゃんも元気に返事しました。

さぁ!
一日の始まりです。

スミレちゃんは
ゆずきちゃんとおままごとをして
遊んでいます。

その隣で
怪獣のおもちゃで遊んでいるのは
ヒロト君です。

そこに
別の男の子がやってきました。

すると
急にヒロト君の持っている
怪獣のおもちゃを取り上げて
勝手に遊びだしたではないですか。

「何するんだよ!」

ヒロト君はその子に
怒ります。

しかし
相手の男の子は

「がおー!がおー!」と言って
自分の世界に入ってしまい
全く耳を貸しません。

スミレちゃんもその様子を見て
おままごとから抜けて

「止めなよ!
おもちゃを返してあげて!」と
相手の男の子に注意しました。

すると
相手の男の子は
「嫌だ」と言って
拒否してきました。

ヒロト君は
怪獣のおもちゃを取られて
しょんぼりしています。

何て可哀想な
ヒロト君。

明らかに
相手の男の子が悪いよね。

正しいことをしましょう。

エミ先生の言葉を思い出しました。

「おもちゃをヒロト君に
返してあげて!
いきなり取るなんてひどい!」

スミレちゃんは
再び相手の男の子に言いました。

「スミレちゃん
もう、いいよ」
ヒロト君は諦めているようです。

「良くないよ。
だってひどいじゃない。
ヒロト君は悪くないもん」

「うるさいな。
せっかく怪獣ごっこをしているのに。
あっち行ってよ」
相手の男の子も引き下がりません。

「エミ先生
言っていたでしょう?
正しいことをしましょう。
悪いことをしてはいけませんって。

君がしていることは
どっちかな?」
スミレちゃんは問いただします。

そう尋ねられて
相手の男の子は決まりが悪くなりました。

この子もどうやら
エミ先生が大好きみたいです。

「あぁもう!
分かったよ!」
そう言って男の子は
怪獣のおもちゃをヒロト君に
返しました。

「ありがとう、スミレちゃん。
怪獣のおもちゃを取り返してくれて」

ヒロト君は
嬉しそうな顔でスミレちゃんを見ます。

「良かった」
スミレちゃんはそう言って
おままごとに戻りました。

スミレちゃんは
正しいことが出来た自分を
褒めたい気分でした。

あれは明らかに
悪いことでしたから
スミレちゃんが注意をしたのは
当然のことです。

偉いね
スミレちゃん。

すると
あれれ?
どうしたのかな
すみれちゃん。

何か気になるみたいだね。
テーブルの端で1人
絵を描いている女の子がいるね。

最近
引っ越してきて
入園してきた女の子だね。

その子を見て
スミレちゃんはどう思ったのかな?

ゆずきちゃんも
気になっているみたいだね。

1人で絵を描いている女の子。
他の子に混じることが出来ないでいるのかな?

「おままごとをしているの。
一緒に遊ぼう?」

ゆずきちゃんが
その女の子に声を掛けました。

すると
「いい。お絵かきしていたい」
そう断って
女の子は絵を描き続けました。

すると
ゆずきちゃんは
「混ぜてあげるって言っているのに
なんか嫌な感じ」と言って
プイッと頬を膨らませて
その場を離れました。

どうやら
おままごとに混ぜてあげようとしたのに
断られたのが嫌だったみたいです。

ゆずきちゃんなりの
女の子への気遣いだったのでしょう。

期待外れの反応をされて
ゆずきちゃんは不機嫌です。

相手の女の子は
少しムッとした表情をしましたが
すぐに絵に集中し直しました。

その様子を見て
スミレちゃんの中の
「正しい」が混乱しました。

ゆずきちゃんは
女の子が一人絵を描いているのが
可哀想に見えて
おままごとに誘おうとしたんだよね。

それは
ゆずきちゃんの優しさだから
正しいことだよね。

でも
女の子は断っちゃったから
ゆずきちゃんが怒っちゃって。

それは
相手の女の子が悪いのかな?

それにしても
相手の女の子は
何で断っちゃったのかな?

どちらが悪いのか
スミレちゃんは分かりません。

スミレちゃんの心は
もやもやしていました。

正しいって
何なんだろう?

どうやら
正しさというものは
複雑なものらしいです。

お昼ご飯の時間が終わって
午後に入りました。

その女の子は
変わらず絵を描き続けています。

何となく気になって
その子の描いている絵を覗いてみました。

すると
青空に虹が架かっていて
その虹の架け橋を犬や猫など
色んな動物が歩いて行く絵のようでした。

「なあに?」
スミレちゃんに覗かれていることが
気になったみたいです。

「なんか…
凄いね!
虹の絵?」

「そうだよ。
虹とね、犬と猫ときりんと
色んな動物が歩いて行く絵。
お絵かきが好きだからいつも描いているの」

「お絵かきが好きなの?」

「そう」
女の子はそう言って
他にも色んな絵を見せてくれました。

本当に
絵が好きみたいだね。

あぁ!
だからあの時
おままごとのお誘いを断ったんだね。

おままごとよりも
お絵かきを続けていたいから。

この子に
悪気は無かったようです。

この場合
どうなんでしょう?

ゆずきちゃんも
この子も
悪くはないみたいだね。

じゃあ
どちらが正しいの?

おままごとに誘ったのも
お絵かきを続けたのも
どちらも悪くないよね。

こういうことも
あるみたいだね。

何だか
不思議な感覚です。

「ねぇ、一緒にお絵かきしよう!」
スミレちゃんは
その子の絵の世界に興味を持ちました。
一緒に探検してみたくなったのです。

その子は
びっくりした顔をしましたが
「いいよ」と言って
色鉛筆を貸してくれました。

一緒に絵を描くことになった二人。
一枚の紙に描こうかね?

女の子はお家を一つ描きました。

スミレちゃんは
お家のお庭にお花を描きました。

女の子はお花の上に
蜂や蝶を描きました。

スミレちゃんは
お花に水をジョーロであげている
女の子を描きました。

そうやって
二人で絵を描いていく内に
何だか楽しくなってきたみたいだね。

二人とも
いい表情をしているよ。

「私、夏実と言うの」
女の子は自己紹介をしました。

「私はスミレちゃん。
よろしくね」
スミレちゃんも自己紹介します。

「また、一緒に絵を描こうね」

「うん」

二人は
お絵かき友達になったようです。

友達が増えたね
スミレちゃん。

そのことを
迎えに来たお母さんにお話ししました。

お母さんも
「良かったね」と言っています。

スミレちゃんは
ふと
疑問に思ったことを聞こうと思いました。

「ねぇ、お母さん。
ゆずきちゃんも
夏実ちゃんも
悪くはないよね?

どっちも
正しいよね?」

すると
お母さんは頷きました。

「そうだね。
どっちも正しいね。

それぞれの理由があったよね。

だからね
正しさにこだわる必要は
ないと思うよ」

「どういうこと?」

「正しくいようとするよりも
色んな人達の色んな気持ちを知ること。

みんなが幸せでいるために
出来ることを考えるのが
何よりも大事なの」

つまり
正しさというのは

「何だかよく分からないね。
正しいって複雑だね」

「そう、複雑だね」

お母さんはそう言って
笑いました。

「そうだね。

人はたまに
間違ったことも失敗もする。

良かれと思ったことが
相手にはそうでないこともある。

だからね
そこまで正しく生きようと思わなくて
良いと思うのよね」

「正しく生きなくて良いの?」

「何だろうね…

正しくいるよりも
スミレちゃんが
こうしたい!と思ったことを
どんどんやって欲しいな。

お母さんは
スミレちゃんが正しい人になるよりも
スミレちゃんが
こうなりたいと思った人になって欲しい。

スミレちゃんは
正しい人じゃ無くて
スミレちゃんになりに生まれてきたんだから」

スミレちゃんになりに
生まれてきた。

お母さんの言葉が
スミレちゃんの心に温かくしみ込みます。

正しい人でいることよりも
自分の気持ちに従って生きること。

それだけで良いと
お母さんは言っているようです。

スミレちゃんは
スミレちゃんで良い。

だから
ゆずきちゃんも
ゆずきちゃんで良いし

夏実ちゃんも
夏実ちゃんで良い。

そう思えたことで
スミレちゃんの心の世界がまた
広くなったみたいだね。

ーーーーーおわり

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