上条デイズ|#3東京駅
上条は、東京駅の皇居側出口を出ると、
歩く速度が少しだけ落ちる。
皇居前広場には、
白いドレスと黒いタキシード姿がある。
カメラの前で笑う二人が、あふれている。
周りの人たちは、慣れた様子で避けて通る。
カメラマンの声が響く。
ポーズを変えるたびに、ドレスの裾が風に揺れる。
上条は、視線を外すタイミングを探す。
見てはいけないわけじゃない。
ただ、目に入ると、別の顔が浮かんでしまう。
娘のウエディングドレス姿が、一瞬だけ浮かぶ。
まだ先だと、自分に言い聞かせる。
その「まだ」が、思ったより近いことも、知っている。
そんな思いを振り切るように、東京駅に戻るけど、
駅ではなく、KITTEのビルに入る。
エレベーターで上に上がり、屋上庭園に出る。
庭から見る東京駅は、整っている。
赤レンガが、きれいに並んでいる。
何度来て見ても、悪くない。
写真を撮るでもなく、
長居をするでもなく、
上条は、しばらく手すりにもたれて立つ。
ここから見える東京駅は、
駅という役目を果たしているが、
駅ではない役目も果たしている。
ポケットの中の、スマートフォンは少し重い。
上条は、それを出さずに、もう一度だけ駅を見た。
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