④資産形成って何をすればいいですか?商社パーソン1年目からの質問
中東情勢は、まったく落ち着く気配がない。
イランによる機雷が設置されたとの報道もあり、船社はホルムズ海峡を通過できない。保険も付保できない状況だ。途中の港で貨物を揚げるか、そもそもオーダー自体をキャンセルするか。日本側では船積み前の貨物が山のように滞留している。完全にサプライチェーンが詰まり始めていた。
エネルギー部隊も相当厳しそうだ。代替産地からLNGや原油を調達しなければならない。電力会社、燃料を必要とする企業、海外サプライヤー。その間に挟まれて、各部署は忙殺されている。
私も打開策を考えながら、PCの画面を睨んでいた。
そのとき、視界の端を影が横切った。
後輩だった。
後輩はニヤニヤしながら言う。
「せ・ん・ぱ・い」
私は顔を上げる。
後輩は指を一本立てた。
「本日はウェンズデーです」
少し芝居がかった声で続ける。
「何の日だかわかりますか?」
私は少し考える。
後輩は答えを待たずに言った。
「ミリオネア・黄金郷への道の講座です!」
私は思わず笑った。
「そんな大げさな名前だったか?」
後輩は頷く。
「私はそう呼んでいます」
私は椅子から立ち上がった。
「仕方ないな。じゃあ会議室に行こうか」
会議室に入ると、私はホワイトボードの前に立った。
マーカーを取り、少し考えてから言った。
「ちなみに、私の話をしておこうか」
後輩
「先輩のですか?」
私は苦笑した。
「もちろん。君の反面教師としてな。しくじり先生としてきいてくれ」
ホワイトボードに小さく年表を書いた。
20代:資産ほぼゼロ
後輩は目を丸くした。
「え、意外です」
私は肩をすくめる。
「君とは違ってな」
マーカーを回しながら言った。
「業務が忙しいのを言い訳にして。海外旅行、ガジェット、時計。合コン、異業種交流会。飲み会、食事会、婚活etc etc」
「まあ、極端に散財していた。資本主義の罠にまんまとはまっていた。うぬぼれていたただのアホだ」
後輩
「リアルですね…」
私は続ける。
「だから30歳のとき、さすがにまずいと思った」
ホワイトボードに書く。
30歳(2013)
インデックス投資開始
後輩
「何に投資したんですか?」
私はマーカーで書いた。
eMAXIS Slim オールカントリー
後輩
「おお。オルカン!」
私はホワイトボードに続けて書いた。
毎月20万円積立
後輩
「月に最低20万円!」
「生活防衛資金(3カ月分)以外は、ほぼ全部オルカンに突っ込んだ。入金力全開だった。今思えばリスクを取りすぎだったと思う」
横に年数を書く。
2013 → 2025
私は言った。
「12年間だ」
後輩
「それで今いくらなんですか?」
私は計算を書いた。
20万円 × 12か月 × 12年
= 2,880万円(元本)
そして続けて書く。
年平均リターン 約5%(仮定)
最後に丸をつける。
約3,900万円
後輩
「えっ」
私は振り返る。
「40歳前半(2025)で」
マーカーで丸をつけた。
約3,900万円
後輩
「すごいですね!」
私は首を振る。
「いや」
ホワイトボードの上を指す。
22歳スタート
「君がこれをやれば。もっと早く大台の1億円に届く」
後輩はホワイトボードを見つめている。
私は続けた。
「私は30歳スタート」
「君は22歳スタート」
「この8年はとてつもなく大きい」
後輩
「そんなに違うんですか?」
猫田
「複利の世界では」
「時間が最大の資産だからな」
猫田はホワイトボードを見ながら、ふと思い出したように言った。
「そうだ」
マーカーを取り、さっき書いた数字の横にもう一つ線を引く。
後輩
「どうしました?」
猫田
「さっきのは月20万円積立だけの話だった」
後輩
「はい」
猫田は新しく書く。
ボーナス投資
そして数字を書く。
300万円 × 12年
後輩
「結構いきますね」
猫田
「元本だけなら」
計算を書く。
300万円 × 12 = 3600万円
後輩
「おお」
猫田
「でもこれも投資だからな」
マーカーで書く。
+複利
猫田
「仮に年5%で運用できたとすると」
少し計算してから数字を書く。
約4,800万円
後輩
「えっ」
猫田
「ボーナス投資だけで」
マーカーで丸をつける。
約4,700〜4,800万円
後輩
「すごいですね」
猫田
「しかもこれは。月20万円積立とは別だ」
後輩
「つまり」
猫田
「さっきの約3900万円に加えると」
計算を書いた。
3900万円
+
4800万円
=
約8700万円
後輩
「えっ…」
猫田は笑った。
「12年間でな」
マーカーで大きく書く。
約8700万円
後輩はしばらくホワイトボードを見つめていた。
そしてぽつりと言った。
「先輩」
猫田
「うん?」
後輩
「資産形成って。派手な投資じゃなくて入金力と時間ですね」
猫田は頷いた。
「その通り」
一行書いた。
入金力 × 複利 × 時間
猫田
「これが資産形成の正体だ」
少し笑って付け加えた。
「そして」
マーカーで丸をつける。
22歳スタート
猫田
「これが一番の武器だ」
「そういえば、もう一つ言わなければならない資産があるな」
後輩
「なんですか?」
猫田はマーカーを手に取り、ホワイトボードの端に新しく書いた。
持株会
後輩は少し身構えた。
「あまりおすすめしないって言ってましたよね」
猫田は頷いた。
「基本的にはそう思っている」
少し考えてから続けた。
「ただな。昔、海外研修に行く前に、まとまった資金を持株会で拠出したことがある」
後輩
「へえ」
猫田
「当時は若かったし、あまり深く考えていなかった。とりあえず会社の株を買っておこう、くらいの感覚だった」
そして次の言葉を続けた。
「そのあとだ」
ホワイトボードに書く。
リーマンショック
後輩
「ああ…金融危機ですね。きいたことあります」
猫田
「2008年以降は」
マーカーで横線を引く。
世界株・日本株 停滞
猫田
「総合商社株も含めて、日系株は長い間低迷していた」
後輩
「そんな時代あったらしいですね」
猫田
「だからその持株会も。記憶から消去。完全に忘れていた」
後輩
「放置ですか?」
猫田
「そう」
ホワイトボードに書く。
完全放置
猫田
「その間、配当だけ自動で再投資されていた。ところが最近だ」
ホワイトボードに書く。
株高
猫田
「安倍政権路線を引き継ぐ、高市政権になって、日本の株式市場はかなり強いだろう?」
後輩
「確かに」
猫田
「その間に配当再投資。これが雪だるま式に増えて」
最後に数字を書いた。
現在 2,200万円
後輩
「えっ!?」
猫田
「完全に放置していた資産だ。ラッキーなもの」
後輩
「株ってすごいですね…」
猫田は苦笑した。
「まあ。意図していないラッキーだけれども。さっき君に持株会はおすすめしないと言ったけど。これは現時点で相場が良くてラッキーだっただけだ。紙くずになる可能性だった否定できない」
後輩
「なるほど」
猫田
「だから基本戦略は変わらない」
ホワイトボードを指す。
コア資産 → インデックス投資
そして横に小さく書いた。
持株会 → サブ
猫田
「持株会はあくまでサブ資産」
「メインは世界分散」
後輩はホワイトボードを見ながら頷いた。
コア:オールカントリー
サブ:持株会・個別株
そして少し笑った。
「ただな。投資の世界はときどき、こういう偶然のラッキーもある」
後輩は腕を組みながら言った。
「なるほど…でも先輩」
猫田
「うん?」
後輩
「それを再現するのは難しいですよね」
猫田は頷いた。
「その通り」
そしてホワイトボードの真ん中を指した。
長期
分散
低コスト
猫田
「再現できるのは、こっちだ」
猫田はホワイトボードを見つめながら、ふと思い出したように笑った。
・オールカントリー
・持株会
・積立
・配当再投資
いくつもの数字が並んでいる。
後輩はその数字を一つ一つ目で追っていた。
やがて小さく言った。
後輩
「先輩…」
猫田
「うん?」
後輩
「今の話を全部合わせると。資産ってどれくらいなんですか?」
猫田は一瞬だけ考えた。
それからマーカーを手に取り、ホワイトボードの空いたスペースに書いた。
インデックス投資
約8,700万円
持株会
約2,200万円
安全資産
約500万円
合計
約1.1億円
後輩
「……」
目を丸くして固まった。
猫田は振り返って、少し笑った。
猫田
「だれにも言うなよ」
後輩
「え?」
猫田は小さく声を落とした。
「あとで秘密保持契約を巻こう」
後輩は吹き出した。
「なんですかそれ」
猫田は肩をすくめた。
「冗談だ」
「さて」
少し苦笑する。
「私のケーススタディが、だいぶ長くなりすぎてしまったな」
後輩は笑った。
「でもめちゃくちゃ参考になります」
猫田はホワイトボードの左上に、新しく整理を書いた。
① 人生のビジョン・夢
② 現実の分析・ポジションの把握
③ ギャップの把握・理解
④ お金の設計・キャリアの設計
⑤ 資産形成の具体的アクション
猫田はマーカーで①〜③に線を引いた。
猫田
「ここまでは先週までに終わっている」
後輩
「はい」
猫田
「人生のマインドマップを作って」
「現状の年収、資産、キャリアを整理して」
「目標とのギャップを見た」
後輩
「そうでしたね」
猫田は④を丸で囲んだ。
④ お金の設計・キャリアの設計
猫田
「今日はここに触れていこう」
後輩は椅子を少し前に引いた。
「はい」
そして少し笑いながら言った。
後輩
「クイックかつコンパクトにお願いします」
猫田は吹き出した。
「商社パーソンらしいな」
そしてホワイトボードに新しく書いた。
年収 → 生活費 → 投資 → 資産
猫田
「お金の設計というのは実にシンプルだ」
マーカーで順番に指す。
猫田
「まず年収がある」
「そこから生活費を引く」
「残ったものが投資資金」
「それが積み上がると資産(金融資産)になる」
後輩
「なるほど」
猫田
「ほとんどの人はここで順番を間違える」
ホワイトボードに書く。
年収 → 生活費 → 残りを投資
猫田
「これだと資産は増えにくい」
後輩
「確かに」
猫田はもう一つ書いた。
年収 → 投資 → 残りで生活
猫田
「こっちだ」
後輩
「つまり、先取り投資ですね」
猫田
「その通り」
猫田は続けて書いた。
積立投資
猫田
「給与日に自動で投資する」
「余ったお金を投資するんじゃない」
「最初に投資する。天引きをする。言い訳できないように」
後輩
「なるほど」
猫田はさらに書く。
キャリア=入金力
後輩
「入金力」
猫田
「投資の世界では非常に重要な概念だ。特に労働者の我々にとっては」
ホワイトボードに給与レンジを書く。
20代 500〜1,400万円
30代 1,400〜2,200万円
40代 2,600万円~
50代 3,000万円~
猫田
「キャリアが伸びれば年収も上がる」
「年収が上がれば投資額も増える」
マーカーで矢印を書く。
キャリア → 入金力 → 資産
後輩
「なるほど」
猫田は振り返る。
「つまり」
ホワイトボードにまとめを書いた。
① キャリアで入金力を上げる
② 生活費をコントロールする
③ 先取り投資をする
猫田
「これがお金の設計だ。黄金のレシピだ」
後輩はノートを取りながら言った。
「かなりシンプルですね」
猫田
「シンプルだ。でもな。ほとんどの人が出来ていない
後輩
「確かに」
猫田は最後に⑤を丸で囲んだ。
⑤ 資産形成の具体的アクション
猫田
「そして最後がここだ」
後輩
「いよいよですね」
猫田
「ここはもう君も知っている」
マーカーで三つ書いた。
① オールカントリー積立
② ボーナス一括投資
③ 長期保有
猫田はマーカーを置いた。
「これで完成だ」
後輩はホワイトボードを見ながら言った。
「先輩」
猫田
「うん?」
後輩
「資産形成って、想像していたよりシンプルですね」
猫田は頷いた。
「そうだ。シンプルなことを、長く続ける」
ホワイトボードの真ん中を指す。
長期 × 分散 × 低コスト
猫田
「それが答えだ」
後輩はノートを取りながら言った。
「かなりシンプルですね」
猫田
「シンプルだ」
少し笑う。
「でもな。ほとんどの人が出来ていない」
後輩は腕を組んだ。
「確かに。でも、なんでなんですか?」
猫田はマーカーを取り、ホワイトボードの端に三つ書いた。
①生活水準のインフレ
②短期思考
③金融業界の構造
後輩
「生活水準のインフレ?」
猫田は頷いた。
「給料が上がると」
マーカーで矢印を書く。
年収UP → 家賃UP → 車、時計、外食→ 旅行 → 消費
猫田
「人は自然と生活水準を上げてしまう。意図しないで生活水準が上がってします」
後輩
「確かに…」
猫田
「そうすると」
ホワイトボードに書く。
投資余力 = 増えない
猫田
「年収1,000万円以上でも資産ゼロの人は普通にいる」
後輩
「ありそうですね」
猫田は次の項目を指した。
短期思考
猫田
「投資というのは時間が必要だ」
ホワイトボードに書く。
10年
20年
30年
猫田
「でも人間は。今すぐ儲けたい。だから短期売買に走る」
後輩
「確かにSNSでもそういう話ばかりですね」
猫田は最後の項目を指した。
金融業界の構造
後輩
「どういうことですか?」
猫田は笑った。
「金融機関は慈善事業じゃない」
ホワイトボードに書く。
手数料ビジネス
猫田
「売買が多いほど儲かる」
マーカーで矢印を書く。
売買 → 手数料
猫田
「でもインデックス投資はどうだ?」
後輩
「売買しませんね」
猫田
「そう。自動積立で買って完全に長期間放置。金融機関からすると、あまり儲からない商品なんだ」
後輩
「なるほど…」
猫田はまとめを書いた。
生活水準UP
短期思考
金融業界の構造
猫田
「この三つがあるから。シンプルな投資なのに、続ける人が少ない」
後輩はしばらくボードを見つめていた。
そして小さく言った。
「確かに…だから先輩の話は、逆に合理的なんですね」
猫田は肩をすくめた。
「合理的というより。再現性が高い」
そしてホワイトボードの真ん中を指した。
長期 × 分散 × 低コスト
猫田
「これだけは、誰でも再現できる」
後輩はノートを取りながら言った。
「かなりシンプルですね」
猫田
「シンプル。でもな、ほとんどの人が出来ていない」
後輩は腕を組んだ。
「確かに。でも、なんでなんですか?」
猫田はマーカーを取り、ホワイトボードの端に三つ書いた。
①生活水準のインフレ
②短期思考
③人間の本能
後輩
「人間の本能?」
猫田は頷いた。
「そう」
少しゆっくり説明する。
「人間はもともと狩猟採集で生きてきた」
後輩
「はい」
猫田
「何万年も前の人類は」
ホワイトボードに簡単な図を描く。
今日食べる → 生き延びる
猫田
「目の前の食料を確保することが最優先だった」
「明日より今日なんだ」
後輩
「なるほど」
猫田
「だから人間の脳は」
マーカーで書く。
短期志向
猫田
「今すぐの快楽」
「今すぐの利益」
「今すぐの安心」
「これを強く求めるようにできている」
後輩
「確かに」
猫田
「投資はその逆だ」
ホワイトボードに書く。
今の消費を我慢 → 将来の利益
猫田
「つまり、人間の本能に逆らう行為」
後輩
「なるほど…」
猫田はさらに続けた。
「もう一つある」
ホワイトボードに書く。
刺激
猫田
「人間は刺激が好きだ」
後輩
「確かに」
猫田
「株が急騰」
「テンバガー」
「仮想通貨10倍」
マーカーで書く。
ドーパミン
猫田
「脳はそういう刺激に反応する」
後輩
「分かります」
猫田
「でもインデックス投資はどうだ?」
後輩
「地味ですね」
猫田は笑った。
「毎月積み立て」
「上がっても下がっても買う」
「15年、20年超ホールドする。成長をひたすら待つ」
猫田
「刺激ゼロだ」
後輩
「確かに退屈です」
猫田はホワイトボードにまとめを書いた。
人間の本能
=短期志向+刺激志向
猫田
「だから。長期投資を続けられる人は少ない」
後輩
「なるほど」
猫田
「だからこそ」
マーカーで大きく書いた。
長期
分散
低コスト
猫田
「これを淡々と続ける人は。時間の経過とともに雪だるま式に複利で資産が増えていく」
後輩はホワイトボードを見ながら静かに言った。
「つまり、投資は知識よ人間の本能との戦いなんですね」
猫田は頷いた。
「その通り」
後輩はホワイトボードを見ながら静かに言った。
「つまり」
猫田
「その通りだ」
そしてマーカーを取り、ホワイトボードに新しく書いた。
仕組み化
後輩
「仕組み化?」
猫田
「人間の本能を、意志の力で抑え込むのは難しい。意思やモチベーションで投資にのぞむのは実はエネルギーがいる」
マーカーで小さく脳の絵を描く。
猫田
「脳のキャパシティは限られている」
「日々の仕事、意思決定、人間関係」
「それだけで相当使っている」
「月に一回投資をする活動にも脳のエネルギーを使う」
「忘れることもある」
後輩
「確かに」
猫田
「そこにさらに」
ホワイトボードに書く。
相場判断
猫田
「これを毎日考えるのは現実的じゃない」
後輩
「そうですね」
猫田
「だから大事なのは本能を設計や仕組み化で抑えること」
後輩
「設計?」
猫田
「そう」
ホワイトボードに三つ書く。
①自動積立
②ボーナス投資
③長期保有
猫田
「例えば給与日に自動で積立する」
「考えずに投資が実行される」
後輩
「なるほど」
猫田
「相場が上がっても下がっても」
マーカーで矢印を書く。
自動購入
猫田
「人間の感情が入る余地を減らす」
後輩
「仕組みですね」
猫田は頷いた。
「その通り」
そして静かに言った。
「本能に抗うには、意志やモチベーションではなくシステムだ」
後輩はノートを書きながら言った。
「なるほど…」
猫田は続けた。
「投資の成功者は、天才トレーダーではない。むしろ仕組みを作った人。自分の脳のキャパシティを無理に使わない。感情を排除する。機械のように積み立てる」
後輩
「確かにその方が続きそうですね」
猫田は最後にまとめを書いた。
本能 → 消費・短期思考
↓
設計 → 自動積立・長期投資
猫田
「これができれば。凡人の我々にとって資産形成は半分勝ったようなものだ」
後輩はノートを書きながらゆっくり頷いた。
「なるほど…」
猫田はホワイトボードを見渡し、マーカーのキャップを閉めた。
白いボードにはいくつもの言葉が並んでいる。
長期
分散
低コスト
入金力 × 複利 × 時間
仕組み化
猫田は軽く息をついた。
猫田
「さて」
腕時計を見る。
22:50
猫田は苦笑した。
「また長くなってしまったな」
後輩
「毎回そうですね」
猫田
「今日のテーマは④だった」
ホワイトボードにもう一度書く。
① 人生のビジョン・夢
② 現実の分析・ポジションの把握
③ ギャップの把握・理解
④ お金の設計・キャリアの設計
⑤ 資産形成の具体的アクション
猫田は④の前半に線を引いた。
お金の設計
猫田
「今日はここまでだ」
後輩
「確かに」
猫田
「残りはもう一つある」
マーカーで④の後半を丸で囲む。
キャリア設計
後輩
「実は金融投資以上にそこが一番気になります」
猫田は笑った。
「そこは重要なテーマだ」
そしてホワイトボードを軽く叩いた。
猫田
「④のキャリア設計については、また来週にしよう」
後輩
「え、そこ一番聞きたいところなんですけど」
猫田は肩をすくめた。
「資産形成の最大のエンジンはキャリア=入金力だからな。我々、労働者にとって非常に重要」
後輩は真剣な顔で頷いた。
猫田はエナジードリンクを一口飲んだ。
「今日はここまでだ」
後輩は立ち上がり、ホワイトボードをスマホで撮影した。
カシャ。
夜の丸の内の会議室に、静かなシャッター音が響いた。
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