【短編小説】おくすり
精神薬を飲むことで、僕はやっと一人前になれる。
いや、4分の3人前といったところだろうか。
とにかく、元のダメダメな状態から、ちょっとダメくらいにレベルアップができるのだ。
毎日、仕事にだって行ける。
電車にも乗れる。
挨拶も元気にできる。
声は小さいけど。
無視されたら悲しいから。
バリバリと働くことはできないけど、パソコンをカタカタすることはできる。
Excelを閉じたり、開いたりだってできる。
情けなくなんてない。
僕は不良品なのだから。
元から壊れているのだ。
そんな僕が、形だけでも社会に適応できているなんて、すごいことだ。
そうに違いない。
いや、そうに決まっている。
奇跡と評してもいいだろう。
それなのに、みんなといったら、僕が作動していることを当然だと思っているみたいだ。
奇跡を目の当たりにしている、自覚がない。
一種の恩知らずだ。
恩知らずは恥知らず。
悔い改めてほしいものだ。
まったく。
ああ、今日の分の薬を飲んでいなかったな。
これがないと、僕はダメダメだから。
