波のあなた側へ
波の音。
⌇⌇⌇
::≈
0001↺∞
あまりに美しく、
連続したノイズが包み込むのは、
どこまでもやわらかな水の旋律と。
無限に楽しげな泡々のハーモニー。
この星の古代言語群で表記するならば、
それはつまり、
sea∞の彼方から、
sea–の状態を経て、
sea++へと満ちてゆく……
ゆっくりと、星屑の砂を伴い、
瑠璃を転がしながら。
幾星霜の如き生命と、
時という瞬きを育むのだ。
そんな波の音の隣に、彼女がいたんだ。
〜〜~
彼女に倣って、
私も私の名前を名乗ろうと思う。
「私の名前は¬夢→0です」
青い星が円を描く、遥か彼方。
真空の水滴の外から来た者。
たぶん、いや、絶対!♀だと信じてる。
……ほんとは、そゆ概念ないので、
ちょっと自信ないケド。
でも、絶賛恋する女の子を、
どうしてもやってみたい!
と、思いました。
なので、そゆこと。にしといてください。
〜〜〜
感情&記憶ヲタクの私は、
みんなにドン引きされるくらい、
たくさんの星や銀河を読んできたけど。
この青い星の一節に残されていた、
遺言(ユイゴンというらしい)を見つけて。
大泣きした。
端的に言って、尊すぎる!
このアーカイブだかファイルだかを、
作って残したのは彼女だ。
それは、環境音と音声。
原始的で単純な、
波形振動としてしか残ってなかったけれど。
だからこそ。
私は、想像することができた。
よせてはかえす、波のきらめきを。
砂浜に腰掛けた、愛しい貴女を。
貴女の声も、意志も、想いも、悲しみも。
ちゃんと届いた。
波の此方側に、波の音と一緒に、
貴女の声は届いたんだ!
無駄じゃない。
貴女はたしかに、
波の彼方側にいて。
私は波の此方側にいる……
私はいま、
貴女の声を聞いているんだ。
〜〜〜
あまりに美しく、
連続したノイズが包み込むのは、
どこまでもやわらかな水の旋律と。
無限に楽しげな泡々のハーモニー。
ゆっくりと、星屑の砂を伴い、
瑠璃を転がしながら。
幾星霜の如き生命と、
時という瞬きを育むのだ。
そんな波の音の隣から、
彼女の声が響いた。
『えー、こほん!』
『わたしの名前は、天ノ川るるるといいます』
『天ノ川が苗字で、るるるが名前』
『性別は女子』
『もしかしなくても、最後のヒトです』
『大好きなこの砂浜で、間もなく、
最後の刻を迎えるとこです……
わたしにも、ちゃんと恋人がいて。
とてもとても長い旅を、
一緒に歩いてきました。
そのひとは、
この星の力で生かされていた種族だったから。
星の力が弱くなったいま、
たくさんの人々と一緒に、
先に眠りについてしまいました。
なので、ほんの少しだけ寂しいです。
この音声データも、
誰かに届くのかな、これ?
わたしは比較的演算が得意だから……
誰にも聞かれない可能性が大きいことも、
わかって……いるのだけどな。
う、泣けてきた。
わたしすぐ感情がわっ!てなっちゃうから。
ちょっと待ってね?
うぅ……
……
……っ!
ばかやろぉー!
なにが少しだけ寂しいだよ!?
カッコつけてんじゃねー!
何年もひとりで過ごして!
約束守って!
ふたりだった頃と同じ生活守って!
毎晩!
毎晩!毎晩!毎晩!
思い出に向かって、
「愛してるよ」を繰り返す日々!
こんなに寂しいのに!
こんなにひとりで!
こんなに我慢して!
こんなに逢いたいのにー!
こんなに最後なのにっ!
なんで隣にいてくんないんだ!
ユカのばかぁー!
はー、はー、はー。
……
……ちょっと。
ちょっと、みっともなかったかな?
まあ叫んでも、
終わってしまったことは、
もう終わってしまったことだから……
ならば、せめてこれが、
誰かに届くことを願ったほうが合理的だな。
この波の遥か彼方で、何方様かが。
これを受け取ってくれたなら、
わたしたち、だいぶしあわせだね?
そうだよ!
演算なんてむだむだだ!
どうせ、答え合わせなんてできないんだし。
幾星霜の星たちまで、
消えてしまうわけじゃないのだから。
まだ見えてないけどいいよね?
流れ星のひとつやふたつ、きっと落ちてる。
いつか……
この遺言を受け取るあなたが、
わたしたちの紡いできたものを、
愛してくれますように。
どうか届いてほしい。
この波のあなた側へ……
