売れなくても、やらかしても。「本の即売会」の出店記を書きました
開場から30分、まだ1冊も売れていない。
目の前を、ただ人が流れていく。
立ち止まりそうで、立ち止まらない。
ブースの中から「こんにちは」と挨拶をしては、机の上の本を意味なく並べ直す。
私は、ブース出店した文学フリマやZINEフェスで、この少し気まずい時間を過ごすことがある。
それでも私は「本の即売会」という熱い空間に、どうしようもなく魅せられてしまったのだ。
「一度くらいは出てみたいな」‥そんな軽い気持ちで一歩を踏み出した新参者が、気付けば1年半で13回のハイペースで出店を繰り返していた。
この本は、売上を伸ばすためのマーケティングの本でも、戦略的なブース運営方法を教えるノウハウ本でもない。
失敗して、迷って、それでもまた出店してしまう、1人の不器用な出店者の「等身大の記録」だ。
今回のnoteは、そんな新刊「どーにかこーにか 本の即売会」をご紹介する。
※電子書籍
※紙書籍
どんな本なの?
お気付きの通り、著者(私)は決してスマートな出店者ではない。
思えば、しょっちゅう何かしらやらかしている。
・展示用の「見本誌」を、丸ごと自宅に置いて会場へ向かってしまう
・イベント直前に足を骨折し、松葉杖を相棒に福岡まで遠征する
・新刊の到着が遅れ、イベント当日の朝、ホテルのロビーでギリギリ回収する
・突然「サインを‥」と頼まれたものの、ペンネーム(入江 零)をキーボードでしか打ったことがなく、自分の手で初めて手書きしてヨレヨレの字になり、ニセモノ感に震え上がる
‥挙げ始めるとキリがない。
他にも、誰も来ないからとブースの陰でおにぎりをモグモグし始めた時に限って、なぜかお客さんがやってくるという謎現象が複数回発生。
そんな時はいつも慌てふためいていたのだが、今では「30秒でエネルギーチャージでき、サッとキャップを閉めて接客に戻れるゼリー飲料」一択になった。
売上記録用のメモ帳を忘れたことで「実は、紙1枚のほうが圧倒的に管理しやすい」と気付き、結果的に持ち物が引き算された小ネタなんかも書いている。
不器用で、よわよわで、地味なトラブルも割とある。
言ってしまえば「そううまくいってないのに、やめてもいない人」が私だ。
けれど「どーにかこーにか、今回も終わった」と荷物を片付ける時、いつも言葉にできない温かい充実感が心に満ちている。
その理由や、文学フリマ・ZINEフェスでブースに立つことにまつわる悲喜こもごもを、読みやすく1冊にまとめたのが本書である。

「質量ゼロの文字」が温度を持つ瞬間
ブログやSNS、電子書籍。
デジタル世界に積み上げた大量の記録には、形も質量もない。
いつか何かの拍子に、突然消えてしまうかもしれない頼りなさもある。
だが、それを「紙の本」という形にして自分のブースに並べた時、人から人へと直接手渡せる「温度を持つモノ」に変わる。
アザラシロボの本を書いている私がいただいたコメントをまとめたのが、このページだ。

また、あるイベントでの閉場間際のこと。
1人の男性が私のブースに現れ、見本誌ノールックで「今ある本を1冊ずつ、全部ください」と、並べていた9種類の本を全て買い上げてくれた。
嬉しいどころか、壮大な謎に包まれてオロオロしていた私に彼が語ってくれた、驚くべきエピソードとは?
‥気になる人は、ぜひ本書で続きを楽しんでいただきたい。
イベント会場では、自著を気に入ってくれた人が、目の前で財布からお金を出してご購入、笑顔で本を受け取ってくれる。
ネット上のPV数や「いいね」という数字だけでは、絶対に出会えない温かさがそこにあった。
「私のスモールワールド(小さな世界)を、望んでくれた人に直接手渡す」‥私が頻繁に遠くの街まで本の行商に向かうのは、そのためだ。
もしあなたが、既に何度もブースを出してきたベテラン出店者さんなら、この出店記の中に「あるある!」「そうそう!」というエピソードがいくつも見つかると思う。
「今回も色々ありましたね。またあのお祭りで会いましょう!」と、肩を叩き合う戦友達と、お酒を飲みながら語り合いたくなるネタかもしれない。
そしてあなたが「いつか自分の本を作ってみたいけれど、私なんかにはムリ」と諦めかけていたり「自分の作品を、誰かに届ける勇気がない」と足がすくんでいたりするなら、この本が優しく背中を押す温かい招待状になればいいな、と思っている。
自分の経験を文章にして「本」という形にまとめ、各地のイベントに出向いて手売りする。
これはちょうど「自分が育てた果物を収穫し、ジャムに加工して瓶に詰めたものを色んな街のマルシェで売る」に似ている。

そんなに本が売れなくても、失敗しても大丈夫。
リアルイベントでしか出会えない充実感‥この本には、そんなささやかな創作の喜びも詰めこんだ。
‥というワケで、どーにかこーにか書き上げたちょっと恥ずかしい等身大の出店記。
あなたにも、お手に取っていただけたら幸いである。
※電子書籍
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