短編小説 『宇宙人だよね?』
ぼくは待ち合わせ場所の公園へ向かった。
男はベンチに座り、ぼんやりと空を見上げていた。
ぼくに気がつくと声をかけた。
「やあ」
「やあ」
「急に呼んでごめんね」
「大丈夫だよ」
「暑いなぁ」
「嫌になるね」
「え?暑いのは嬉しいでしょ」
「暑いのは嬉しいの?」
「うん」
「そっか」
男はしばらくこちらを見ていた。
「それで話って何?」
ぼくが尋ねると、男はゆっくりと口を開いた。
「聞きたいことがあってね」
「なに?」
「君ってさ」
「うん」
「宇宙人だよね?」
「え?」
思わず男の顔を見た。
「宇宙人だよね?」
「ぼくが?」
「うん」
「どうしてそう思うの?」
「なんとなく」
「なんとなくで人を宇宙人扱いするなよ」
「だって、ちょっと変なんだもん」
「どこが?」
「毎朝、決まった時間に起きるでしょ」
「起きるよ」
「仕事に行くでしょ」
「行くよ」
「嫌なことがあっても次の日また行くでしょ」
「仕事だからね」
「上司に怒られたら、悪くなくても頭を下げる」
「そういうもんだよ」
「そんなこと普通できないよ」
「できるよ」
男は不思議そうな顔をした。
「あと、顔色ひとつ変えずに何時間もスマホ見てる」
「スワイプしてたら時間溶けるんだよ」
「休みの日は一日中寝てる」
「平日の疲れを取ってるの」
「夜中に突然ラーメン食べたりする」
「食べたくなるんだよ」
「食べたあと後悔してる」
「それでも食べたい日があるの」
男は腕を組んだ。
「やっぱり宇宙人だ」
「いや、むしろめちゃくちゃ人間らしいだろ」
「なにそれ」
ぼくは指を折りながら数えた。
「毎日真面目に働いて」
「うん」
「家に帰ったらスマホ見て」
「うん」
「たまに夜更かしして」
「うん」
「明日仕事行きたくないなって思いながら寝て」
「うん」
「朝になったらちゃんと仕事に行く」
男はしばらく黙っていた。
「やっぱり君は変だよ」
「普通だって」
男は納得できないように首を傾げ、頭の触覚を掻いた。
ぼくたちはしばらく黙って空を眺めた。
青い地球が、小さく浮かんでいた。
○あとがき
ぼくらから見たら宇宙人でも
その宇宙人から見たら、ぼくらが宇宙人なんですよね。
どちらも宇宙にいる宇宙人なんで。
