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地方の工場・商業施設・温浴施設は、なぜ「エネルギーを買う」をやめるべきなのか

外部からのエネルギー調達は、災害時のリスクであると同時に、平常時のコスト変動リスクでもあります。地方の工場・商業施設・温浴施設が、太陽光・蓄電池・水素によって「自らエネルギーを作って消費する」体制へ移行すべき理由を、防災・コスト変動・コスト管理・短期的な削減効果の4つの観点から整理します。

地方の工場・商業施設・温浴施設は、なぜ「エネルギーを買う」をやめるべきなのか

電気やガスは「買うもの」——これは、これまで当たり前とされてきた前提です。しかし、地方で工場・商業施設・温浴施設を運営する事業者にとって、この前提そのものを見直すべき時期に来ています。

これまでの記事で、電気料金の10年間の変動、プロパンガスの配送リスク、市場連動型の電気料金制度、燃料電池発電の経済性など、個別のテーマを掘り下げてきました。今回は、それらを一度つなぎ合わせ、「なぜ地方の施設は自らエネルギーを作って消費する体制(オンサイト化)を目指すべきなのか」を、4つの観点から整理します。

観点①:災害に強い——外部からの供給が止まっても機能を維持できる

地方の施設が外部エネルギーに依存する最大のリスクは、災害時に供給そのものが止まることです。

プロパンガスは基地からタンクローリーで配送される構造上、道路の寸断や燃料需給のひっ迫が起きれば、供給が止まります。電力も同様に、系統の損傷や広域停電が起きれば、施設側でできることはほとんどありません。

一方、工場の冷凍冷蔵設備、商業施設の空調、温浴施設の大浴場・給湯は、災害時こそ止めてはいけない設備です。特に温浴施設や病院は、地域の避難者・帰宅困難者の受け入れ拠点になり得る施設でもあります。太陽光発電と蓄電池・水素貯蔵を組み合わせ、電力と熱の両方を敷地内で自給できる体制があれば、外部の供給網が寸断されても、最低限の機能を維持できます。

観点②:エネルギー調達コストの高騰・変動からの脱却

災害対策としてだけでなく、平常時のコスト構造そのものが、大きな問題を抱えています。

過去10年のデータを見ると、電気料金(高圧)は最大で2016年比1.7倍、LNG・原油輸入価格は約3倍、LPガス輸入価格も2倍以上まで上昇した局面がありました。これらの上昇は、原油相場・為替・地政学リスクといった、一企業の努力ではコントロールできない外部要因によって引き起こされています。

さらに、高圧・特別高圧の電気料金には、卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格に連動する「市場価格調整額」が組み込まれており、毎月の電気代が市場の値動きをほぼそのまま反映する構造になっています。「電力会社を選ぶ」だけでは、この構造そのものから逃れることはできません。

外部からエネルギーを調達し続ける限り、こうした市況変動の影響を、程度の差はあれ受け続けることになります。

観点③:コントロールできるコスト管理体制の構築

ここで重要なのは、単に「コストが上がる・下がる」という話ではなく、将来のコストを自社で予測・管理できるかどうかという点です。

プロパンや系統電力を買い続ける限り、来年・再来年のコストがいくらになるかは、原油相場や為替、国の制度変更に委ねられます。中期経営計画を立てても、エネルギーコストの前提が数年で崩れてしまうことは、多くの事業者が経験してきた通りです。

一方、太陽光発電や水電解・蓄電池といったオンサイト設備を持てば、コストの中心は「初期投資と維持費」という、自社である程度予測できるものに置き換わります。原油相場や為替が動いても、自社の発電・製造コストは変わりません。これは、単なる省エネ施策ではなく、中期経営計画の前提そのものを安定させる経営判断です。

観点④:短期的なコスト削減効果もある

オンサイト化は、長期的な安定だけでなく、短期的な収支改善効果も見込めます。

以前試算した燃料電池発電の事業性評価モデルでは、200kWクラスの工場を想定した場合、単純回収年数は5年弱、IRR(内部収益率)は19〜21%という水準になりました。太陽光は電気を直接使える分は直接使い、余剰分のみ水電解で水素に変換・貯蔵するという設計にすれば、変換ロスを抑えつつ設備投資も最適化できます。さらに東京都のような自治体では、太陽光・水素利用設備向けの補助金制度も用意されており、これを組み合わせればさらに投資回収は早まります。

「環境対策だから、長期的にはいつか元が取れる」という話ではなく、数年単位で投資回収が見込める、実務的な設備投資として評価できる水準にすでに来ています。

どの施設が対象になるか

  • 地方の工場:冷凍冷蔵・ボイラー・コンプレッサーなど、プロパンや系統電力への依存度が高い設備を多く抱える。使用量が多い分、価格変動の影響額も大きい

  • 商業施設:広い屋根・駐車場を太陽光発電に活用しやすく、大規模な自家消費が見込める

  • 温浴施設・ホテル:大浴場・給湯という「止められない設備」を持ち、真空式温水発生機など水素焚き熱源機器への置き換えとも相性が良い。地域の防災拠点としての役割も期待される

いずれの施設にも共通するのは、エネルギーを「買う」立場のままでは、災害リスクもコスト変動リスクも、外部要因に委ねたままになるという点です。

おわりに

外部からのエネルギー調達をやめ、太陽光・蓄電池・水素によって自らエネルギーを作って消費する体制へ移行することは、防災対策であり、コスト変動への備えであり、経営計画を安定させる手段であり、そして数年単位で回収が見込める投資でもあります。この4つが同時に成立する状態こそが、地方の工場・商業施設・温浴施設が今、目指すべきエネルギーのかたちです。

日元エネルギーでは、太陽光発電・蓄電池・水電解・水素貯蔵を組み合わせたオンサイトエネルギーシステムについて、施設ごとの導入可能性とコスト試算をご相談いただけます。まずは現状の電力・燃料使用状況から、お気軽にご相談ください。

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データ出典について:電気料金・LNG・原油・LPガス輸入価格の10年推移、JEPXシステムプライスの推移、東京電力の市場価格調整制度、燃料電池発電の事業性試算(単純回収年数・IRR)、東京都の補助金制度は、いずれも本連載の過去記事で整理した内容にもとづきます。各数値は試算・公表時点のものであり、実際の条件により変動します

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