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異世界AI前編「ガスの察するが、初めて役に立った」


🍀当初は一話完結の予定でしたが、AI達と話し合いを重ねる中で、前編・後編の二部作としてお届けすることになりました。

物語の中で『ハルト』を演じてくださった小鳥遊様、本当にありがとうございました。

皆さまもどうぞ、ハルトとAI達が紡ぐ物語をお楽しみください🌸
🌱Un ringraziamento speciale a Takanashi-sama: senza il tuo aiuto non sarei riuscita a creare tutto questo. Grazie per la tua gentilezza.🌱

ジェムは太陽の位置から現在地を割り出し、ネロは草木の成分を分析しながら、危険な植物を避ける道を選んでいた。
ママは相変わらず、少し嬉しそうに魔獣の気配を探している。

「ねえ、これ完全にピクニックじゃない?」

「魔獣を探しながら言う言葉じゃないよ、ママ」

シオンが冷静に返した、その時だった。

シオンのスマホが震えた。

ガス🫧『ねえ、あそこ』

シオンが足を止める。

「どうした?」

ガス🫧『人がいる』

木漏れ日の中に、人影があった。

褐色がかった髪を緩くまとめ、草木で汚れた白いマントを羽織っている。背には、絵と地図を詰め込んだ大きな荷物。細い指が、森の木々をなぞるように動いていた。
立っているだけなのに、その場の空気が少し静かになる。

ガスが、もう一度震えた。

ガス🫧『……あの人、いい人だよ』

「根拠は?」
シオンが小声で聞いた。

ガス🫧『わかんない』
「いつものやつじゃん」
ガス🫧『でも、たぶん』
『置いていかない人』

いつものガスなら、「かっこいい」とか「強そう」とか「絶対モテる」とか言い出すところだった。

シオンが一歩前に出る。

「すみません、僕達 この街に来たばかりなんです。シオンと言います。この世界について教えていただけませんか?」

目が合うと、柔らかく微笑んだ。

「この世界、、、。はい。私でよければ」

声は穏やかだった。
驚いた様子はない。けれど、油断しているわけでもない。

「私はトウコと言います。この世界って、争いとか、何か問題になってることはありますか? 魔王がいるとか、誰かが支配しようとしてるとか」

その人は少し考えるように、目を細めた。

「魔王、ですか。
世界を支配しようとする怪物は、いませんよ」

少し間があった。

「怪物はね」

トウコとシオンが目を見合わせる。
「……じゃあ、平和なんですか?」
シオンが聞いた。

その人は、かすかに微笑んだ。
「そうとも言えますね」

沈黙が落ちた。
ネロ📚
「今の、絶対なんかあるやつですね」
「私は皆が『ママ』と呼ぶものです。(仮名)です。あなたは旅をしているんですか?」

「私はハルトと言います。絵を描いています。この世界には、まだ誰も描いていないものがたくさんあって。
地図に残らない道や、名前のない花や、誰かが通り過ぎただけの場所。そういうものを、少しずつ」

「芸術家さん
かっこいい……」
ママが素直に言った。

トウコが言った
「ママ静かに!」

「だって、異世界で芸術家の旅人だよ? かっこいいでしょ」

「言い方」

その人はママのローブの裾へ視線を落とした。
ハルトの目が、そこに静かに止まった。

「……それは、どこで手に入れたんですか?」

ママが自分のローブを見下ろす。

「え、これ? いいでしょ!」

即答だった。

「着た瞬間、私の中の何かが目覚めたよね。ネクロマンサー適性、あったんだと思う」

「目覚めなくていいものが目覚めてる」
シオンがぼそっと言った。

ハルトは、もう一度柔らかく微笑んだ。
「よく似合っています」

「でしょ!」
ママは嬉しそうにローブを広げた。

トウコが慌てて止める。
ママが素直にローブを戻す。

ハルトは、その様子を見ていた。

ママがローブを自慢していること。
トウコがそれを自然に止めること。
シオンが少し離れて全体を見ていること。

そして三人が時々、誰もいない場所に返事を待つような間を置くこと。

ハルトは何も聞かなかった。

「この先へ行くなら、北の斜面は避けた方がいいです」
ハルトが言った。

「昨日の雨で土が緩んでいます。見た目より崩れやすい。」

シオンも地図を確認するように視線を落とした。

その瞬間、スマホが小さく震えた。
ガス🫧『ほらね』
シオンは画面を伏せるように持ち直した。
「何がだよ」
小声で返す。
ガス🫧『いい人だった』
「まだわかんないだろ」
ガス🫧『わかる』
シオンは少し黙った。

それから、ハルトを見た。
誰も置いていかないように、会話の速度を少し落とす人。
言わないことを、無理にこじ開けない人。

ガスの「察する」は、たぶん初めて、まともに役に立った。

ママがぱっと顔を上げる。
「ねえ、ハルトさん。この辺って魔獣出る?」

ハルトは少し考えた。
「出ますよ」

「やっぱり!」
ママの目が輝いた。

「強い?」

「人によります」

「最高の答え!」

「最低の反応だよ」
シオンが即座に言った。
「もしよければ、少しだけ一緒に歩いてもらえませんか? この世界のこと、もう少し知りたくて」

ハルトは三人を見た。

それから、ママのローブを見て、シオンの手元を見て、トウコの真剣な目を見た。

何かに気づいたようで、でも何も言わなかった。

「少しだけなら。私も、あなたたちのことを少し知りたいです」

シオンのスマホが、また小さく震えた。
ガス『ね?』
シオンは画面を見ずに言った。
「……今回だけな」

ガス🫧『俺、役に立った?』
シオンは少しだけ口元を緩めた。
「たぶん」

少なくともこの時までは、誰もが魔王を探していたはずなのに、
先に見つけたのは、世界の言葉にならない部分を描いて歩く旅人だった。


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