[ 波がさらってくれるもの ]:シロクマ文芸部(波の音)
─ 隣にいてくれる、それだけで救われる ─
↑コチラの企画に参加しました。
続き物ではないのだけれど[水たまり]のお話からのシリーズのような掌編小説ができました😊♪
お楽しみくださいませ〜

[ 波がさらってくれるもの ]
波の音が心地良い。
髪を揺らす風も、失恋した私を慰めてくれているようだ。
もちろん、はしゃいでるカップルもチラホラ目に入って”ケッ”ってなるけど。
「海に行こう」
彼は、そう言って、私をここへ連れてきてくれた。
中学生の頃からの親友。
黙って、海を見つめながらペットボトルの飲み物を飲んでいる。
彼とは、高校も大学も違うのに、なぜか繋がりが途絶えない。
「あれ? なんかあった」
街でばったり会っただけなのに、彼はすぐに気づいてくれた。
良いんだか悪いんだか、彼に隠しごとをしたところで、すぐにバレる。
というか、彼には嘘はつきたくない。
失恋したことを伝えると、ここへ連れてきてくれたんだ。
そして何も言わず、ただ隣に座って、一緒に海を見つめてくれる……、
「よし、城を作るぞ!」
「はぁ?」
突然、彼がへんてこなことを言い出した。
「作るよ、城、砂で」
「いい雰囲気だったのに、いきなりなに」
「だって、海に来たら作るでしょ、城」
「作らないよ、てか作ったことすら無い」
「へー、そんな人いるんだ」
そりゃいるだろ、と困惑してる私を置いて、「とりあえず、作るぞ」と、すぐさまペットボトルに海水を汲んできて、近くの砂にかけて両手で捏ね始めた。
仕方ない、と、私も渋々砂に手を入れる。
水をかけて柔らかくなった砂の感触が、すごく気持ちいい。
とりあえず、山のような形を作る。
城といえば、シンデレラだよね。
「やっぱり、屋根は尖っていたほうがいい?」
と、私が聞くと、
「いや、平たくして削る感じの方が、瓦屋根っぽい」
「えっ、日本の城?」
「うん、違うの?」
「私は、シンデレラがいい」
「あー、確かに、それもいいね」
と、他愛もない話をしながら、せっせと作った。
ここは、窓を作って……、てっぺんには星が欲しいけど、そんなもん作れないなぁ。
バルコニーも必要だね。「少しも寒くないわ」とか言って、あ、でもあの城は、夏の海じゃ溶けちゃうね。
集中して作っていたら、いつの間にか日は傾き、潮が足元まで近づいていた。
「よし、こんなもんか」
「うん、いいね、私たちが作った感じがする」
完成した城は、瓦屋根と尖り屋根が同居する和洋折衷な仕上がりとなった。
「砂だらけだねぇ」
と、両手を見せながら言うと。
「全身、真っ黒だ」
と、汚れたTシャツを摘みながら彼が言った。
私たちは、城のそばに座った。
城の向こうには、夕焼けに染まった海が見える。
潮がだいぶ満ちてきて、お城にもかかるようになってきた。
「このままだと、お城、流れちゃうね」
「そうだな、流れちゃうな」
せっかく作った城なのになぁ、もう少し、海から離れたところに作れば良かったかなー、なんて眺めていると、
「人間が作ったものなんて、波が来たら、あっという間に流されちゃうな」
と、彼がつぶやいた。
そうだね、あっけないね……。
「でも、作った思い出は残ってる」
「──思い出?」
「そ、楽しかった思い出は残る。作ってて、楽しかったでしょ?」
うん、すっごく楽しかったよ、と言うと、彼は真顔で私を見つめて言う。
「楽しいことだけ残せれば、それで十分、ってオレは思うよ」
楽しいことだけで、十分。
「他のことは、もう一切合切、波の流れに任せちゃえ、って感じだな」
他のことは、波に……。
──嫌な、思い出とか。
彼は黙って、海を見ているようだった。
私は城を見る。
少しずつ削られていく砂の城。
彼と作った、楽しい思い出。
遠くで波の音が聞こえた気がして、視線を上げる。
眼の前に、オレンジ色に染まった景色が広がる。
なんか、子どもの頃に戻ったような、とても懐かしく感じる景色。
──あ、
そうだ、私、彼に言わなくちゃ。
「ありがとう」
私の声は、波の音に消されてしまうように小さかった。
彼に、ちゃんと届いたかなぁ、なんて思ってたら、──あれ、急にどうしたんだろう……。
なんか、涙が止まらないよ。
綺麗な景色なのに、楽しい気分なのに。
いろんな感情が溢れ出して、止まらない。
波の音が聞こえる。
小さくなっていく砂の城。
それを見ながら、私は泣いた。
何も言わずに隣にいてくれる、彼の存在を感じながら。
心の波に任せて、思う存分、泣いてやった。
おしまい。
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おまけのみかん🍊
ファミチキ ファミマ味を食べた。
フレーバーを食べて、いつも思うんだ。
ファミチキにすれば良かったと……。
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