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古沢稀杏は南利美なのである!

古沢稀杏を見ていると、どうしても頭の中に一人の女子プロレスラーが浮かんでくる。

南利美。

もちろん実在のレスラーではない。女子プロレスゲーム『レッスルエンジェルス』シリーズに登場した、あの「関節のヴィーナス」南利美である。

これ、分かる人には一発で分かると思う。

古沢稀杏は南利美なのである!

顔が似ているとか、コスチュームが似ているとか、そういう話ではない。

プロレスの発想そのものが似ているのだ。

南利美というキャラクターは、とにかく関節技である。

相手の隙を見つければ、一瞬で関節を取りにいく。

派手な大技を何発も並べて最後に必殺技、というレスラーではない。

腕が空いた。

足が取れた。

だったら極める。

その瞬間に試合が終わってしまうかもしれない。

そこが南利美なのである。

そして今、スターダムのリングでそれをやっているのが稀杏なのだ。

稀杏はデビュー当初から変形卍固めをはじめ、いくつもの関節技を繰り出してきた。

新人レスラーというと、まずドロップキック、ボディースラム、エルボー。

そこから少しずつ技を増やしていく。

もちろん、それが普通である。

しかし稀杏は最初から少し違った。

関節技を使うことそのものが、レスラーとしての個性になっていた。

そして現在のキャッチフレーズは「サブミッション・ブラスト」。

もう答えが書いてあるではないか。

サブミッション・ブラスト。

令和版・関節のヴィーナスですよ!

しかも面白いのは、稀杏の関節技が単なる「得意技」という段階から、明らかに勝負を決める武器へ変わってきていることだ。

5★STAR GPの予選でも、レッグロック式アンクルホールドでタップアウトを奪った。

ここが重要なのだ。

「関節技も使える」ではない。

関節技で勝つレスラーになり始めている。

女子プロレスで若手が頭角を現す時、分かりやすい武器は多い。

強烈なエルボー。

キック。

スープレックス。

空中技。

それもいい。

しかし稀杏は、そこだけには行かなかった。

足を取る。

捻る。

逃がさない。

タップを取る。

私はそこに、妙な懐かしさを感じるのだ。

『レッスルエンジェルス』で南利美を使った人なら分かるだろう。

試合中、こちらが狙っているのは大技ではない。

関節技を仕掛けられる状況なのである。

相手の体力が落ちた。

関節にダメージが蓄積した。

よし、いける。

そこで南利美が入る。

そして極める。

稀杏の試合を見ていると、時々これと同じ感覚になる。

「そこからアンクルに行くのか!」

という場面があるのだ。

普通ならもう一発エルボーを打つところで足を見る。

普通なら投げ技へ行くところで関節を探す。

これはレスラーとして非常に面白い。

ただし、稀杏と南利美には決定的に違うところもある。

南利美はクールである。

寡黙である。

いかにも職人的な関節技使いだ。

一方の稀杏は全然違う。

伊藤麻希を師匠と仰ぎ、「伊藤リスペクト軍団」の一員として踊り、騒ぎ、感情をむき出しにする。

だから性格は南利美ではない。

むしろ正反対かもしれない。

だがゴングが鳴った瞬間、突然「南利美」が出てくるのだ。

ここがいい。

伊藤麻希の横でワチャワチャしていた女が、リングに入ると相手の足首を持っている。

そしてグイッと捻る。

笑っていたはずの女が、急に関節を極めにくる。

この落差こそ稀杏の武器になっていくのではないか。

思えば『レッスルエンジェルス』というゲームは、現実の女子プロレスを題材にしながら、「こんなレスラーがいたら面白い」を大量に詰め込んだ世界だった。

その中にいたのが南利美だった。

関節技だけで明確なキャラクターを作れる女子レスラー。

あの頃はゲームの中の話だった。

それが2026年。

スターダムを見ていたら、本当に出てきたのである。

赤と黒のコスチュームで、リングを走り回り、突然足首を捕まえる女が。

古沢稀杏。

まだ完成していない。

むしろこれからである。

だから面白い。

もっと関節技を増やしてほしい。

腕も取ってほしい。

首も取ってほしい。

「あ、捕まった」

と思った瞬間に試合が終わるレスラーになってほしい。

フォールを取るための必殺技ではない。

タップするしかない必殺技。

そこまで行った時、古沢稀杏というレスラーは今のスターダムの中で完全に独立した存在になる。

誰々みたいな選手ではない。

稀杏というジャンルになる。

だが、その少し前。

古いプロレスゲームを知っている人間だけは、ニヤリとすればいい。

「ああ、やっぱりいたじゃないか」と。

画面の中にしか存在しなかったはずの女が、30年以上の時間を越えてリングに出てきた。

古沢稀杏は南利美なのである!

私はもう、そういう目でしか見られない。


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