「ありがとう」と言われた日、地域が動いた
探究学習の話をするとき、よく「生徒が成長した」という話になる。
でも、私が5年間で一番印象に残っているのは、地域の側が動いた瞬間だ。
「またやりたい」と言ってくれた
ある生徒がこう書いている。
「商店街の方や多摩市役所の方も、『ありがとう』と私におっしゃってくれて、またやりたいと誘ってくださいました。それが本当に嬉しかったのです。人と人はこんなふうに繋がっていけるんだ。学生でも、こんなに地域に貢献できるんだ」
この生徒は活動を始める前、「地域のひとは、別に学生のことを求めていないだろう」と思っていたと書いている。
その思い込みが崩れた瞬間が、「ありがとう」という言葉だった。
地域の側も、元気になる
別の生徒はこう書いている。
「永山団地でイベントを行なったときは、設営をしていた際に地元住民の方がとても嬉しそうにしていて、たくさん話しかけてくださったことが印象的だった。高齢者が多いという問題を抱えている中で、高校生という若い世代がお店を開いて盛り上げようとしてくれているということが新鮮でよかったのか、とても歓迎してくれた」
高齢化が進む団地に、高校生が来た。それだけで、空気が変わった。
これは一方的な「支援」ではない。高校生が地域に元気をもらい、地域が高校生の存在で元気になる。双方向のエネルギーが生まれている。
高齢者も、教えてくれる側になった
最初に書いた「高齢者は常に支援される側?」という問いは、探究学習の現場で何度も確認されてきた。
ある生徒はスマホ講座を行ったゼミでこう書いている。
「スマホ講座という名目で来た方でも、最終的に雑談が弾み、帰りの際に『楽しかった』『ありがとう』などと、とてもありがたい言葉をかけて帰られる方が多くいて、忘れられない経験になった」
さらにその後、接遇した高齢の方から「また来てほしい」と指名されたというエピソードも続く。
「支援する・される」ではなく、「一緒に場をつくる」関係が生まれていた。
街中プレゼンを見ていた市民の声
まち歩きレポートを書いてくれた地域住民の方が、街中プレゼンを見てこう書いている。
「最終的には、内容・情報の量や質という見える結果だけでなく、その人となり全体を見て評価していると実感する。伝えたい思いがあるか、それを伝えようとする熱意があるか」
市民もまた、高校生の発表を通じて「どう評価するか」を問い直されていた。高校生が問いを立てることで、見ていた大人の側にも問いが生まれる。
地域が学びのフィールドになるとは
生徒が変わる。先生が変わる。そして地域も変わる。
高校生が地域に出ることで、商店街の人が「またやりたい」と言い、団地の高齢者が「来てくれてありがとう」と言う。その反応が、今度は生徒の側に返ってくる。
「自分たちの存在が、地域にとって意味があるかもしれない」という感覚。それが、勉強する意味や、地域に関わる意味につながっていく。
これが、私が「地域が学びのフィールドになる」と言うときに思い描いている景色だ。学校が地域に出るのではなく、地域と学校が互いに影響し合う状態。
地域の方から「優秀な学生さんですね」と声をかけられることがある。そのたびに私はこう答える。「最初から優秀だったわけではありません。みなさんに育てていただいた、普通の高校生たちです」
「自分の高校時代とは違うな」と言いながら、どこか遠い目をする大人もいる。その表情を見るたびに、思う。この人も、こういうことをちょっとやってみたかったんじゃないか、と。
その仕組みを、誰がどうつくるのか。それは次の話になる。
---
ニシムラ/まちを学び場にしたい
地方創生や協創のまちづくりに関心あり。多摩市役所で12年間、ニュータウン再生や総合計画策定、官民連携の推進に従事。高校での探究学習支援も経験し、多様な主体が協働する仕組みづくりを得意とする。2026年に転職し、人や組織の挑戦が生まれる地域づくりに取り組んでいる。探究学習アドバイザー、講演活動なども。
#市民協創 #産官学民連携 #エリアプラットフォーム #探究学習 #学校と地域連携 #外部コーディネーター #学習指導要領 #主体的な学び #地方創生 #地域連携
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします! いただいたチップは今後の活動費に使わせていただきます!