帰省、自分史跡巡り。 思い出の治安が悪い。
◾️帰省
いま、所用で実家にいる。
自由時間には、散歩と称した「自分史跡巡り」をするのが恒例である。
学生時代にバイトしていた「元酒屋のコンビニ」を訪ねてみることにした。
夫婦が切り盛りする、限りなく酒屋寄りのコンビニだった。
店長の奥さんは、遠目には、ジブリでよくいるエプロン姿の肝っ玉かあさんなのだが、近寄ると顔がマドンナなのだ。
ライクアバージンあたりのマドンナなのである。
その顔で、小さい子供に向かって「あかんあかん!そんなん口に入れたらあかーん!」とガニ股で駆けていく、そんなお母さんだ。
◾️思い出
この店でバイトしていた頃、大きな出来事がひとつあった。
阪神タイガースの優勝だ。
当日、普段とは少し違う空気を感じていた。
夜になった。
入口で坊主頭が揺れている。酔っ払いだ。
祝杯を上げすぎてぐにゃぐにゃになった阪神タイガースファンの青年二人がご来店。
酒を掴むと、お互いが支え合って「人」の字になりながらこっちに向かってきた。
顔に油性マジックで稚拙すぎる虎模様が描かれている。目の焦点が合っていない、鼻水も出ている。こんなのが酒持って目の前で財布を出しているのだ。ピンチである。
「こいつ酔ってるんですわ、すんません!すんません!」
鼻水が出てないほうがそう言う。
お前もやろ、という思いを込めてレジを打つ。
彼らは、あんなにぐにゃぐにゃだったにもかかわらず、普通にお金を払って帰って行った。阪神タイガースファンを少し見直した。
直後、店長が「なんや、えらいことになっとったな」と半笑いで出てきた。
出てくるのが遅い。
◾️私、有能説
当時、まだレジはバーコードをピッするタイプではなく、100%手打ちだった。
私は、レジの合間に、商品の日付を見て古いものを前に出したり、食パンをスライスして梱包して棚に並べたりもしていた。
万引き防止のため、袋にはギリギリのキツキツに詰めてテープで留めろという店長の歪んだ方針があり、私は愚直にそれを実行した。客には不評だった。
あと、パンの耳を盗み食いして、店長にやめるよう言われたりもした。
監視カメラで見えていたらしい。
並行していろんなことをこなしている。
今やれと言われたらできない。
私はかなり有能だったのではないかとすら思う。
内容の治安の悪さはさておき。
◾️そこには
目的地に着くと、見たこともない薬局があった。
すでに古びていて、営業していなかった。
何十年も経ったのだから、そんなものだ。
あのマドンナは今どこでどうしているだろう。
今思えば、早朝から深夜まで懸命に働いている若い夫婦だった。
私のこんな記憶など、宇宙の塵にも満たない。
だから、ここに書いている。
👇今回の帰省の軌跡。
