【東京観察記 #12】「君のクレカで買ってきて」タワマンのクローゼットに隠された秘密(東京恋泥沼・第3話)

【読者の皆様へ】
※本記事は『【東京観察記 #10】』『【東京観察記 #11】』の直接の続き(東京恋泥沼・第3話)となります。過去記事をお読みいただくと、より一層お楽しみいただけます。

本作に登場する人物、企業、出来事には、プライバシー保護および特定回避のため、大幅な脚色と再構成を加えています。複数の人物や体験を組み合わせて描いたフィクションです。

ただし、港区で「成功者」を演じ続ける男たちが陥るクレジットカードのループ、そしてタワマンの豪華な扉の奥に隠された惨めな現実だけは、一部の現実から生まれています。

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### 【東京観察記 #12】「君のクレカで買ってきて」タワマンのクローゼットに隠された秘密(東京恋泥沼・第3話)

西麻布の鮨屋で翔太たちの不穏な提案を断ってから、3日が過ぎた。

「もう二度と連絡なんて来ないだろう」

そう思っていた私のスマートフォンに、深夜1時、翔太から着信が入った。
画面に表示された名前に一瞬身構えたが、意を決して通話ボタンをスワイプした。

『……美咲ちゃん? ごめん、寝てた……?』

スピーカーから聞こえてきたのは、いつものスマートで余裕のある声ではなかった。
酒にひどく酔い痴れ、息を荒げた翔太の生々しい声だった。

『先日はごめんね。藤堂さんも酒癖が悪くてさ……僕、美咲ちゃんのこと傷つけるつもりなんて全然なかったんだ。今、恵比寿のタワマンにいるんだけど……顔、見に来てくれないかな』

断ろうとした。しかし、電話の奥から聞こえる彼の声があまりに弱々しく、そしてどこか壊れかけているように思えて、私はタクシーを拾ってしまった。

「やっぱり、私はどこかでこの男に夢を見ていたんだ」という愚かな期待を抱いたまま。

恵比寿駅からほど近い、タワーマンションの28階。
オートロックを抜け、案内された部屋の扉を開けると、そこは一面ガラス張りの夜景が広がる豪華なリビングだった。

だが、部屋の中は酒の匂いが充満し、高級家具の脇には未開封の請求書の封筒が山積みになっていた。

「美咲ちゃん、来てくれたんだ……ありがとう」

ソファーに深く沈み込んでいた翔太は、ボサボサの髪のまま力なく微笑んだ。
テーブルの上には、半分空いたドン・ペリニヨンのボトル。

「翔太さん、大丈夫……? 何かあったの?」

私が近づくと、彼は私の手をぎゅっと握りしめた。その手は冷たく、小刻みに震えていた。

「実はさ……明日、大事な投資家との会食があるんだよ。そこで着る予定のスーツと、手土産の洋菓子を買わなきゃいけなくてさ。でも、僕の会社名義のカード、今ちょうど更新手続き中で使えなくて」

翔太は上着のポケットから、ブラックカードではなく、1枚のスマートフォンの決済画面を出してきた。

「お願い美咲ちゃん。上限100万でいいから、今夜だけ君のクレジットカード借りられないかな? 明後日には会社の口座から絶対、倍にして返すから」

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