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小さな手に咲いたハート

家ではずっと、
なんてことのない普通の泡ハンドソープを使っていた。
香りも、形も、特別ではない。
ただ、毎日の生活に静かに寄り添うだけのもの。

ある日、詰め替えが切れてしまい、
ドラッグストアへ立ち寄った。
ふと棚を見上げると、
肉球の形の泡が出るソープが並んでいた。

子どもはまだ肉球というものを知らない。
でも、あの小さな手のひらに描かれる未来を想像すると、
なんだかくすぐったくて、可愛らしくて。
思わず「これ、いいかもしれない」と手に取っていた。

ほかにもあるのだろうか。
気になって検索すると、
星のカービィとコラボした
ハートの泡が出るソープにたどり着いた。

店頭には見当たらなかったけれど、
その場で迷わずポチリ。
こういうときの決断は、
いつもより少しだけ早い。

数日後に届いたそれを、
いつものハンドソープをこっそり入れ替えた。
子どもが手を洗おうと近づいてきたとき、
「はい、どうぞ」とそっと1プッシュ。

ふわりと生まれたスタンプ型の泡。
けれど、緊張した小さな手にはうまく乗らず、
かたちを整える間もなく、
しゅわっと崩れてしまった。

手が小さすぎたのかな。
私も試しに1プッシュしてみると、
掌にきれいなハートが咲いた。

「ハートがいい」
そう言ってもう一度挑戦する。
けれど、またうまくいかない。
指先からこぼれ落ちてしまう泡に、
ほんの少し、残念そうな顔。

その小さな手を、
私は自分の泡ハートで包み込んだ。
「またあとでね」
優しくそう言って、一緒にごしごしと手を洗った。

――そして、ほんとうにあとでが来た。

遊んだあと、もう一度手を洗う時間。
今度は、ぷくりと膨らんだ泡が
子どもの手のひらにそっと乗った。

「ハート! ハートだよ!」

声といっしょに、
笑顔がぱあっとひらいた。
その瞬間、
私の胸の中にもハートが灯ったような気がした。

ああ、買ってよかった。
そう静かに思える出来事が、
今日もひとつ増えていく。

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